戦闘後
2025/03/05修正しました。
ランディスは距離を取り、面白くないと言った表情でその様子を見守っている。
「次は自分で何とかしろ」と言いたげにランディスは一瞥をくれた。
内心では妹を無事に守れたことに安堵している一方、守られる妹の姿に彼の眉間の皺は深くなる。
自分の手で守るべき家族を、他人に頼ることへの苛立ちが胸中をざわめかせていた。
ランディスは助け起こされるアリエルと、柔和に微笑むパーシヴァルを見ながら、わずかに試してみたくなった。 彼の実力と、意思をーー
俺には、あいつ(アリエル)を守りきれるかどうかの自信がない……
だが、それを他人に任せるのも癪だ。
そんな思いが胸をよぎり、剣を振り抜いた。
「ランディス、やめなさい!」ラヴィーナが叫ぶ。
だが、ランディスの剣はすでに閃いていた。
「試すだけだ」と冷静に言う彼に、
エキドナがため息をつき、「全く世話の焼けるやつだ」とぼやいた。
瞬間、ランディスの剣が閃きーーパーシヴァルを一閃した。
アリエルをも巻き込みかねない一撃ーー
それをパーシヴァルはかばうように前に立ち、空いた方の手で剣を受ける。
剣を受け止めた手には微動だにしない力が宿っていた。それはまるで嵐の中でも揺るがぬ大樹のようだった。
「何のつもりですかな、ランディス殿?」
「いいや、貴公も腕に覚えがあるようだからな、少し試してみたくなったのさ」
アリエルは血の気が引くのを感じながら、二人のやりとりを見守る。
「戯れはよしていただきたい。 いくら峰打ちとはいえやり過ぎではないでしょうか?」
パーシヴァルの強い意思をうけて、ランディスが下がる。
「なに、騎士殿が本当に我が妹を護れるのか、試したくなっただけのこと」
「それで結果は?」
「答えは出ている。それ以上に言うことは私にはない」
ーーと言いながら、ランディスは、その場を後にした。
「全く困ったお兄様ね」と、呆れ顔でつぶやく、ラヴィーナ。
「まあ、そう警戒することはない。 ランディスのいつもの気まぐれよ、奴は結果を分かっておりながら、ああいう行動をした、それでよかろう騎士殿も、剣を収めていただこううかの? わしらに敵意はないよ。 さて、わしは、戦利品でもあさってこようかの」
と一方的に言い放ったエキドナもその場を後にする。
「申し訳ありません、兄が大変失礼をーー!」
「いえ、私は貴女ーーエカテリーナ様を護るのが務め、ランディス殿も私がいいところを持って行ったのがすこし、面白くなかったのでしょう?」
そういって、傅くパーシヴァルに、私は咄嗟に手を差しだそうとしたがーー
「後ろから来たラヴィーナに、貴女は公女なのよ、しゃんとおし、その言葉は自分が誰であるかを再び思い出させた。
そして、震える指先を自分の意志で引き戻す。ーー伸ばし掛けた手を引く」
パーシヴァルから身体と視線を外して、周囲の様子を見渡す。
ランディスはパーシヴァルと後退するように自主的に哨戒にでたようだった。
「さて、どこから始めようかね、貴重な素材を無駄にはできないからの」
エキドナは、おそらくそれなりに希少な生物であるゲイザーの死体から、何かしらの素材を剥ぎ取っているようだった。
大きな眼球にナイフを突き刺した瞬間、私は目を背けた。 解体作業の音が夜の静寂を破る。金属が硬い何かを断ち切る鈍い音が耳に残る。
頭の中で生まれた不快なイメージを振り払うように、私は目の前のパーシヴァルに意識を向けた。
彼の落ち着いた姿を見ていると、自然と心が落ち着くのを感じた。
そういえば、ゲイザーなどの希少種から、とれる素材は魔道の研究でも、鱗は武器や装飾品などに加工できたり眼球のレンズも同じくだが、別の使用方法として魔道の素材になると聞いたことがある。
エキドナのことだから、全て解体していると予想されるが、視界に入れるのはためらわれるため確認は行わない。 見なかったことにする。
パーシヴァルを見つめることで、幾分生々しい想像を忘れて彼を見つめる。
「どうしたの、そんなに彼のことが気に入ったのアリエル? といつからか隣に立っていたラヴィーナが茶化すように言った」
見透かされた恥ずかしさで、私は顔が熱くなるのを感じつつ。
「別にそういうわけでは……ただ、きれいな方だったので見とれていただけです」
「まあまあ、エカテリーナ公女様。正式な婚約者が待っているんだから、任務が終わるまではお楽しみはお預けよ」
と、ラヴィーナはウィンクしながら、その場を後にしていった。
そろそろ、夜も更ける。 私は重たくなったまぶた、をこすりながら寝袋へと入った。
「パーシヴァル様もそろそろ寝なくてはならないのでないのですか?」
と問いかけるとーー
「いえ、私は一晩ぐらいは眠らずとも行動可能です。
この森には潜む危険が多い。昼間より夜が特に厄介だ。
誰かが見張らねばならない」
若干気の引ける返答を受けて、何か声を掛けたくなるものの、自分が何か言うべきことではないと考え、口をつぐむ。
男性と女性のスペースは別れているが、警護の問題上そう距離があるわけでもなく、パーシヴァルが、寝ずの番をしているのを見ながら、意識は遠のいていった……
遠くから風が森の奥深くをざわめかせた。パーシヴァルは剣の柄に手を添え、注意深く耳を澄ませていた。だが、その音が何であるかを知るのは翌朝になってからだった。
翌朝ーー
目が覚めると、あたりは血の海と言ってもいい惨状だった。
モンスターの死体があちこちに転がっている。
見たくないのに、目が自然と血まみれの風景に吸い寄せられる。昨夜ここで何が起きたのか、想像するだけで身体が震えた。
ただし、私やラヴィーナの寝袋には一切の跡が残っていない。
これだけの戦闘の後があったというのに私は、すっかり熟睡していたというのだろうか?
「アリエルがよく眠れるように、魔法で結界を張っておいたのよ。
それであの馬鹿兄貴と、騎士様が暴れ回ったっけっかがこれというわけね」
と、ラヴィーナが、簡潔に説明してくれる。
そこまで聞いて視線を上に上げると、返り血にまみれた、ランディスとパーシヴァルの姿があった。
「夜の間、二人で競っていたみたいよ、まあ、私も寝てたから詳しく見てたわけじゃないけどね」
余裕綽々の態度で、衣装から血を落としているパーシヴァルと、息が上がっているランディスがそこには立っていた。
「ランディスのほうが、一方的に競争してたみたいだけど、まあ、結果は見ての通りね。
流石ね、ただ者ではないわね。あの騎士様」
「フン、少しはできるようだな。 だがこれで勝ったと思うな!」
と言いながらランディスは剣を納めて、その場に座り込んだ。
妹を守ることが、自分の役目だ。それを、他人に奪われるわけにはいかない。
そんな思いが、剣を振るう力となっていた。
それを見たラヴィーナが、これだから男って奴はと、ぼそっとつぶやく。
エキドナは夜中ずっと素材あさりをしていたらしく、短剣は血まみれだが身体には一切の返り血がない
「あんたたちが命を張ってくれたおかげで、私は安全に稼がせてもらったよ。
ふふふ、いい素材がたくさん手に入ったわい。 楽して一稼ぎできたの」
そうして旅が再開される、馬車へと乗り込み、道行くこと1週間ーー
森を抜け、小川を越え、風が運ぶ野の花の香りを感じながら、旅は順調に進んだ。
途中、道端の村で立ち寄った小さな市場では、新鮮な果物を手に入れ補給も行った。
決して長い期間ではないが、初めての旅路を終えて、ようやくルキアへと到着した。
城門に到着するとパーシヴァルが変装を解き進み出る。
すると兵士がさっと、道を空け、もう一人が、城門を開けるように指示する。
城門はかなりの大きさだが頻繁に出入りする際の、小さな門ももうけられており、そちらを使って入場する。
城下町に入ったところで、パーシヴァルは一向に向き直る。
私に膝をつき任務を説明する。
「此度はルキア王国へようこそ、エカテリーナ公女様。
城下町に入ればまず安全です。 私は一足先に王宮に戻らねばなりません。
王への報告があるからです。
ですが、ここからは安全ですので、観光がてらにルキアの町並みを、見て回るのも良いでしょう?
ーー夜までに王城へと訪れてくだされば、問題ありません」
といいつつ、パーシヴァルは一礼して、王城へと帰っていく。
呼び止めたいのをぐっと我慢して、伸ばし掛けた手を止めると。
街の人々がこちらをチラチラと盗み見ていることに気づく。
「正式な婚約はまだ発表前の筈なんだがの、まあ、これだけ派手な出で立ちをしてれば目立つのも道理かの? といって、エキドナは、商業区へと消えていった。
「私もここで武器の手入れがしたい。 少し鍛冶屋をみてまわってくる」
と、血と錆で汚れている剣を見せるように言ってくるランディスも去って行く。
ストックがそう余裕がないので、エインフェリアの記憶が連載期間長くなるのかなあ? 追加仕様にもなかなか時間がない…………




