「狐と荘子の教え」現代版
中国の紀元前の歴史に一時期ハマりました。
ということで、十八史略のエピソードから。
さて、皆さん、今日は中国の春秋戦国時代のお話を一つお届けしましょう。舞台は、戦国時代の楚の国です。楚の国には、荘子という賢者がおりました。彼は道家の思想を説くことで知られ、数々の逸話を残しています。今回のお話は、その荘子にまつわる、ちょっと不思議で面白い話です。
荘子がまだ若かりし頃のこと。ある日、彼は山の中を散歩していました。すると、目の前を一匹の狐が駆け抜けました。荘子は興味をそそられ、その狐を追いかけることにしました。
狐は、荘子をちらっと見ると、さらに奥へと逃げていきます。荘子もその後を追いかけていきましたが、突然、狐がピタッと足を止めました。狐は振り返り、荘子をじっと見つめました。
荘子は狐に向かって言いました。「お前はなぜ逃げるのだ?私はお前に害を与えるつもりなどないのに。」
すると、狐が口を開きました(これが落語ですから、狐もしゃべります)。「私はあなたの賢さを知っています。あなたはこの世の道理をよく理解している。しかし、狐の道理もまた違うものです。」
荘子は狐の言葉に興味を持ちました。「ほう、狐の道理とは何か、教えてくれ。」
狐は続けて言いました。「人間は知恵があり、それをもって世を治めますが、我々狐は知恵よりも直感に従います。だからこそ、我々は危険を察知し、逃げるのです。あなたが害を与えるつもりがなくても、我々は用心深く、常に備えています。」
荘子はその言葉に深く考えさせられました。「確かに、人間は知恵を誇るが、時には直感や本能も重要なのかもしれない。」
狐は微笑み、「だから、私たちは逃げるのです。賢者といえども、時には動物の直感を学ぶべきなのです」と言いました。
荘子はその後、狐の教えを心に刻み込み、道家の思想をさらに深めることとなりました。
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さて、ここからは現代の話です。
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ある日のこと、若手社員の高橋君が、会社の上司である田中部長と一緒に出張に出かけました。田中部長は賢い人で、会社のことなら何でも知っていると評判でした。
出張先での仕事を終え、夜の街を散策していると、田中部長がふと立ち止まり、小さな居酒屋を指差しました。
「高橋君、せっかくだから、ちょっと一杯やっていこうか。この辺りに来るときは、必ず寄る行きつけの店なんだ」と言いました。
高橋君は少し不安になりながらも、「ここじゃなくて、もう少し先の店にしましょうよ。他にもっといい店があるかもしれませんよ」と提案しました。しかし、田中部長は笑いながら、「いやいや、こんな店でも、実は結構おいしいんだよ。店主とも顔なじみなんだ。信頼できる店だよ」と笑顔で答えました。
高橋君は店の前に立った瞬間、なんとなく嫌な感じがしました。「部長、やっぱり他の店にしませんか?なんとなく、ここはちょっと…嫌な感じがするんです」と直感的に言いました。
田中部長は少し驚いた様子で、「そうか?まあ、そんなに言うなら別の店でもいいか」と承諾し、二人はその場を離れることにしました。
翌日、高橋君はニュースを見て驚きました。その店で集団食中毒が発生していたことが発覚したのです。
田中部長は高橋君に感謝し、「いやあ、高橋君、君の直感に救われたよ。知識や経験も大事だが、時には本能や直感を信じることも重要だね」と感心しました。
まさに「狐と荘子の教え」、知恵と直感、両方が大切だという教訓ですね。
人間、勘って侮れないですよね。
言語化できないだけで、様々な情報から導き出してるんでしょうかね。