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生き延びる理由




まぶたを開けると、薄い朝の光が部屋の隙間から差し込んでいた。


……暖かい。


腕に柔らかい重みがあった。

視線を向けると――彼女が、俺の腕を抱くように眠っていた。


近い。

いや、近いなんてもんじゃない。


……動けない。


気配に気づいたのか、彼女のまつげが震えた。


「……ぅ……ん……?」


ゆっくりと目を開き、ぼんやりとした表情でこちらを見る。


そして――

数秒の沈黙ののち、記憶が繋がったらしい。


「――――っ!!?」


瞬間、顔が爆発したみたいに赤くなった。


「な、な、な、なんで私……その……っ、こんな……!!?

 えっ、えっ、寝相!? 私!? えっ!?」


混乱の嵐。

めちゃくちゃ可愛い。


「いや、寝相っていうか……途中で俺の腕に……」


「うわあああああ言わないで言わないで死んじゃう!!」


彼女は布団の中に潜り込む。

布団が盛り上がる。


布団の中から震える声が聞こえる。


「……ごめんなさい……」


「いや、いいよ。安心して眠れてるなら、それが一番だ」


そう言うと、布団の中の動きが一瞬止まる。


そして――

小さく、小さく、かすれるような声が漏れた。


「……安心するんです。あなたが隣にいると」


その一言が、心に刺さる。


布団からそっと顔を出した彼女は、

まだ赤い頬のまま、目だけこちらをうかがう。


「……あの、今日も……一緒に寝てくれますか?」


「も、もちろん。今日も、これからも」


そう答えた時――

彼女はほっと息をつき、微笑んだ。


昨夜の距離感が、一瞬で戻ってくる。

いや、むしろ昨日より近い。


外の世界は昨日と変わらず荒れているのに、

この部屋の空気だけ、やけにあたたかかった。


「……じゃ、じゃあ、朝ご飯……支度しますね……!」


照れを誤魔化すように慌てて布団から出ようとする彼女。


だが――


「きゃっ!」


足に絡んだ布団に躓き、俺の胸に倒れ込んだ。


「……っ!」


「……!」


二人とも固まる。


距離。

いや、距離ゼロ。


呼吸が混ざるほどの近さ。


数秒――

彼女が顔を真っ赤にして飛び退いた。


「ご、ごごごごめんなさい!!」


「だ、大丈夫……?」


大丈夫じゃないのは俺のほうだ。


だが、彼女はそんなことは知らない。


少し距離を取った彼女は、

まだ恥ずかしそうに、しかしどこか嬉しそうに笑った。


「……その……今日もよろしくお願いします」


その笑顔を見た瞬間、

今日を生き延びる理由が、またひとつ増えた気がした。


どんな形だとしても、こんな可愛い子が俺と一緒にいたいと言ってくれる。


俺は、世界が崩壊する前よりも、今のほうが幸せだった。

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