脅し
夜がゆっくり終わりかけたころ。
倉庫の外が、わずかに白み始める。
その静けさを破ったのは――
ガンッ!!!!
いきなり扉が揺れた。
「来たッ!」
俺が叫ぶより早く、彼女は驚きで足を硬直させていた。
昨日の三人の声がする。
「開けろ!! 物資、全部よこせ!!」
「昨日はよくもやったなぁ!? 今日はこっちも本気だ!!」
扉が叩きつけられるたび、蝶番が悲鳴をあげた。
バリケードにしていた棚が少しずつズレていく。
――こんな早く来るとは思わなかった。
あいつら、本気で追い詰められてる。
扉が大きくたわむ。
立て付けの悪い金属が「ミシッ」と鳴る。
次の瞬間――
バンッ!!!!
扉の一部が割れ、男の手が突っ込まれた。
腕が、バールで無理やり建てつけをこじ開けてくる。
「ッ……!」
俺はその腕を蹴り返すが、もう遅い。
扉が崩れ、男が二人、雪崩れ込んできた。
「逃がすか!!」
「昨日の礼、してやるよ!!」
狭い倉庫の入口が、簡単に埋まる。
俺は鉄パイプを握り、少しでも時間を稼ごうと立ち向かう。
だが三人。
真正面からは分が悪い。
鉄パイプが振り下ろされる。
「ぐっ……!」
腕で受け止めた衝撃でしびれが走る。
もう一人が横からスコップを振りかぶる。
やばい――
一歩下がる。目の前をかすめていくスコップ。
「やめて……!!」
見かねたのか、彼女がこちらに出てくる。
「後ろに下がれ!」
俺は叫び、彼女を奥の棚の影へ押しやった。
「で、でも……!」
「いいから!」
俺達のやり取りに気を取られたのか、
一瞬、男たちが顔を見合わせた。
ほんのコンマ数秒。
そのとき、俺の視界の端に――
壁際に立てかけられていた チェーンソー が入った。
昨日、整理したときに置いておいたやつだ。
考えるより早く、俺は飛びつくようにチェーンソーを掴んだ。
指が引き金にかかる。
――エンジンがかかるだろうか!?
――燃料は……?
迷っている余裕はない。
俺は紐を全力で引いた。
ドゥルン……ドゥルルルルルルルルルルル!!!
倉庫全体が震えた。
凄まじい爆音が響きわたり、男たちは反射的に後ずさる。
「なっ……うそだろ……!?」
「チェーンソー……!?」
「お、お前そんなんありか!!」
男たちの顔が一気に青ざめる。
俺はゆっくり前に出た。
チェーンソーの刃が、唸るように回転している。
振動が腕に伝わる。
「……手を引け」
低い声で告げると、先頭の男が震えながら怒鳴った。
「ひ、引くわけねぇだろ……!!」
だが声が裏返っている。
俺は一歩踏み込み、刃を地面スレスレに振り下ろす。
ガギャァァァアアアッ!!!
火花が散り、床のコンクリートが削れた。
三人とも、一歩どころか三歩下がった。
「次はお前らの足だ。
もしこれ以上俺達をつけ狙うなら……」
俺は男たちを睨む。
「こっちから殺しにいく。必ず探しだす。
お前たちも、“眠れない夜”を過ごしてみるか?」
チェーンソーの唸り声が、男たちの恐怖を煽る。
「ひ……っ……」
「おい、こいつ頭おかしい!! マジでやべぇ!!」
「退け!! 戻るぞ!!」
三人は互いにぶつかりながら倉庫の外へ逃げ出す。
足をもつれさせ、何度も転びそうになりながら。
「おい! もう関わんねぇ!!
お前に手ぇ出したら死ぬわ!!」
「二度と来ねぇよ!!」
「くそっ……狂人が……!!」
罵声とも弱音ともつかない叫びを残し、三人の影は完全に消えていった。
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