020話「ミスコンの再び」
ミス・フュードルドコンテスト。学園祭でやる予定だった、フュードルド学園1美しい女子生徒を決めるコンテスト。本来なら後夜祭にて行われるはずのこのイベントは例の事件もあってか中止を余儀なくされた。だが。
「ミスコンやるんだ。」
生徒会が門前で配っていたチラシを受け取り何かと確認してみれば、大大とミスコンの継続!と書かれたタイトルがあった。私はそういえばミスコンってあったなと思いつつも、口にそう出していた。
てっきり中止になってそのまま今年はお蔵入りかと思われたこのイベントはなんと継続を宣言したのだった。同級生の会話を盗み聞いたところ、どうやら生徒会長である。フェリア・ギリドリスが再開を押し進めた結果申請が通ったらしい。
「負けられませんわ!」
昼食の時、クリスはこのチラシをくしゃっと握りつぶしながら大きく宣言した。その目にはメラメラと炎が燃えている。
「これは、明らかにフェリア先輩からの挑戦状!!私は淑女としてこれに受けて立つ義務があります。」
「そう、」
フェリアがクリスのために舞台を用意したのか?と考えるとまぁそれはあり得そうだなという結論に落ち着く。わけとして、フェリアもフェリアでクリスのことを良き好敵手だと思っている。あの穏やかなシスコンの裏にはフェリスと同じような闘争心がたまに垣間見える。
正直掴みどころない人と言っても、彼女の場合はオンオフの落差がすごいため、回数こなさなければその差異に気づけないだけだ。
「とりあえず、応援してきますね。」
「あら、ラナさんは出なくても良いのですか?」
「前にも言ったでしょ。私は出ない派、そもそも───、そんなスタンスじゃない。」
「いいえ、そうではなく。」
クリスがチラシの一番下のところを指差した。私はクリスが何を伝えたいか知るために目を凝らし、チラシに書かれた小さな小さな文字を読んでみる。
「……は、い?」
そこには本当に小さく。《ラナ・プラノードがこのミスコンに参加しない場合は中止にします》と書かれていた。
「は、は、は?!」
「ラナさん、参加しないのでしたらかなりまずいですわよ。」
「ちょっと待って、笑顔で何言ってるのクリスも!」
まるで参加してほしいと思っているような顔、いや実際そうなんだろうなと予測できるんだけど。それにしたってなんだこの文言は、本当に冗談じゃない。
「いったい何を意図してこんなこと、」
「んー。妹の晴れ舞台を見たいとか?」
「妹じゃないんですけど!?」
そうだ、私は妹じゃない。でもあの姉のような何かは確かにそんなことを言いそうだなとすぐに予想がついた。そして。
私が騒いでいるのが目立っているのか、それとも自覚して初めて気づいたのか。私は今朝から自分に向けられている視線に気がついた、これはなんというか圧だ。相手の行動を制限する、もしくは強制するときに生じる圧が私に降りかかっている具体的にいえば全方位からである。
「ぐ、ぐ。」
「それにしてもフェリア先輩には困ったものですねー。ラナさんはこれでは出場しなくてはなりませーん。」
「嬉しそうだね、クリス。」
「いいえ、これでもラナさんの不遇には涙を禁じ得てないのですよ。オヨヨ。」
「へぇ、その涙拭き取ってあげましょうか。」
「あら、ごめんなさい。もう出てきませんわ。」
クリスの変わり身の速さに呆れるばかりだ、こっちの気も知らないで。この紙に小さく書かれていたとしてもこの紙はすでに広まって周知の事実となりつつある、となるとここから私が撤退するということはできない。多分フェリアに直接文句を言う、もとい直談判を行なってもさほど意味はないだろう。あの口はクリスより達者であったりするものだ。
「まぁ、ラナさん。任せてください、私がしっかりコーディネートとして立派なアイドルに仕立て上げますから!」
「全っ然嬉しくないんだけど。それと、私出たくないんだけど。」
「でなければ大勢の生徒から恨みつらみで睨まれてしまいますよ。」
「そうなるから困ってるんだって、、はぁ!もう!!」
私は行けばいいんでしょ精神でその言葉を発した。こうして、予期しない形でこの学園のミスコン、もとい私の初ミスコンが決まったのであった。




