崩壊
翌日も、俺は決まった時間にコンビニへ向かっていた。
「偶然」に会えることを、胸の奥で微かに期待しつつ。
棚の前に立つ。……が、しばらく待っても今日は中々来ない。
やはり、毎日会えるわけがない。
彼女が具合を悪くしているのかもしれない。
そんなことを考えながら、ファンタグレープを二つ分手に取る。
レジへ向かおうとしたその瞬間――
グラリ。
目眩のような揺れ。店の蛍光灯が瞬き、缶や商品が棚から落ちる音が響く。
「……地震!?」
瞬間、天井から轟音が響き渡り、店内の蛍光灯がバチバチと弾けた。
それと同時に、壁が軋む音。外からも、瓦礫が崩れ落ちるような衝撃音が連続する。
店員が慌てて声を上げる。
周囲の客も一斉に出口へ向かい始めた。
俺はとっさに身を低くし、倒れそうな棚を支えながら、彼女の姿を探す。
「あ……!」
黒髪の影が棚の裏で小さく揺れていた。
走って近づく。
「う、うわっ……!」
棚の陰で小さくよろめく彼女を、俺はすかさず抱き寄せる。
「しっかり掴まって! 離れちゃダメだ!」
店の扉が吹き飛ぶように開き、外の世界は既に変わり果てていた。
空が真っ暗に染まり、建物は崩れ、地面は波打つ。車は横転し、火花と埃が舞う。
まるで世界そのものが轟音とともに解体されていく。
「怖い……」
小さな声が胸に突き刺さる。
「大丈夫、俺がいる。離れないから」
自然と口をついて出る言葉。理性も抑えもきかない。
俺は彼女を抱え、瓦礫の合間をかき分けながら外へ走る。
突如、頭上から崩れ落ちる天井。
間一髪で二人は避けきれず、気を失った。
――
どのくらい気を失っていたのか。
数時間か、数分か。まだ少し揺れている。
目を開けると、街は跡形もなく崩壊していた。
建物は瓦礫の山と化し、煙と埃が立ち込める。
「……ここ、どこ……?」
彼女の小さな声。顔色は悪く、唇が青い。
「……気をつけて、動かないで。落ち着いて」
手を伸ばすと、彼女は自然と俺の手を握った。
目の前の彼女が、ただ不安に揺れている。
その無防備さに、胸が痛む。
建物の影で安全そうな場所に避難し、彼女の肩を支える。
「しばらくここでじっとしてよう」
「……はい」
俺は彼女の顔を見ない。見たら動揺して、理性を失いそうだから。
ただそっと、街を見守る。
しばらくすると、彼女の呼吸が少し落ち着く。
「……ありがとう」
「無事でよかった。怖かっただろ」
「……うん」
あの日、夜のコンビニで交わした何気ない会話も、ファンタグレープも、今では遠い過去のように思える。
目の前の現実だけが、二人をつなぐ。
揺れが完全に収まった後、俺達は星空を見上げていた。
「もう少し、ここで待とう」
彼女は小さく頷く。
震える夜風に、二人だけの静かな時間が流れた。
瓦礫の間を抜け、生き残った二人だけの風景。
日常は一瞬にして消え去り、明日もいつも通りという保証はどこにもない。
ただ、互いの存在だけが、唯一の救いだった。
「……あなたがいてくれて、よかった」
その声が、冷たい夜風に溶けて消えていった。
なんでこうなった。
もう書いちゃったもんねーーーーー!!!!!




