表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/145

#88 答え合わせスタート



 色々とワケあって、俺は今『ロデオ』という名前のレストランへ来ていた。

 テーブル席に座り、


「おお〜……マコトさん、いらっしゃい! あ、あんたには半年前からずっとお世話になってるが……ちょっと今回」


「ようロディ、肉だ! ステーキくれ!」


 オーナー兼料理長であるコック姿の大男ロディだが、俺の知り合いということもあってか直接の接客だ。

 注文されて、引きつった笑顔で手をスリスリさせ、


「え、あっ、は〜い……お連れさんも?」


「うん! にくだにくだ〜! にくもってこ〜いロディ!!」

「で、ではお願いします……ロディさん……何かすみません」


「い、いや、いいんですよルークさん……困った時はお互い様……だし?」


 そう言いながらも大きなため息を吐いて、ロディは厨房にトボトボ戻ってく。

 ――あいつが何でこんなイヤそうに接客してくるかって? そりゃあ、



「え? あれって……」

「マコト・エイロネイアーだよな……」

「賞金首の!?」

「よく平気で肉なんか食えるな……」

「で、でもルーク様も一緒だぞ……!?」



 レストランの客が、怯えたり困惑したりでみんな隅に逃げちまってるからな。

 まぁ大丈夫だろ。ちょっとぐらい。


 ――そんで、


「えっと……ジキルさん? 席に座ったらどうです? 息も上がってて疲れているのでは?」


「い、いや……その……ルーク!!」


「は、はい?」


「あの、そのっ……」


 街を歩いてたら、なぜか民家の屋根から飛び降りてきたジキル。

 そして当たり前のような顔でスタスタ歩いて合流してきたルーク。

 俺とプラムだけでなくこの二人も追加されたワケで、余計に騒ぎになってそうだ。



「もっ……申し訳なかった!! あたしはひどいことを……とんでもないことをっ!」



 偶然にもジキルとルークが出会ってしまったので、ほんのちょっと気まずい空気だな。

 この二人、ついこの前に殺し合ってんだ。


 彼女は深く頭を下げてるが、


「ジキルさん」


「はっ!!?」


「……あなたは僕に何かしましたか? 僕があなたに攻撃したのは、何故だったかわかりますか?」


「っ!!」


「僕にじゃないでしょう。謝るのは」


 決して説教臭い雰囲気ではなく、ルークは焦るジキルに対して慈愛のような眼差しを向けて、優しい笑顔で諭すように言った。


 謝るべきはミーナに、だよな。

 立場上は敵であろうとも、ルークが好き好んで人を攻撃するワケがねぇんだ。必ず相応の理由がある。


「わかってるよ、ルーク……それに()()には助けられてしまったし」


「は?」


 俺の方をチラ見しながら言ってくるんで、ますます意味がわからんが、


「知らないでしょマコト? ……あんたの家、三階より上は罠だらけだった」


「はぁッ!? それでお前が助けられたとかいうのは知らんが、魔改造したのはミーナだぞ!? 俺を殺す気かアイツ!!?」

「ミーナ黒幕説……だね!」

「お前ちょっと黙ってろプラム!」

「いや〜でもミーナはポンコツだったり天然なとこあるからね〜」

「度を越してるだろ!!」


 とは言ったものの、頷けちまうのが恐ろしい。

 ミーナって可愛くて清楚なメイドに見えて、リスキーマウスみてぇなバケモノネズミを前にして普通のネズミの解説始めるヤツだぜ。家も劇的ビ◯ォーアフターしてから縦に魔改造するし。

 度を越したポンコツ女だったわ。


 まぁこの混沌とした状況で、ミーナまで陰謀論みてぇなのに巻き込みたくねぇ。

 記憶から消すか。今の話。



「――さて。ジキルさんのもっと詳しい話とか、ベルク家壊滅、懸賞金騒ぎ……色々ありますが、まずは一番重要なことの答え合わせをしましょうか。マコトさん」



 メインの目的は、俺とルークが話し合うことだった。

 他の話は最近になって生えてきた別問題だからな、脱線しそうだった話をルークは戻してくれた。


「お前どこまで知ってる? ルーク」


「……いえ、答え合わせとか言っちゃいましたが、大したことは……」


 堂々と対面してたのに、急に縮こまる。


「おいおい。俺について真剣に調査してくれてたのなんか、お前だけだぜ。俺ですらず〜っと楽観視してたんだ――何でもいい。小せぇことでも何でも、知ってることを教えてくれ。相棒」


 薄々『変だな』と思うことはあったが、ダンジョンに入る辺りでようやく表面化してきた問題が多い。

 ルークはそんなのよりずっと前から、俺のことを気にかけてくれてたんだ。どんな小さな情報でも感謝しかねぇぜ。


 俺もまぁマゼンタとかバートンと話して、ほんの少しわかったことはあったが……

 あ、バートンの本音の話もしねぇとな。



「ここ最近は妙な事件続きです――『学園のガーゴイル襲撃事件』に、リスキーマウスがマコトさんの家に出現したり、ダンジョンが出現……と。順を追って精査していきましょう」


「そうかガーゴイル……確かにあん時辺りから、半年前まであり得なかったことの連続だ」



 ちょっともう懐かしいエピソードの部類に入ってきちまいそうなんだが……

 ルークは淡々と話しやがる。これが若さか。



「そうです。まずガーゴイルのことです。あの魔物は翼を持ち空を飛べるわけですし、いつだって王国の壁を越えて襲撃できたはずです」


「あぁ……」


「ですがこれまでの歴史上、ガーゴイルが外から壁を越えてきたことはありませんでした。ガーゴイルに限らず魔物全般に言えますが」


「だよな。聞いたことねぇもん」


「魔物ではありますが、サンライト王国内の『多数の強者』の気配を本能で感じ取り、人間の縄張りである、と線引きして認識していたものと思われます」



 縄張り意識? ってヤツか? 強者の気配とか……生き物としての本能って感じがするよな。

 だが、


「今になって急にそれが破られた、と」


「はい。そしてマコトさん……知っていますか? ガーゴイルが侵入してから『学園』まで、どのような道を辿ったか」


「どのようなって…………あっ」


 思い当たることがあった。



『迷わず一直線に学園を目指してきてた』



 学園を救った直後、ジャイロが俺に言ってきたことだった。

 当時の俺は気にも留めてなかったが、それを伝えるとルークは頷く。



「おかしいと思いませんか? 壁を越えるだけでも史上初なのに、群れで、しかも親玉のマザーガーゴイルまで連れて、迷わず一直線に一つの建物を目指してくるなんて」


「……殺意、高ぇよな……」


「それに何故、よりにもよって『学園』なんでしょうね? 黒幕の企みがあるとしても、例えば王様を狙うとかでもいいのに……」


「……」



 正直、ルークの口ぶりだけで俺の脳内は結論に辿り着いてると思う。

 だって、



「その日は……俺の『特別講義』の日だ」


「はい。十中八九、あの事件はマコトさんを狙ったものでしょう」



 タイミングがおかしい。

 後にも先にも俺が『学園』なんかにお邪魔するのは――あの日の、あの二時間しか無いだろう。



「やはりマコトさんはあの時から――いえ、魔王を殺害した半年前からずっと、何者かに命を狙われているんですよ」



 あの時点で、とっくのとうに始まってたってことか……


 俺たちと付き合わなくなったタイミングや話し方からして、ルークは半年前からこの事態を危惧してたようだな。


 となると問題は『黒幕の目的』になりそうだが、ルークはそれぐらいはわかっていそうだ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ