プロローグ
5日間ほどで完結予定です。
ケルティア王国王宮、王座の間。
その王座に背を預けているのは銀色の髪の青年。このケルティア王国を統べる若き王、グラークス。整った顔立ちに、緑の瞳を持つその青年の前には、水色のドレスを着た少女が一人。この若き王の妹ミトセリスで、やはり美しい顔立ち同じ色の髪と瞳を持つ。良く似た顔立ちの兄妹だが、何やら揉めているようで?
「はい?」
ミトセリスは自分の兄の言葉に顔を顰める。
「だから、グラシス王国の晩餐会に行って来てくれと言ったんだ」
涼しい顔で同じ言葉を繰り返す兄に、ミトセリスは目を細めて文句を言う。
「……、お兄様。これまであんなにしつこく私に、他国の晩餐会なんて、面白くもない、あんなもの行くもんじゃないと散々おっしゃっていたと思うんですが」
「しかたないだろ?親しくしているグラシス王国第1王子から、俺宛に直々に招待状が送られて来たから、断るに断れないじゃないか」
そんな風に言っているが、目を合わせない兄の様子にミトセリスが不満そうに言葉を返す。
「お兄様に送られてきたのなら、お兄様が行ってこればよろしいじゃないですか」
そう言った妹に対して、兄の方は顔をキリッとさせて問う。
「ミトス、お前は私がそんなに暇そうに見えるか?」
「えぇ、とても」
スパッと言い切った妹の言葉に、王座に座っていた兄の方ががくりと頭を下げる。
「おまえなぁ……」
「だって、お兄様より、周りの王佐の方々の方がよっぽど大変そうだもの」
そんな風に言った妹に、深い笑顔を向けた兄は姿勢を整えてわざとらしく咳払いをした。
「……、さて、とにかくだ。お前には1週間後にグラシスの晩餐会に行ってもらう」
「1週間後⁈いくらなんでも急すぎます!」
「しかたないだろう」
「納得できません!」
引き下がらないミトセリスに剛を煮やしたグラークスは、一度大きく手を打ち鳴らす。パンッと言う大きな音に、ミトセリスは口を閉ざした。
「よし、話は終わりだ。お兄様は国政を動かすのに忙しいんだ。お前も部屋に戻って1週間後の準備でもしてくれ」
そんな兄の締め言葉に、ミトセリスは大きく目を見開いてから、冷めた目で兄を見つめた。
「お兄様なんて、愛しい人にフラれてしまえばいいのよ」
立ち上がりかけていたグラークスがじろりとミトセリスを見た。
「なんだかものすごく聞き捨てならない言葉が聞こえたような気がしたんだが……」
しかし、ミトセリスの方も兄の睨みなど怖くないとばかりに、満面の笑顔を返す。
「いいえ、何も言ってません。失礼します」
そう言って踵を返し歩き始めたところで、再び声をかけられる。
「あ、この晩餐会は、第1王子の誕生日祝いを兼ねてるから、何か祝いの品を持っていくんだぞー」
あまりにも他人事で呑気な声に、妹の方はイラッとして振り返る。
「……、わかりました!」
それだけ言うと行儀悪く大きく足音を立てながら王座の間を出て、兄に向かって「べーっ!」と舌を出すと、思いっきり扉を閉めた。
イライラしながら廊下を歩いていくうちにだんだんと心が落ち着いて来て、次第に別の不安に襲われる。
「自分宛に来てるんだから自分で行きなさいよね。っていうか、もしかして私が王妹として初めて他国で公式的に参加する行事になる気がする……。え、1週間後?え、大丈夫?」