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094話「魔人王の宣誓」




 落雷が轟く暗黒世界。何百年も見慣れた世界、面白みなど一つもなく我々にある娯楽は死と生をかけて戦いの身であった。

始まりは神からの迫害だと云われている、はるかな昔神がまだ混沌の世界に生まれた時この世に自分たちの理想の世界を築こうと画策し人を操っていた時代、そんな時代にまるで相反するように我々は生まれた。人としての限界を超えた力を用い神達の独裁を許すまじとそうして神にも匹敵する力を持って世界に生まれ落ちた。


が、その頃には神は信仰の座にいたり、愚かしく浅ましい、人という弱々しい種族を用いて我々強気者を迫害した。それがこの世界だ、情けをかけられこんな平和とは無縁の地獄に叩き落とされ、生物として生きる理由すら奪われた我々はその時決まったのだ。


 「いつかこの身が朽ち果てるまでに、神を撃ち落としそして全ての生命に我々の最上たるヒトの強さを持って復讐すると!鏖殺してみせると!!それこそが我々が新たに得た生命理由であると!!」


王の御前で高らかに歌う私に、王はつくづく満足したのか笑みを抱えたまま愉快に膝を叩いている。このつまらなくも伝統的な歌を何度私は歌ったことか、何度も王につまらないと思わせたのか、もはや百を超える本来の指でも数えきれない。


 「レギスレン、よもや貴様の歌で我が笑う日が来ようとはなっ……く、く、く。」


マグマのような赤い髪、凶眼とも歌われる鋭い瞳がゆっくり閉じさぞや愉快そうな声色で語る。その王の様子に私まで口が裂けそうな笑顔が出てしまう。


 「はるか太古からの言い伝え。それに則るのであるのならば我らが今やろうとしているこの戦こそは聖戦とされるだろう。」


 「ええ、ええ!もちろんですとも!!」


 「だが、我は聖戦なぞ歌わない。我は魔人の王なれば神を滅ぼす者でもなく、ただ唯一の王である。であるよなぁ?」


 「もちろんです!」


 「では我が掲げるのは絶対勝利!完全勝利!世界をまたにかけ蹂躙し、神なきこの世を滅ぼし神ではなく王としてその座に至る者だ!!」


 「まさしく!まさしく!!」


私の言葉に王はさらに笑顔になり、そして王座から身を乗り出し一歩一歩と階段を降らせていく。そして周囲に溢れる悪気のその身に宿らせながら体はさらに厚みと膨らみを増していく。


 「神の操り人形共には感謝しなくてはならない。我らの元に姿を見せたこと、混沌しか知らぬ我らに蹂躙を授けてくれたこと、そして王たるものが唯一の存在であるべきだということを!」


 「おっしゃる通りでございますっ!」


 「有り余った力は暴力という娯楽ではなく、此度。侵略、蹂躙、殲滅という素晴らしき芝居に使われるのだ!神を落とすのは神の仕事、なれば我々は人を滅ぼす者である。勝鬨をあげよ!!我らは必ず勝つであろうと、王たるこの身、いまだかつてない栄光が授けられる、さぁ我が臣下達よ!!!」


王が両腕を上げ。大地、空、地底から多くの泥が噴き出される。煉獄地獄のような光景の中姿を現し生まれるは魔暴と無垢なる殺戮だけをみに宿した魔人族のみ、そしてその中には私の夫であるプラザインの巨躯があった。


 「あぁ、遂にやられるのですね!」


 「蹂躙だ、蹂躙を始めよう。我らのこの手に宿る全てを用いて貴様ら弱者を葬り去るのだ!!」


魔暴は一斉に進軍を開始し、その先頭にはプレイコーズとクランクドラインがいる、人間と接触した二人の魔人族が栄光に縋りつき、そして王の先駆ならなった姿は実に滑稽で誇らしくもあった。私も後に続いてあの一段の一人になることは言わずもがな知っていることであるが、それを考えるだけで夫を持つ身のこの体が身震いをはじめてしまうのだ。恋ではない、愛ではない、ただただはじめて感じる感覚、正しく蹂躙への興奮である。


 「ふふん!」


 「レギスレン、歌を歌え。殲滅の歌をだ!そして全ての下々に伝えるのだ、我がこの混沌を打ち砕き、新たな闘争という秩序に足を踏み入れたことを!!」


 「はぁ!!」


私の混じった返答、王城のベランダから飛び降りては、醜くも美しい体を露わにする夫の背にまたがり、背から生える筋骨的な腕でその体に空いた空洞へと差し込む。すでに死骸のような動きであるが私がいることを理解したか、高く動き始め、そして周りにいる魔暴を踏み荒らしながら進み続ける。


我らが魔人族の進撃が開始した。




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