そういうの
室内には、壊れた机、倒れた棚、ソファ、ベッドなどがあった。
俺はソファに目を付ける。ソファには足がついていて、表面の素材は合革。側面の合革の下の方が少し破けていたので、さらに裂いて自然に破れた感じにする。このままでも気付かれるもんじゃないが、ソファの破れた面を、体が入らない程度に壁に寄せて穴が見えないようにする。
「ここだ。こういうソファの下側は空洞になってるんだ。隠すなら、この中」
「……こんな場所、絶対に誰も気づきませんね」
「見つけられたら死ぬ物資は、ここに置く」
俺は第一拠点から持ってきた缶詰のうち、三分の一だけをそっと入れる。
彼女も、小さな手でビニール袋を抱えて運び、慎重に置いた。
「……なんか、すごい。秘密基地みたいです」
「秘密基地って……そんな可愛いもんじゃないけどな」
「ふふっ。でも、そんな感じなんです。
二人だけの……生きる場所、って意味で」
俺は不意に言葉を飲んだ。
“二人だけの”。
その響きは、不思議な熱を胸に落としていく。
「ところで、なんでこんな隠し場所、知ってるんですか?」
「え?いや、若い時、家族に見つからないようにここに色々隠してたんだ」
「なにをですか?」
俺はハッとする。エロ本だ。今まで一度も見つかったことはない。
俺には、ベッド下のエロ本を母親が回収して整頓して机の上に並べるというイベントは発生しなかった。
「なな、なにをって……」
彼女も、ハッとした表情になる。彼女は耳まで赤くしてうつむいた。
「す、すいません……」
「あ、いや、こちらこそ……」
なぜかサラリーマンの営業のようになる二人。
うっかりとはいえ、反省しないと。彼女にとってこんな話題、触れたくもないだろう。
「あ、あの……」
ん?
「今は、そういうの、大丈夫なんですか?」
そうでもなかった!!?




