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犯人さがし

小さな足が雪を踏み潰すかのように乱暴に歩いていく。

 

「犯人を捜そう!」


「犯人はこの中にいる!!」


興奮がおさまらず、大きな声が辺りに響く。


「そうだな。おやつでも食べながら作戦会議をしよう」


さっき、警察官の前でしどろもどろになっていた健也ははいつもの調子を取り戻していた。


「凶器は何だったんだろう?」


「ナイフ?」


「首が切られてたもんね」


「足あとはどうやって消したんだろう?」


秘密基地の前にあった足あとは一人分で、あれは被害者である京子の母親のもののはずだ。


「犯人は雪が降る前からいたってことになるはなぁ」


「あ、それかおんぶしてたから1人分だったとか」


「それじゃあ痴情のもつれ?」


「コラ」


「通り魔はカギを掛けないよね、たぶん」


「そういやあのカギの開け方はどこで知ったんだ?」


推理で盛り上がりを見せる中、大崎の一言が双子の動きを止めた。


「・・・オーナーか?」


「雪だるまを作ってるとき、足あとは見た?」


「見なかったよ」


「じゃあやっぱり基地の中にいたのかな?」


「中に、隠れるところなんてある?」


「うーん・・・」


双子は聞かなかったことにして話を続けた。


「おまえら・・・」


無視。


「どこに行ったんだろうね、犯人」


すぐ近くにペンションが見える。


秘密基地はそう遠くにあるところではないが、喋っていると本当にあっという間に到着した。


「じゃあおやつ持って行くから、部屋で待ってるようにな」


「「はーい」」


「莉緒ちゃん、莉久くん?」


玄関のドアを開けると、京子とその父親が立っていた。


2人ともしっかりと外出着を着込んでいる。


「今から遊びに行くの?」


「ううん。お母さんが昼過ぎからいなくて。ちょっと探しに行こうかと」


ピクリと健也の体が震え、頬の辺りがひきつった。


「この辺りは日が暮れるのが早いです。京子ちゃんは残った方がいいですよ?」


さすがは人気のインストラクター。


立て直した営業スマイルに一点の乱れもない。


まずはふたりを引き離してから父親に話をし、さらに娘にはお父さんから話してもらう、という段取りだろう。


そうとは知らない京子の父親は、そうですね、とほっとしたようなため息をついた。


「じゃあ京子ちゃんはお留守番だね? 一緒に遊ぼ?」


「・・・」


莉緒が言うと京子は父親の顔を見る。


「遅くならないようにするから、良い子にしてるんだぞ」


「わかった」


頭をなでられ、京子はくすぐったそうに笑った。


__________



双子の部屋にはたくさんのゲームがあった。


このペンションのオーナーであり、双子の祖父が、一緒に遊ぶために買いそろえたものだ。


その中にはニンテソドウ5もあった。


「これやろう??」


「これやろう!!」


持っていたジュースとクッキー、マカロンなどを乗せたトレイをミニテーブルに置き、目を輝かせる。


「私、やったことない…」


「じゃ、まず京子ちゃんからね」


「どう?やってみる?」


「え、いいの? じゃあ・・・」


ゲーム開始


チャッチャッチャラ~


ドカンッ


ゲームオーバ−


「がんばって! 慣れれば大丈夫だよ」


「うん!」


チャッチャッチャラ~


ドカンッ


ゲームオーバ−


「もう1回! 諦めたら試合終了だよ!」


「うん!」


チャッチャッチャラ~


ドカンッ


ゲームオーバ−


「まだだよ!」


チャッチャッチャラ~


ドカンッ


ゲームオーバ−


「っ! 立つんだジョー!」



チャッチャッチャラ~


ドカンッ


ゲームオーバ−


チャッチャッチャラ~


チャッチャッチャラ~


チャラララララ~


ドカンッ


ゲームオーバ−


チャッチャッチャラ~


ドカンッ


ゲームオーバ−


「・・・」


「おもしろかったwww」


「でしょwww」


3人は記憶を塗り替えた。


「あれ?手のばんそうこう、どうしたの?」


コントローラを置く京子の手の甲には絆創膏が貼られていた。


「ソリに乗ろうとして、転んで切っちゃったの」


「ほんとに?」


しんとした空気が部屋を包んだ。


ふと、そこに車の排気音が聞こえて莉久が窓の外を見た。


「警察の人たちだ」


「え、警察?」


3人揃って窓際による。


見えたのは銀色のセダンだ。


お客さんということもある。


が。


スーツでスキーを楽しむ人はいたことが無い。


「さっきね・・・」


いきなりの告白に京子の動きが固まり、部屋の中はしんと静まり返った。


そのまま誰も口を開かない中、呑気な声が壁を挟んだ外から聞こえた。


「はいるぞー」


同時にドアが開き、大崎が入ってきた。


小さなプレートを3つ持っている。


「ハンバーグだ♪」


双子が瞬時に固まった空気を消し去り、テキパキとミニテーブルの上を片付けた。


「明日のランチに出す予定のヤツなんだけど、味見用にな」


言いながら、ミニテーブルの脇に置かれたクッキーをかじる。


小さなその音が、子どもたちの耳にやけに響いた。

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