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018話「意外な再会」





 学園祭の事件から数十日、普段と何も変わらない日々が続いていた。後夜祭で起こったとされる火災も、冬に近づいていたからというなんとも適当な理由で処理された。公園は誰かが魔法の実験場として使ったためリニューアルのために、整地と工事を行うということで現在は閉鎖している。フュードルド学園は自由な校風が特徴でもあるのでこうした魔法、魔術絡みのちょっとした事件なんかは意外にも人々の間ですぐに浸透しては忘れられるものだ。


数日も経過すれば新聞には載るものの、誰もその記事に目もくれなくなっていた。


 「今回はご苦労様。」


 「いえ。こちらこそ、私の話を聞いてくださってありがとうございました。」


事態が完全に終息したこともあって、私は学園長に呼び出されていた。と言っても交わされる会話は労いの言葉とクリスが伝えそびれていたことを客観的に教えてくれるだけだった。


 「気にしないで。学園長たるもの、せいとをいつだって信じないわけにはいかないもの。」


 「……大変ですね。」


 「そうね。でもやり甲斐は感じてる。それに、貴方の言葉は特に無碍にはできないから。」


 「……私の、家名のせいですか?」


 「──悪けど、そうね。貴方の家名は大人にとっては少し特別な意味があるから。だから、貴方が非現実的なことを言ったとしても私たちはそれを信じないといけない。」


大人にとっては特別な意味。それは子供にとってはそんな意味を持たないということになる。当たり前だがどこか引っかかる言い方であるのに変わりはない、それに。


 「……その、意味は。」


 「───残念だけど。私の口からは伝えられないわ。これは貴方が向き合う問題でもあるから。」


教師として、一人の大人として、私を信頼し切ってこの言葉だというのを感じ取った。それゆえに、なぜ教えられないのかと会う疑問だけが加速する。


 「……でも安心して。貴方のその力は、きっと誰かの助けになる。それを忘れないでね。」


 「はい。」


実感のない返事をする。事実として私は予知夢によって最悪の事態を防げた、しかし客観視してみればただの悪い悪夢だったと処理できる。ただ未来の現実と似通った点を持った夢、確かな実感があの時にはあったはずなのに。今の私にはない。まるで過ぎたことを振り返るなと誰かに諭されているみたいに。


 「時間を取らせちゃってごめんなさいね。それじゃあ。」


私は学園長の言葉を聞いて一礼したのち、退出した。退出すると張っていた心が一気に解けたためか小さくため息が出る。偉い人の前に出るのは慣れたつもりでも思った以上に緊張していたみたいだ。


 「お昼ご飯食べないと。」


私は自分のバックを手に取っていつもの昼食場所へと向かった。

 中庭にはいつもと変わらず生徒が昼食をとりに来ていた。ここは昼になると日差しが当たり、季節が冬の現在においては暖かい陽光の下昼食を取る場所として最適だ。周囲が建物で覆われていることも相まって風がこなく、落ち葉が暴れることもない。楽しげに会話をしている生徒達の中で、私は一人の学友と後輩の姿をみつけた。


 「あ、プラノード先輩!」


ラプが大きく手を振って私を導いてくれる。その姿に私も安心した心意気で彼女達の元へと歩いて行った。


 (あれ、)


ただ近づく過程で一人の少女を見つけた。それはとても見覚えのある姿をしていた、褐色の肌に尖った耳がなによりダークエルフの特徴だった。私はマシやという思いを心のうちに秘めたまま、平常を装い他人の振りで近づいた。


 「ふたりとも、まだ食べてなかったんだ。」


 「はい。先輩が来るまでまってました!」


 「食事はやっぱりみんなでいただくほうが美味しいですからね。」


 「……その子は?」


ダークエルフの少女はクリスの影に隠れながら私の様子を窺っていた。その目からは恐怖がどことなく伝わってくる。


 「この子はプリエル。私に新しく使える従者です。そしてこの学園の新入生でもありますわね。」


 「私の後輩なんです!」


ラプにはすでに話を通していたのか、どことなく自慢げに語る。だがクリスの表情から察するにこのダークエルフの少女はやはり。


 「……そうなんだ、これからよろしくね。」


 「………。」


すごく警戒されつつも、私の方をじっと見ている。それもそのはずかと納得して私はクリスの隣に座った。


 「プリエル、少しの間先輩であるラプと会話を楽しんできてね。」


クリスはプリエルという名のダークエルフをそっとラプには託し、私と内緒話ができる距離まで近づいた。向こうも考えていたことは同じらしい。


 「クリス、どういうこと?」


 「どういうことも何も。我が家で引き取りました。」


 「……それはわかっているけど、いいの?」


 「許可はすでに取っておりますから。お父様からも。」


 「ナリタテンマが?」


 「ええ、二つ返事でした。」


 「そっかぁ。」


 「ということで、これからは私の従者兼、一年生の後輩としてプリエルをよろしくお願い致しますね。一通り、ここまでで学ばせておりますので、あとは話せるかどうかあたりでしょうか。」


 「わかった。」


自分の後輩に喜ぶラプはプリエルに質問をしたりして会話に発展させようとしているがなかなかうまく行っていないようだ。プリエルもプリエルで何を考えているのかよくわからないが、うまく話せていないように見える。

言葉はわかって話せるが、話しずらいと言ったところに見える。かなりの人見知りといえば簡単だろう。


 「さて、食事を始めましょうか。」


私たちは昼食を始めた。その日の昼食はプリエルのこともあってかなり静かだった。




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