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ホームセンター




巨大なホームセンターの駐車場は、奇妙なほど静まり返っていた。

車は何台か残っているが、人影はない。

地震の振動で傾いた外壁が、時おりギシ、と不気味に鳴る。

いつ倒壊してもおかしくはない。


俺は周囲を見回した。


「……今なら、まだ残ってるかもしれない」


彼女は息をのみ、小さく背中を寄せるように俺の後ろへ立った。

その距離感に胸がざわつくが、表情には出さない。


自動ドアは壊れたまま半開きになっていた。

中に踏み込むと、薄暗い店内は埃の匂いで満ちていて、

棚は倒れ、商品が散乱している。


ただ、コンビニとは違い――

商品は“まだある”。


水タンク、ロープ、ブルーシート、浄水器、ポータブルシャワー、調理器具、乾電池、ソーラー式の蓄電機。

普段なら値札を見てため息をつくような“高いやつ”ばかりが、奇跡のように無傷で残っていた。


「……すごい……」


彼女の声が漏れる。

その横顔は恐怖よりも、今は安堵に近かった。


俺は落ち着いた声で言う。


「思ったより荒らされてない。

 ここは郊外だし、まっさきに思いつく場所でもない……今がチャンスだ」


彼女が俺を見る。

信頼の目。

そのまっすぐさに心臓が跳ねたのを、なんとか抑え込む。


「持てるだけ持つぞ。

 この状況で、動いたやつから生き残る」


俺たちは棚から必要な物資を次々と大型の台車に詰め込んだ。


・ソーラーパネル式発電機数台(最高性能のやつ)

・小型冷蔵庫

・折り畳み式ソーラーチャージャー

・大型のタンク式浄水器

・耐火シート

・折り畳みベッド

・コンロ、固形燃料、缶詰、その他非常食

・薪、バーナー

・キャンプ用調理器具

・雨具、寝袋

・医療用品一式

・大型の工具

・ハンマー、包丁、チェーンソー



拾うたび、彼女は俺の指示を聞きながら、黙々と大型台車へ積んでいった。


ときどき、俺の手と彼女の手が触れそうになる。

触れたらきっと——落ち着いていられなくなる。

だから俺は、ほんの数センチだけ距離をずらした。


「……これでしばらくは、生きられますか?」


彼女の震える声。

不安と希望が混じったまなざしが、俺に向いている。


俺はゆっくり息を吸い、静かにうなずいた。


「生きる気があるなら。

 ――大丈夫だ。俺がいるから」


ちょっとだけ調子に乗ってみる。

その瞬間、彼女は小さく目を見開き、

ほんの一瞬、安心したように微笑んだ。


胸の奥が痛くなる。

ごまかすように、俺は荷物を肩に担いだ。


「拠点を決めるぞ。

 ホームセンターの近くに、使えそうな建物がないか探す。

 そこでまず、一晩耐え抜く」


「……はい」


彼女は俺の背中を追いながら、瓦礫の中を踏みしめる。


世界は崩れたばかりだ。


だが、生き残るための戦いは――

もう始まっていた。




・・・このあとがきの下にある『☆☆☆☆☆のマーク』を、

ポチッと押すと、今日の読書運が急上昇。


押さないと、夜に小さな物音がします。

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