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093話「旗を掲げ宣誓する。」





 それから1日も立たず時刻は午後を回った時だった。国王ナリタテンマは国内に集っていた軍隊に一斉に集合号令を出し、城下町の外、大門に集結させていた。


突然の招集であったのにも関わらず兵士の一人一人は身構えるような面持ちで熟練の一人として王が姿を現すのを待っていた。この戦いはいわゆる人が相対するべく戦う戦争であるため、正規軍の他にも獣人国から先行的に遣わされた兵士、冒険者などの民間的な人々まで参列していた。正規軍に比べればその面持ちはどこか緩いものの国王ナリタテンマが登壇すると知っているからか気が抜けた様子はなかった。

母その中の一人で、エルザードおばあちゃんとエルフルと共に参列している。


一方私は前述した通り、父と共に魔術秘宝を持つ仲間たち共に並んでいた。場所はナリタテンマに最も近い最前列であった。少し後方の近衛兵たちは私たちの姿を見るや否や頭を丁寧に下げてくれたが、正直そこまでの言われはないと思っている。


 私達の背には十数万を超える軍隊が揃っていた。軍縮が進んでいるという情報を耳にしていた身としてはこの数は圧倒される。一人の優秀な戦士が100の兵にあてがわれるとして、ここにいる数十万を見ても戦慄せずにあられるのだろうか。私はそう感じざる思えないほどの圧倒的だった。


 「ラナ。」


 「っ、はい!」


父に声をかけられ考えから解脱した私はすぐさまその顔を確認する。真面目な顔をする父はそれをすぐに解くと私の肩に手を置き緩やかな表情へと変える。


 「あまり気負うな。」


 「……はいっ」


たったのその言葉であったが、私の中で常に張り詰めていた緊張が緩やかに解けていく感じがした。父が一瞬置いてくれた肩の感触がやけに鮮明に残り、私の心を強く固めてくれていた。


 しばらくして王衣に身を包んだナリタテンマが城門の上に姿を現した。真っ赤なマントが両肩を覆うほどにかけられ、その黒髪には髪色のイメージを打ち消すかのような輝かしい王冠が乗せられている。


見るからに動きにくいであろうが、それが今の彼にとっての正装なのだと納得する。


その腰にかけられているのは勇者の剣と言われる名剣、儀式用の鞘に収められていながらもその圧倒的な圧は少し離れたこの位置からも感じ取れるほど強大である、おそらくはこの草原一面に広がっている人全員がその王の圧、キングプレッシャーを受けているのだろう。


 「派手な服を着るものだ。」


 「………。」


父の聞こえないような小声に私は耳をぴくりと動かす。友人の無様な姿に笑いながら笑えない反応を示す父の声はどこか悲しげであった。


 「聞け!!!」


ナリタテンマの声が響き渡る。拡声器の類の魔術を使ってもいないだろうにその声は全ての兵士たちに轟渡っていた。


 「我が王国の兵士たちよ、我が聖戦に付き従う戦士たちよ!今宵、この時、この戦に馳せ参じたことをまずは感謝させてもらう!!」


 「今世は今まさに危機に陥っている。異界と呼ばれる別世界からの使者が我らの大地、我らの故郷、我らの美しさを破壊せんとしているからだ!ゆえに我々は自らの手で武器を持ち、自らの心で決意を固め、これらを打ち返さなければならない!!さもなくばこの目前に広がる世界は煉獄浄土の終末を迎えるであろう!」


 「しかし!ゆえに!!ゆえにこそ!我々は打倒するのだ。長い歴史の果てに勝ち取った悠久の平和を守るために、この先に生まれてくるであろう新たな命らのために、この身を盾として、この身を刃として奴らを打ち滅ぼすのだ!!」


 「我は見た!奴らの姿を、魔人族の姿をだ!同じ人の姿をとり、人を凌駕した強さを持ち、蹂躙し尽くすその様を!だが、我はすでに見た!同じような卑劣な行いをする種族、魔族をだ!!!かつて人が争った人であり、人を遥かに凌ぐ存在。勝ち目は薄かった、何度も追い込まれては長い戦いが我らの歴史であった!」


 「だが我はここにいる!平和を勝ち取りここにたっている。そしてこの場にいる皆もだ!戦争に加わったか?!戦いに加わったか!?その経歴がいかにあろうとここに集ったものたちは今もこうして命があり、決して砕かれぬ決意を持っている!」


 「ならば再び咆哮をあげよ!我々は此度の戦において勝つと、その背に広がる美しき世界、その心に宿る闘志に誓って、この世界を守護する一人の勇気あるもの、勇者として最後まで戦い続けると!」


 その瞬間、大勢の兵士たちが武器を引き抜き、天へとかがげる。それはナリタテンマの宣誓によってもたらされた大いなる加護であると、その口から放てられた決意の気にこの場にいる大勢の戦士が当てられ活気立ったこと。


そしてナリタテンマもその様子を見ながらマントを大きく翻し、その腰にかけられた勇者の剣を引き抜き誰よりも大空へと掲げる。


 「我が名はナリタテンマ!この世界に舞い降り、魔王を撃った勇王なれば!!この戦に絶対勝利を掲げる勝利の象徴となろう!我が心に応えるものよ、もう一度武器を掲げその心をもって答えて見せよーーッ!!!」


 『うおおおおおおおお!!!!』


武器を掲げる兵士たちがさらに天へと突き立て、今度は雄叫びをあげる。その叫びに空間が上限に振動するかの共鳴を感じる。ここにいる全ての戦士たちはナリタテンマという一人の勇王の意思に見事に答えて見せたのだ。


私も父を武器を掲げそれに答えてみせる。一人の知り合いや友人としてではなくここにいる戦士と同じくナリタテンマという一人の王の絶対勝利を信じるものとして、声を上げたのだった。




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