家族
勝利の朝は、短かった。
太陽が昇りきる前に、辺りに異変が起きたのだ。
倉庫の外で――人の声がした。
怒鳴り声でも、争いでもない。
もっと雑多で、弱々しい、かすれた声の群れ。
「……おい、誰かいるか……」
「水……少しでいい、助けてくれ……」
「ここ、誰か住んでるのか……?」
彼女が不安そうに俺を見る。
「……別の、生存者?」
「たぶん。
昨日の三人とは声が違う」
耳を澄ます。
足音は複数。
だが武器を構えて来る様子はない。
空腹と疲労でふらつくような足音だった。
俺は入口に近づき、そっと覗いた。
瓦礫の陰から現れたのは――
やせ細った中年の男と、肩を貸す若い女性、泣きじゃくる子ども。
昨日の連中とは明らかに違う。
“奪う側”ではなく、“奪われてきた側”の目をしていた。
「……助けてくれ。
避難所に向かったら……もう、メチャクチャで……
争いばっかりで……食料が……」
避難所。
人が殺到する場所。
当然、資源は枯渇する。
彼女が俺の袖を弱くつまんだ。
「どうする……の……?
助ける? 追い返す……?」
その指先が震えている。
俺は深く息を吸った。
「……一旦、中には入れない。
でも、水と食料を分ける」
「うん……」
倉庫の扉から十分距離を置いた場所に、
ミネラルウォーターと缶詰を置き、
彼らが拾えるようにする。
「俺達が倉庫まで下がったら、取りに来てくれ」
「ありがとう……ありがとう……!」
「ちょっと待った。代わりといっちゃなんだが、避難所の場所と建物の構造を教えてくれないか。あと、この場所は口外しないと約束してくれ」
「え、ええ。もちろん」
親子は泣きながら食料を抱える。俺達に避難所の情報を教えると、瓦礫の影へ消えていった。
静かな倉庫に戻ると、
彼女は不安げに問うた。
「避難所……お父さんとお母さん、いないかな」
「場所はここから近い。行ってみるか?」
彼女は小さく頷く。
「でもお父さんもお母さんも、私のこと嫌いだから」
その目は不安で揺れている。
胸が痛むほどに。
親に、邪険にされているとか言っていた。スマホまで取り上げられたとか。
「……大丈夫だ。きっと、日々の生活のすれ違いだ。子供が生きていて嬉しくないはずがない」
「……うん。そう、だよね」
ただ、その親が今もまだ生きているかどうか。
その考えを、彼女に伝えることはしなかった。
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