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賑やかなスキー場

殺人事件が起こるミステリーです。


起・承・転・結の4部で書いていく予定です。


拙く、読みづらい部分もあるかもしれませんが、最後まで読んでもらえたら嬉しいです。

賑わいを見せるスキー場で、宿泊客の一人が行方不明となった・・・。


スノーボードを担いで外出したことは分かっていたが、夜になっても戻らず、


翌朝、冷たい変死体となって見つかった。


様々な憶測が噂に乗り、不安が広がっていく。


事情を察する人たちは口をつぐみ、



目を背けた。



深くまで木々が立ち並ぶ薄暗い森。


立ち入り禁止エリアであるそこに、小さな影が二つ。


小学生になって二度目の冬。いくつものパトカーが停まり、たくさんの警察官が出入りしていたのがつい数日前だ。


莉緒りお莉久りくは誰もいなくなったその場所に、当たり前のように入っていく。


あたりを見まわし、少し離れた場所で光っているものに気が付いた。


「なにこれ」


「うで時計と、ゴーグルだね」


「隠す?」


「どうしよっか・・・」


莉緒が拾った二つを持ち上げ、ぶらぶらさせた。

莉久はその取得物に対して「めんどうくさい」といわんばかりの顔をしている。


「捨てる?」


「そうだねー」


名案、と拾った二つを放り投げた二人の脳裏に、静かに怒る男の顔が浮かんだ。


「落とし物だしね」


「スタッフに渡さないとね」


投げたそれをダッシュで取りに行き、棒読みで互いの意思確認をした後、元来た道を戻った。


森から出ると、女性客と談笑する男性スタッフの姿があった。

大崎健也おおさき けんやだ。


「健也!」


二人そろって手を振りながら、莉緒が大きな声で大崎を呼んだ。


「何やってんだ? そんなところで」


大崎は双子の背後にある、太陽の光が入りにくいほどうっそうとした森に目をやった。


「ここは立ち入り禁止のはずだが?」


「あんまりデレデレしてると気色悪いって言われるよ」



「・・・そうだな。で、その手に持ってるものはなんだ?」

「「ごまかした!」」


大崎は双子の耳をつかみながら、自分が勤めるペンションに向かった。


ペンションに戻り、食堂に入った。大崎は双子の昼食を作るためにキッチンだ。


拾ったゴーグルと腕時計大崎に渡し、事情も話した。立ち入り禁止区域に入ったことに小言を言われたが、いつものことなので気にしない。

持ち主に関して思うところはあっただろうが、「優しい」大崎は何も言わなかった。


大崎も念仏を唱えるかのように同じことばを繰り返した後はいつも通り自分たちの面倒を見てくれる。


オムライスを注文した双子は大人しく椅子に座って待った。


「あら? 双子ちゃん?」


名前を呼ばれ、振り返れば山内京子やまうち きょうことその両親がいた。

呼んだのは母親だ。


「あなたたちも今からお昼ご飯なの?」


「遊んでたら遅くなりました」


「京子と一緒ね。この子も一人で遊びに行ってなかなか帰ってこないのよ」


ため息をつく京子の母。

当の京子はぷいっと顔を背けて返事をしない。


「京子はツリーランコースを見に行ってたらしいけど、ふたりは? どこか楽しい場所があるなら教えてほしいな」


眉をひそめた奥さんをフォローするように京子の父親が笑顔で話しかけた。


「「・・・」」


立ち入り禁止区域を探検に、などと言って大崎の耳に入ればまた長い小言を聞かされることになるだろう。


「ひとり?じゃあお昼から一緒に遊ぶ?」


「外じゃないけどいい場所知ってるんだ」


「いいの?」


嬉しそうに答えながら、ちらりと母親の顔を見る京子。


「良かったな!莉緒ちゃん、莉久くんよろしく頼むよ」


母親より先に父親がそう返事をし、一緒に遊ぶことが決定した。


そこにようやく、湯気の立つオムライスを二皿持って大崎が登場した。


皿の上には少量のケチャップライスと楕円型のオムレツが乗っていて、オムレツにはケチャップで双子の名前を書いている。


「山内さん?ランチのラストオーダーは13時までですよ?」


食べ物を持っているので言ってて違和感しかないが仕方がない。双子はこのペンションのオーナーの孫だ。特別待遇というやつだ。


「いやあ、美味しそうなオムライスですね」


「莉緒の方がおいしそう」


「莉久の方がきれいじゃない?」


「そうか」


莉緒の前に「りく」と書いたオムライスを、莉久の前には「りお」と書いたオムライスを置いた。


おこってるかな?とひそひそと話し合う双子を無視し、


「同じオムライスかミートパスタなら作りますけど」


小さなペンションでは融通を利かせやすいというのもあるし、本人の性格もある。親切そうな笑顔を向けて、お客さまをもてなした。


「僕は同じものが良いな。でもいちおう値段聞いていいかな?」


「1000円ですよ。朝は500円、昼は1000円、夜は1500円です。時間外だからって別途料金は取りませんよ」


困ったような笑顔で大崎は答えた。


その横ではニマニマした双子がオムレツにスプーンを差し、割くように広げた。


するとふわとろの中身が流れるようにケチャップライスを覆った。そしてオレンジかかった茶色のソースが色付けされていく。


同時に香ばしい匂いが鼻をくすぐる。


「オムライスで」


「私も」


「私はミートパスタが食べてみたいわ」


山内父と娘の京子がオムライス、山内母がパスタだ。


「野菜多め、とか言っても良いのかしら? すぐに太っちゃうのよね」


「大丈夫ですよ。それに、太っていませんし、お綺麗ですよ」


「そうかしら」


「はい」


上目遣いで赤らめる山内母に爽やかな笑顔で答えて大崎は食堂を出た。


「良いシェフを雇っているね」


オムライスにくぎ付けの山内父が莉緒に話しかける。


「スキーのインストラクターやってます。人気者です」


「シェフじゃないのかい?」


「シェフ兼任です」


口をもごもごさせる莉緒に変わって今度は莉久が答えた。


「普段は夜とか朝に作り置きしてそれをバイトが出してます」


「オムライスの卵も作り置きなの?」


「「オムライスはぼくたち専用です」」


今日は特別に、と双子はどや顔で答え、揃って大きな口を開けてふわとろオムライスを食べ始めた。


そこから二つのオムライス(大人サイズ)が運ばれてくるまで、無言の時間が続いた。

読んでいただきありがとうございます。


次回も読んでいただけるよう頑張って書いていきます。

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