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第4話(3)過疎化集落と思いきや

「あ、あれえ⁉」

「何を素っ頓狂な声を上げているんだ?」

「い、いや、若者が……若い男女が多い!」

 集落に入ってイオナが周囲を見渡しながら驚く。

「そうだな……」

「で、でも皆、服装が似ている?」

「……」

「おい」

「ぐえっ!」

 リュートがイオナの襟首を引っ張る。

「あんまりジロジロと見るな、失礼だろう?」

「そ、それはそうですが……観察することも大事かと……」

「まあ、それはそうなんだが……もっとこう……さりげなくやれ」

「は、はあ……」

「とりあえず座るぞ」

「あ、はい……」

 二人は集落全体を見渡せる位置にある垣根に腰かける。

「……どう思う?」

「若さが溢れています」

「そういうことじゃない」

「瑞々しさに溢れています」

「言い方の問題でもない」

「えっと、一人、二人、三人……」

「……何をやっている?」

「いえ、男子が何人か数えようかと思って……」

「男女比はこの際どうでもいい」

「いいんですか?」

「ああ、ってか、数え方下手だな……」

「いや、確実に数えようと思って……」

「大体の場合、男子が多いものだよ」

「え?」

「ざっと見た感じもそうだろう?」

 リュートが集団を指し示す。

「た、確かにそうですが……あの……今、大体の場合とおっしゃいましたね?」

「ああ」

「もしかしてですが……この若人集団が何者かご存知なのですね?」

「集落の者ではないと分かったか」

「そ、それくらいは分かります」

 イオナが頷く。

「ふむ、何者かというと……」

 リュートが腕を組む。

「はい……」

「……」

「………」

「…………」

「あ、あの……?」

「知っていると言えば知っているし……」

「へ?」

「知らんと言えば知らん……」

「はあ?」

 イオナが首を傾げる。

「まあ、そういうややこしい集団なんだよ」

「ど、どうややこしいんですか?」

「……さっき服装が似ていると気づいただろう?」

「ええ、魔法学院のような……」

「彼らは学校の生徒だ」

「学校の生徒?」

「そうだ」

「ど、どこの学校ですか?」

 イオナの問いに対し、リュートが明後日の方向を指差す。

「……異世界だと言われている」

「い、異世界⁉」

 イオナが驚く。

「そう、彼らは異なる世界からこの世界に迷い込んだんだ。いわゆる転移者ってやつだな。一説には何者かによって召喚されているとも聞くが」

「転移者……何者とは?」

「それは知らん」

 リュートが首をすくめる。

「し、知らないんですか……」

「この場合、それはどうでもいいことだ。重要なのは、若い男女が二、三十人のクラス単位――彼らの世界でもクラスと言うらしい――で、この地に転移してきたということだ」

「そ、そうですか……リュートさんは分かっていたんですか?」

「不思議なことに毎年この時期になると、この集落群の近辺にああいう若い男女が多数現れる。何故かはよく分からん。彼らの証言を借りるならば――これも不思議なことに言葉は通じる――大体が『旅行中に事故にあったかと思ったら、ここにたどり着いていた』と……」

「旅行中?」

「こちらと異なる世界では、旅行のシーズンなんじゃないか?」

「はあ……あ!」

「なんだ?」

「リュートさんが見た記事ってこれですか? 『~~地方で謎の物体を発見~』ってやつ!」

 イオナが新聞のある記事を指し示す。

「そうだ、そろそろその季節だろうと思って、新聞を眺めていたらビンゴだったよ」

「は、はえ~」

「なんていう声を出してるんだよ……」

 リュートが苦笑する。

「も、もしかして……」

「うん?」

「この転移者たちをスカウトするんですか?」

「ほう、なかなか鋭いな」

「いや、それはさすがに分かりますよ」

「転移者というのはこれまた不思議なもので、高確率で優れたスキルを有している場合が多い。さらにこういうクラス単位での転移者に至っては、全員がスキル持ちであるというのも珍しくはない」

「へ、へえ……」

「加えて若いし、バイタリティーもある……野心もな」

「じ、人材の宝庫じゃないですか⁉」

「そうとも言うな」

「うわあ~てっきり高齢化過疎化集落だと思っていたら……」

「常識に囚われるなってことだ」

「なるほど、では誰をスカウトするんですか? あのリーダーシップのありそうな男子? それともガタイが良い男子?」

「違うな」

「ええ?」

 リュートがイオナの指し示したリーダーシップのありそうな男子に話しかける。二言三言話した後、リュートが戻ってくる。

「よし、集落を出るぞ」

「ええっ⁉」

 リュートの言葉にイオナがびっくりする。

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