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015話「フレイムキラー」




 《──────ッ!》


炎を口から吐き出し、敵意を剥き出しにする咆哮。全てを燃やし尽くし障害となるものを排除するという意志が感じられる。矛先は紛れもなく私たち二人に向いていた。


小さな威嚇の咆哮を一つ加え、フレイムキラーは大地を溶かしながらこちらへと進軍してきた、殺意の塊である。目の前に立っているだけで本能が一歩後ろへ下がれと警鐘を出している。でもここで引くわけには決していかない。


一歩一歩と敵の足が前に出て私の元へと向かってくる。クリスはすでに交戦の定位置につくために後方にいる、私はフレイムキラーが振り下ろさんとしている巨剣を受け止めるために抜刀の構えをする。


 「!」


巨剣は見た目に違わず、恐ろしいスピードで振り下ろされた。油断していたわけではなくただ純粋に驚いた。しかし私の体もすでにその一撃に対しての反撃に出ていた。鞘から引き抜かれた真剣は炎を纏った巨剣と衝突する。


金切音と共に発生した火花が地面に落ち雑草を焼いた。そして一手先を読んだ私はすぐに身体強化を発動し、フレイムキラーの巨剣を真正面から受け止めることに成功した。とはいえこの一撃はとてもじゃないが長く保てる部類のものではなかった、巨剣から溢れるマグマと灼熱が私の腕を焼こうとしている。特注製の剣はこれに耐えられるかもしれない、だがこの腕までは流石に不可能だった。


 「クリアウォーターレイン!!」


純水が私の真横から殴り雨のように放たれる。フレイムキラーの左半身から水蒸気が発生し、同時に苦手な属性攻撃によって大きく怯む。

その隙に私は両手を使ってフレイムキラーの巨剣を押し返し、クリスが牽制を行なっている間に魔法と魔術の準備をする。


 「ダブルス────。」


別名、多重術式。魔術と魔法の両方に適性がある者だけが使う、反復性の術式。規模的に魔法と魔術は別物とされている、その構築方法から展開方法までまるっきり違うため、どちらかができてどちらかができない者が多い。クリスも魔術師であり魔法使いではない。

だが私はその両方であり、剣士でもある。


 今回使うのは水魔術と水魔法、これを術式展開状態にした状態で両者重ねて、共通性である属性間での発生を反復させる。魔法は現象をエレメンツとして獲得し、発動させる性質上威力は消費エレメンツ量に比例する。そして今回の犯人がやったように通常短時間内に、エレメンツを大量獲得するにはその場で現象を広げるしかない。だがこの多重術式はそれらを全て省略する。


 「カウント───。」


魔術式を先んじて発動させ、魔法術式に回転作用をかける。これによって一番身近な現象、それすなわち魔術によって構築された水からエレメンツを獲得し、その威力を倍増させる。

全く別の術式を使用しているゆえに消費は激しいが威力は実際のところ二乗である。

そのため、一回の消費で威力、範囲共に二乗の術を繰り出す。それがこの多重術式の真骨頂である。


 「ツイスト・アクアブラスト!!」


二つの術式から発せられる二重の螺旋。二つの流水が大地を吹き飛ばし威力を持ち、フレイムキラーへと向けられる。クリスは私の発動を見送った後すぐさま撤退し、その場を敵に譲った。


怒涛に押し寄せる水の量に耐えきれずフレイムキラーはあっという間に全身の炎をかき消され残ったのはガラスのように固まった異様な直後降った。


 「エンチャント!ラナさん!!」


クリスからの筋力増強、集中増加のエンチャントをもらい、私は塊ついたフレイムキラーの前に立った。魔物の弱点は心臓、それがない場合は核が弱点である。それさえ切ってしまえばいくら無敵と思ってしまう敵でさえも一撃で葬ることができる。


 「プラノード抜刀術────!」


私が編み出した。剣技プラノード抜刀術、特徴はあえて鞘に剣を刺した状態で放たれる所属と言ったところだ。剣にかかる負荷は大きいもののその分初速から入る一撃必殺の技は私が見て使ってきた中で最速のものとなっている。


 「キリサメ────ッ!!!」


腕をムチのように湾曲させカラダ全体の遠心力を利用し、剣先から中腹でフレイムキラーに一撃を放つ。ガラス体になり身動きが取れなかったフレイムキラーの核を切断し、バラバラと体が一閃から崩壊していく中、私はそっと鞘に剣を戻した。


 「マーベラス!!さすがラナさん!」


クリスが拍手しながら私に近づいてくる。


 「相変わらずの一撃必殺ですわね!」


 「褒めるのは後にして、今は───」


私はさっきまで犯人がいた場所に目を向けた。焼け野原の中見えた黒い影、それはすでにどこかに消えていた。


 「見失った……!」


 「いいえ。スキャナー、レジストアウト、バインドアウト!」


クリスが三重の重ねがけ魔術を使用して、周囲に展開する。すると小さな少女のような声がすぐ近くで聞こえ、のちに魔術の鎖で縛られた状態で地面に伏せていた。


 「あの炎からは逃れられません。痕跡がないということは魔法による偽装。それも、三流とくればお粗末と言わざる終えません。」


クリスは足に魔術を仕込んで周囲一帯の炎を全てかき消した。水魔法を低出力にしつつ広範囲にした独特な技だ。

そして優雅に焼けこげた草原の中ゆっくりとした足取りで私と共に犯人の元へと歩いていく。犯人は私たちの接近に異常に怯えながらすぐに脱出しようと魔法を使おうとしていたが、それもうまく発動できないようだった。


 「ここは世界樹の芽が届かない地。貴方達エルフにとっては死地も同然です。」


 「っ!」


フードを被ったエルフはクリスの言葉に反応して、諦めたのかこめていた力を抜いて脱力する。どうやらこの先の自分の展開に気がついたらしい。


 「貴方にはフュードルド学園に対してのテロの容疑がかけられています。証人は──私たちになるのでしょうかね?」


 「そうなるね。」


 「ご安心ください。ナリタ・クリスの名の下にどんな相手でも客人のようにもてなせという、私教わっていますから。それにしても実行犯がこれとは、驚きましたね。」


クリスは実行犯のフードを取りその顔をあらわにする。エルフ、だがその顔から垣間見える若さはまるで少女のようだった。エルフは長寿と聞くがこれはその中でもかなり幼い、そして


 「ダークエルフ。」


 「……問題が山積みな予感がしますね。」


クリスは静かに目を瞑って何かを悟りながら言った。私たちはその後ダークエルフの少女を拘束したまま警備隊に受け渡した。

今回の事件はまだ終わってない、私は絶望の表情をしたダークエルフの少女を見ながらそのような気持ちで警備隊と共についていった。


夜はまだ終わってない。




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