表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/47

水源




霧が薄く漂う街路を進む。瓦礫の上を慎重に歩きながら、俺は周囲の建物を観察する。

廃屋の窓はほとんど割れ、倒れかけた看板が風に揺れている。静寂の中、微かな足音や風に揺れる金属音がやけに大きく聞こえた。


「……あそこ、入り口が塞がってないですね」

彼女が指差すのは、小さな建物。入口は半分崩れているが、中は暗く、外から見ても物資がありそうだ。


「よし、行こう。ただし慎重にな」

俺は手を差し出し、彼女もぎゅっと握る。互いに触れた手に、少しだけ安心感が混じる。


建物に近づくと、床には埃と瓦礫が散乱している。

足音を立てないよう、俺は靴底を意識的に転がすように歩く。


「……怖いです」

彼女の小さな声が緊張で震える。


「分かってる。でも、物資が必要だ。食料、水、燃料……それを確保しないと、この先持たない」

俺は低く答え、彼女の肩をそっと押して前に進ませる。

「よし、これだけでもかなり助かる」

建物の中は薄暗く、埃と古い木材の匂いが鼻をつく。棚の上には缶詰や乾物が残っていた。

俺は慎重に手に取り、バッグに詰める。


だが、その瞬間――床の軋む音がした。

「……!?」

俺はすぐに身体を低くし、彼女を庇う。床板の下で何かが動いたような音。


「……大丈夫、たぶん……」

彼女の手が俺の腕に絡む。息が荒くなるが、互いの存在が落ち着きを与える。


外に出ると、街は相変わらず静かだが、瓦礫の向こうに影がちらつく。

誰か、あるいは何か――見えない監視者がいるかもしれない。


「……誰か、いるかもしれません」

彼女の目が鋭くなる。


「分かってる。でも、今は物資を確保して撤退する。それだけだ」

俺はそう告げ、二人は慎重に建物を後にする。


互いの手を握り直す。

目の前の危険も、得られる物資も、すべて二人で共有する。

こうして生き延びる――それだけが、今の俺たちの全てだった。


物資を確認し終えると、次は水の確保だ。建物の裏に古い井戸があり、まだ使えた。

「ここまで来てよかった。少しずつでも、補給できる」

俺の声に、彼女は小さく頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ