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#78 爆発オチ



「ぃやったぁ〜〜〜!! 勝ったぁ〜〜〜!! おったからっ♡ おったからっ♡」


 さっき説明してやったから全部理解してるプラムは、『ボス』を倒してダンジョン攻略を成し遂げた報酬にワクワクしてる様子だ。

 そういや忘れてたが最深部にあるとかいう『お宝』は見かけなかったな。確かにそろそろ出てくるかもな。


 全員で『ボス部屋』の先へ進むと、


「「「おお……!!」」」


 やっぱりあった。

 割と広めな部屋が、金銀財宝でギッシリ埋め尽くされてやがる。


「良かったじゃねぇか、騎士団ども。これ持って帰ればお前らの目的達成だぜ」


「「「んなわけあるかッ!!!」」」


 ジョークを言ってみたら、騎士のほぼ全員にツッコまれた。

 まぁ、基本は真面目なヤツらだ。金目当てじゃねぇってのは本当だろう。


 俺が手頃な宝箱の中身を見てみようとして、



 ――ゴゴゴゴゴゴ…………!!



 この部屋、いやダンジョン全体が大きく揺れ始める。

 まさか……?

 辺りを見回してルークも、


「ウェンディさん……『ボス』を倒すとダンジョンが()()するというお話でしたよね?」


「ああ……余韻に浸る暇も与えてくれぬとは思わなかったが……」


「えっ、オイ!? もう逃げねぇとヤベェってのかよ!」


「そのようです。脱出を急ぎましょう」


「あぁー!? おいルーク、こんな財宝を前にして正気かよー!?」


「……騎士団の目的はコレじゃなかったんでしょう? 諦めてください」


「え〜!? お宝ナシ〜〜〜!? やぁぁぁ〜〜〜だぁぁあ〜〜〜!!」


「おいおい、駄々こねるな嬢ちゃん。後で何か美味いもん食わせてやる。お前ら、ここはルーク坊っちゃんに従うぞ! 脱出だ!」


 阿鼻叫喚、一人残らず大パニックだ。

 天井が崩れて次々と瓦礫が降ってくる。こうなると、すぐに脱出って流れを否定するヤツはいなくなった。


「だがルーク氏、マコト。どうやって脱出するのか策はあるか?」


「えぇっと……出口から出れば」


「どこだよ!!!」


 ってか出口があるんだったらとっくに出て行ってるわ! こんな息の詰まるクソ洞窟なんかよぉ!

 すげぇ瓦礫降ってくる、このまま喋ってたら生き埋めだ!


「あ〜〜〜仕方ねぇな! プラム、ルーク、ジャイロ、手ぇ貸せ! 俺が一肌脱いでやる!」


「裸んぼになるの?」


「そうじゃねぇよ! ちょっと前に1回なったけど!」


「うわ〜マコトがヘンタイだ〜!!」


 プラムは放っといて、とにかくやれること全部ブチかましてこんな場所はオサラバだ!!



▽▼▼▽



「みんな俺の周りに集まれ! ――これで全員だな!? 行くぞぉ!!」


 俺が生み出したのは、デカい戦車。

 中にみんなを押し込んで、外に残ったのは俺とプラム、ルーク、ジャイロ。


「おー。こりゃ速そうだなー」


「発進!!」


 ノロノロ、ノロノロ……キャタピラがゆっくり回ってく。

 うん、そんなに速く走るモンじゃねぇよな。


「おそくない!?」


「それをどうにかすんのがお前らだろ! 何のために呼んだと思ってんだ!」


「えぇ〜無茶振り〜!?」


「はぁ……マコトさん少しは丸くなったのかと思っていましたが、このダンジョンで完全に理解しました。あなたは半年前から変わってません」


「――丸い俺なんか面白くねぇだろ?」


 驚くプラムの横で、呆れたようにため息を吐いたルークが、


「ジャイロくん……火を」


「はいはい、おーせのままにー」


 キュラキュラと走る戦車の後方、ジャイロが両手から火を吹かせる。

 ルークが杖を振って風を起こすと、その火はジェット噴射のようになる。


「うお! すげぇ速度!!」


 猛スピードを出し始めた戦車は、一瞬で財宝部屋を駆け抜けた。



「〈愛の加護(ラブ♥エンハンス)〉!!」



 今度はプラムが杖を振ると、俺たちの体と、戦車の装甲がピンク色の光に包まれる。

 力が湧き上がってくる……こりゃ、いわゆる『バフをかける』ってヤツか?


「マジで何でもアリだなお前……」


「えへへ」


「これはすごい……魔力量には限界があるんですが、この強化状態なら限界を超えて魔法を出し続けられそうです。プラム、後でこの魔法について教えてよ」


「いいよ! 私もよくわかんないけど!」


 プラムによると、どうやらこのバフは永続させることはできねぇらしい。さらに、そう何度も連発できるモンでもないと。

 だよな、そんだったら無敵すぎるか。


 戦車の装甲が瓦礫を弾きつつ、財宝部屋の壁が目の前まで迫る。

 さぁて、


「発射!!」


 主砲から放たれた弾が壁を破壊し、戦車は突き進んでいく。

 ジェットのスピードは勢いを増して、


「ボス部屋の先にも出口無ぇか! じゃあ進むしかねぇ! うおらぁぁ行け行けぇぇ!!!」


 砲弾も撃ちまくって、分厚い壁も、時々現れる魔物も吹き飛ばす。

 そして、その終着点は――


「ん? 何だありゃ……構うもんか! 発射だ発射ぁ!!」


「あっ……マコトさん待ってください!」


 ――ドォンッ!!


 壁の前に何か赤いのが積み上がってる? と思ったが、普通に砲弾当てちまった。

 ルークが焦ってるが……まぁ行き止まりなんて壊せば良いだろ?


 と思いきや、爆煙が晴れた先……


「壊れてねぇ!? なんか赤い石の山が、どんどん光っていってる気がするが……?」


「マコト覚えてないの?」


「は?」


「あれ『火の魔石』だよ。しかもあんなにいっぱい、燃やしたらタイヘンなことになるよ?」


「燃やしちまったけど……」


 なるほど。それでルークが頭を抱えて、ジャイロは開いた口が塞がらねぇって感じなんだな。

 眩しいぐらい光っちゃってる『火の魔石』の山に、戦車が突っ込んで乗り上げる。


 なるほどなるほど。


 ってことは……つまり、






 ――――ボカァァァンッッ!!!






 超・絶・大大大爆発です。


 戦車を突き上げるように爆発したもんだから、俺たちは戦車ごと宙を舞う。



「「「ぎゃああああああ!!!」」」


「爆発オチなんてサイテー!!!」



 一人残らず必死に叫び声を上げる中、俺は反射的に聞き覚えのあるフレーズを叫んじまってた。

 また俺やっちゃった。

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