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第10話(1)勇者パーティー快進撃

                  10

「うおおお⁉ デ、デカいアリだ⁉」

 ギガントアントとの遭遇に小太りの勇者は戸惑う。

「勇者さま、少し落ち着いてください……!」

 アーヴが小太りの勇者を落ち着かせようとする。

「……」

 ギガントアントが小太りの勇者パーティーの方に視線を向ける。

「うわ! こっちを見たぞ!」

 小太りの勇者が声を上げる。

「騒ぐからですよ……!」

「こちらから奇襲をかけられたのに……」

 クイナが呆れ気味に呟く。

「………」

 ギガントアントが小太りの勇者パーティーの方に歩いてくる。

「こ、こっちに迫ってくる!」

「だから落ち着いて……!」

「うわあ! 逃げろ!」

 小太りの勇者が逃げ出す。その走りは遅い。

「………」

「お、追ってくるぞ!」

「それは逃げるからですよ……!」

「動くものに反応するのです……」

 アーヴとクイナが冷静に呟く。

「うぶっ!」

 小太りの勇者が転倒する。アーヴが声をかける。

「だ、大丈夫ですか?」

「な、なんとかしろ!」

 小太りの勇者が鼻を抑えながら騒ぐ。

「言われなくても……!」

「……!」

 アーヴが剣を横に薙いで、ギガントアントの前方の両脚を切断する。ギガントアントは地面に突っ伏すようなかたちになる。アーヴが声を上げる。

「クイナさん!」

「おおっ!」

「!」

 飛び上がったクイナが槌を振り下ろし、ギガントアントの頭部を叩き潰す。

                   ♢

「うおおおお⁉ デ、デカい蛾だ⁉」

 小太りの勇者が驚く。

「……あれが今回のクエストの討伐対象であるメガバタフライです。蛾ではありません、蝶ですよ……」

 アーヴが冷静に指摘する。

「…………」

 メガバタフライが大きな羽を羽ばたかせて、小太りの勇者パーティーの方に迫ってくる。

「うわあっ⁉ こっちに来るぞ⁉」

「蛾呼ばわりされて怒ったんじゃないですか……?」

 レプが笑い交じりに話す。

「うわあああっ!」

 勇者が情けない声を上げる。

「うるさいな……頭にガンガン響く……こちらが怒りたいくらいだよ……」

 ルパが自らの側頭部を抑えながら呟く。

「二日酔いは自己責任でしょ……」

 ルパの呟きにレプが苦笑する。

「ぶ、ぶつぶつ言ってないで、お前らなんとかしろ!」

 レプがわざとらしく両手を広げる。

「……空を飛ぶ相手に対しては、我々姉妹は成す術もありません」

「はあっ⁉」

 レプの言葉に小太りの勇者が面食らう。

「冗談です」

「じょ、冗談を言っている場合か!」

「……夜の酒をもっと上等なものに代えてもらえません?」

 ルパが酒を飲む手つきをしながら小太りの勇者に問う。

「あ、ああ、代える! いくらでも代えてやるとも!」

 小太りの勇者が頷く。

「交渉成立だ……クイナ!」

「はい!」

「……‼」

 クイナが弓でメガバタフライの羽を射抜く。メガバタフライが高度を下げる。

「よっしゃ! 姉さん!」

「ええ!」

「‼」

 レプとルパが襲いかかり、メガバタフライの頭部と胴体を水晶玉と蹴りで叩き潰す。

                   ♢

「うおおおおお⁉ デ、デカいクモだ⁉」

 小太りの勇者が大声を上げる。

「……あれが今回のクエストの討伐対象であるジャイアントスパイダーです……」

 アーヴが冷静に説明する。

「……………」

 ジャイアントスパイダーが小太りの勇者パーティーの方に迫る。

「うわあっ! こ、こっちに来るぞ!」

「それは見れば分かります」

 レプが微笑みながら頷く。

「も、もしかしてヤバいんじゃないか⁉」

「もしかしなくてもヤバいですよ……」

 ルパが頭を抑えながら呟く。

「ど、どうするんだ⁉ 逃げるか⁉ うん、逃げるぞ!」

「………!」

 ジャイアントスパイダーが蜘蛛の糸を吐く。小太りの勇者がそれに捕まる。

「うわああっ! 捕まった! なんとかしろ!」

「そのまま捕食されて欲しい……」

「やっぱりクモから見ても旨そうなのかな……」

「ご姉妹、本音を言っている場合ではないです……」

 レプとルパをクイナがたしなめる。

「分かっているよ……」

 ルパが後頭部をポリポリと掻く。

「オッカちゃん、お願い~」

「……うん」

 レパの頼みに応じ、オッカがドラゴンに変身する。

「燃やしちゃって~」

「グオオッ!」

 オッカの吐いた炎にジャイアントスパイダーはその半身が包まれ、ぐったりとする。

「仕上げといくか!」

「了解!」

「……⁉」

 ルパとレプの打撃、そしてクイナの剣による攻撃を食らい、ジャイアントスパイダーは完全に絶命する。

「う、うむ、俺の指示通りだ!」

 クモの巣に絡まって転がりながら、小太りの勇者が頷く。

お読み頂いてありがとうございます。

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