表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/145

#87 SIDEルーク:彼の居場所



「――今の話、本気なんだよな? ルークさんよぉ……」


「はい。他でもなくあなただから頼みたいんですよ。ブラッドさん」


「ダーッハハハ! こんなチンピラに嬉しいこと言ってくれるな……頭の隅に置いとこう」



 大通りから外れた、いわゆる路地裏。

 魔術師団の二番手である青髪の若者ルークは、マコトの子分である冒険者ブラッドと、とある話をしていた。


 その話もまとまったところで、


「ダンジョンはどうだったよ? あんたもプラムちゃんと関係が深いだろ」


 まだ全身の包帯が痛々しい大男ブラッドは、木箱に座りながら「俺も行きたかったがこのザマでな」と自嘲しつつ問うてくる。

 ルークも頷いて苦笑し、


「なかなか大変でしたね……でも、ゼインさんが見つけてくれたポーションのおかげでプラムは助かりました。ありがとうございます」


「いやぁ〜良かったっス! プラムちゃんが元に戻って!」


 隣で聞いていたゼインも笑っており、喜ばしげな上に誇らしげだ。


「だが、何となくわかる。またマコトの親分は体を張ったろう? プラムちゃんのためとなりゃ、死に物狂いだったはずだ」


「っ……そうですね……」


 言葉通り、マコトは死ぬほど体を張りまくっていた。それを目の前で何度も見てきたルークには、気の利いた返事は思いつかなかった。


「ルークさんよ、お疲れ様だったな。ダハハハ! 若ぇのに偉いよあんたは!」


「いえいえ……」


「おかしいな! 俺たちゃ半年前、一緒に魔王軍を倒したはずなのに! まるで初対面みたいになっちまってる!」


「本当ですね、もっとお話する機会があれば良かったですが……」


「これから仲良くすりゃいいじゃねぇか! ダッハッハ!」


 陽気にルークの肩をバンバン叩いてくるブラッド。

 だがルークは気づいていた――マコトの子分はブラッドとゼインの他に、いつも三十人ほど一緒にいたはず。


 他に一人も見当たらないのは、彼らが殺し屋ハイドと交戦したことと……無関係ではないのだろう。

 察していながら、ルークは触れることはしなかった。


 そういえば、と思い出す。

 彼らは最近まで診療所で治療を受けていたはずだが、



「もう一つ聞きたいのですが……ブラッドさん、ゼインさん。診療所の『205』の病室に『フィーナンさん』という女性がいたのを知っていますか?」


「ん? 誰だそりゃ。知らんなぁ」

「あれ? ルークさん、あんたの彼女は『ミーナ』ってメイドさんじゃないんスか?」


「いや、そういう話ではなくて……!」



 ニヤニヤしているゼインにとりあえず否定を返し、ルークは咳払いをして真剣な表情に戻る。



「『学園』の新米教師で、ガーゴイル襲撃事件でマコトさんに助けられた方だそうですが……ある噂を聞いたんですよ」


「噂?」


「病室から()()してしまったそうなんです。まだ治療は終わってないのに、突然」


「初耳っスね」

「ほぉ……でも、それって何か大事なことなのか?」


「わかりませんが……一応、マコトさんの関係者ですし。把握できたら良いなと思いまして」



 街中で話題になっている、ベルク家壊滅事件、マコトたちの指名手配。

 もちろんルークは把握していた。


 ――また色々と事態が動き出してきたようだ。


 このタイミングでは、今のような『変な噂』も重要になるかもしれない。


「あんたも大変なんだな……」


「マコトさんほどではありませんよ。本当に彼は心労が絶えないと思います――さて、彼と話しますかね」


「ダンジョンも一段落したのに、また事件に巻き込まれてるみたいっスけど……どこにいるか知ってるんスか」


「その点心配はありません」


 首を傾げるブラッドとゼインに、ルークは余裕の微笑みを返す。

 次の瞬間、



 ――バゴォォォンッ!!!


「「!!?」」



 三人のすぐ真横に、鞭を持った大男が降ってくる。

 その男はブラッドと変わらない体格だが、顎を砕かれ、白目を剥いて気絶している。


「こ、こいつは確かBランク冒険者……ん? ルークさん? なぜ笑って……」


 困惑するブラッドと対照的にルークは余裕の微笑みを崩さず、大男の飛んできた方向を見ている。



「ね? マコトさんはいつも騒動の中心にいますから」



 彼の居場所をルークは確信していた。迷うことなくスタスタと歩いていく。

 意味がわかったブラッドとゼインは、腹を抱えて爆笑していたのだった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ