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#77 ALL STAR vs LAST BOSS


 首を失って倒れるキャプテン・ブラック・ビアードに背を向ける。

 ――いや、まぁ、殺し方が、色々とな……プラムには見られなくて良かったぜ。


 歩き出そうとするが、すぐ足を止める。


「は? ミ、ミニゴ……」


「……」


「ミニ……ゴーレム? なんか……そんな色だったっけ? 雰囲気違くねぇ?」


「……」


 名前知らなくて『石ロボット』とか呼んでたのが懐かしいが、それは見た目が『石』って感じだったからだ。

 目の前にいつの間にか立ってるコイツは『土』でできてるって感じ。


 ただ、あちこちボロくて、破片がこぼれ落ちたりとかしてるけどな。


 俺を見つめ――驚いたことに、手招きしやがった。


「ついて来いってか? 怪しすぎだろ……プラムたちの所に戻ろうと思ってたんだが……」


「……」


「敵対しねぇ魔物なんか初めて見たし……普通じゃねぇな。ここは一丁従ってみるか」


 もちろん、いつ襲われたり裏切られても対応できるように警戒は解かねぇけどな。



▽▼▼▽



「こりゃ……壮観だな」


 変なミニゴーレムについていった先、辿り着いた場所で……最初に飛び出したそれが俺の感想だった。

 大きな扉に、台座を中心とした床の模様。気になる点はあるがそれよりも、



「どお? ジャイロ」


「あー気持ちいーぜ……眠くなってきた……寝てもいーか?」


「良いわけないでしょう……いくら何でも緊張感無さすぎです」



 ハイドにやられて血まみれのジャイロが仰向けになってて、プラムとルークが両側から回復魔法をかけてる。

 プラムはそれに加えてハンドマッサージもしてあげてるようだ。いいな、それ。後で俺にもやって。

 気絶したジキルもいるな。


 別のとこでは、



「うわっ! ウェンディ先輩!? 何ですかよその格好(カッコ)!? あ〜〜露出狂だったか〜……変な性癖持ってるんじゃないかとは薄々思ってたけど……そっちか〜」


「アーノルド貴様っ!? 好きでやっているわけないだろう! じろじろ見るな!」


「どうして『聖剣エクスカリバー』がこんなアホを選んだんだか……」



 相変わらず下着姿のウェンディに無礼な物言いのアーノルド、呆れてるレオン。

 さらに、



「す、すごい……何でありますか、あの半年前の『魔王討伐組』の緊張感の無さ……経験値の違いでありましょうか……」


「魔術師団の人、団長の次は小隊長を治療するって言ってましたよ! 色々あったけど、生き残っちゃいましたね俺たちw」


「ぷぉ〜〜ん♪」



 本当に色々あった二番小隊だが、小隊長のアバルドはボロボロで生き残ってて、運んできたラムゼイとネムネムも生き残ってる。

 最後に、



「マコト様ぁっ! あの盗賊長を成敗する場面、この目で見たかったのに止められちゃいました〜〜〜! 責任をっ! 責任を取って結婚しちゃってくださいよぉ〜〜!」


「何で俺の責任なんだよ!? お前ベタベタすんだよ離れろ!」



 また性懲りも無く、ポンプが体をスライム化させて抱き着いてきた。


 どういうこった? いつの間にか、突入してからバラバラだった全員が集まってやがる。

 な? 壮観だろ?


 ――見たところ、他モブ騎士も多数生き残ってるらしい。

 人数的には突入時とさほど変わらねぇ気がするぞ。すげぇな。俺の勘違いでなきゃ良いが。


 そのモブ騎士の一人が駆け寄ってくる。

 俺はポンプを引き剥がして向き合う。


「マコト殿……ご報告が」


「お、おう」


「殺し屋のハイドのことなのですが……あの直後に我々でトドメを刺そうとしたところ、忽然と姿を消してしまい……」


「何だって?」


「申し訳ございません。取り逃がしてしまったようで……」


「……いや、大丈夫だ。お前らが無事ならいい。気にすんな」


「あ、ありがとうございます。本当に、本当に申し訳ない」


 ――クソ、またハイドを殺す機会を逃がしちまったか。

 だが、まず間違いなく騎士団に非は無い。あいつらはハイドを戦闘不能まで追い込んだんだからな。


 どう考えても問題は――黒焦げで動ける状態じゃなかったハイドが、姿を消したって点だ。


 明らかに……何かに守られてるよな?


 ジキルは気を失ったまま。

 アルドワイン・ベルクが寄越した刺客は、もうこれ以上いないはず。


 ……他に糸を引いてるヤツが?


 報告してくれた騎士が一礼して下がっていくと同時、ジャイロの治療を完了してルークがやって来た。


「――今の、聞きましたよ」


「どう思う?」


「マコトさんと僕で、話し合いをする必要があるかと……しかしダンジョン攻略まであと少しです。ここを出てからにしましょう」


「よし、そうしようぜ。プラムとは話したか?」


「もちろん。元気そうで良かった。あの子が助かったのはマコトさん、あなたのおかげです。ありがとうございます」


「水くせぇな……」


「やっぱりあなたは『ひーろー』ですよ。誰がどう言おうとも、僕にとっては一生」


「覚えたての言葉ばっか使いやがって……」


 民衆からは『天才』とか呼ばれていつだって憧れの対象なルークだが、俺と話す時は、こうやって『ただの若者』の嬉しそうな顔をしやがる。

 まぁどっちも正真正銘、ルークの素の顔だろうけどな。

 さてと……一番大事なことを聞かなきゃな。



「どうやって全員集めた!? バラバラだったのに!」


「それはですね……」



 ルークが指差す方には、さっきの『土色ミニゴーレム』が立ってる。

 俺たちをジッと見つめて……何か、さっきよりボロボロになってるような?


「あいつが?」


「そうです。僕はこの扉の先に『ボス』がいると当たりをつけてウェンディさんと向かったんですが、あのミニゴーレムが僕らを援護してくれて」


「は!? そりゃ本当か!?」


「何度も魔物から庇ってくれたんですよ。そして、あちこちを駆け回って皆さんを連れてきてくれたわけです」


「マジか……どんだけ有能な魔物だよ」


 ルークによると最初は傷一つ無いボディだったそうだが、ルークとウェンディを魔物から庇ったり、みんなを連れてくる間に、傷を負ってボロボロになってきたらしい。

 健気すぎて泣けてくるぞ……あいつをどういう存在として受け止めればいいんだ。



「で? 扉は開かねぇんだろ? この床の模様と関係あるのか?」


「恐らくこの五つの円の色は、五つの『属性』を表しています」


「魔法の属性……赤、青、緑、茶色、黄色……」



 赤は『火』。

 青は『水』。

 緑は『風』。

 茶色は『土』。

 黄色は『光』。ってワケか。


 『闇』が無いようだが、アレは魔王か魔王軍幹部しか持ってねぇらしいから不可能だよな。納得だ。

 ルークが青い円に乗ってみると、そこだけ光り輝いた。


「はぇ〜、その適性を持ってるヤツが必要ってワケか。でもよルーク、お前の適性って『水』と『風』だったよな。二色いけんじゃねぇか?」


 俺の言葉に、ルークは緑の円に向かおうと足を離す。

 その瞬間、青い円は輝きを失っちまう。


「無理なんです。一人につき一つのようで」


 うわ、ちょっとキツいか。つまり五属性持ってるマゼンタみたいな魔術師が一人いても足りねぇってワケだもんな。

 ルークがまた青い円に戻ると、


「しょあ〜〜〜〜ん♪」


「お? ネムネム」


 代わりにネムネムが緑の円の上に立ち、輝かせる。そうか、あいつ『風』持ってるって話があったな。

 それに続いてラムゼイが黄色の円に。あいつも『光』持ってたっけ。


「ふあ〜……なんだよ起こすなよー、プラムお前が行きゃいーだろぉー……」


「ダメだよジャイロ、私『火属性』消えちゃったもん。アバルドさんの回復するからさぁ」


「しゃーねーなぁー……」


 マジで気持ちよく寝てやがったジャイロが、ふらふらと赤い円の上に。

 ん? 四色揃ったが……そうか『土』が足りねぇんだ!


「参ったな……」


「こりゃ無理っすかねw」


 ヘラヘラと笑うラムゼイの言う通り、土属性を持ってるヤツはこの中にいねぇ。

 そういえば……


「バートン……あいつが唯一だったか。死んじまったが……」


 まさかここに来て、あいつの存在がこうも重要になってくるとはな。

 暴走中に殺したことに複雑な感情を抱いてそうなルークが、顔を俯かせる。いや、でもルークを責められねぇだろ。


 すると、


「え?」


「……ギ、ゴ……」


 さっきの有能な土色ミニゴーレムが、ボロボロの体を引きずるように、よろめきながら歩いてくる。

 あいつが向かう方向は……


「まさか」


 茶色の円、その上だった。

 円が輝く。俺は一つ思い出したことがあった。完全に忘れてたが……


(バートンのヤツ……確かミニゴーレムを観察してやがったよな)


 このタイミングで思い出したのは、あの変な行動ばかりするミニゴーレムについて、確信したことがあったから。

 答えは本人から聞こう。



「ギギ、ゴ……『俺はバートン。この音声を誰か聞いてるってことは、恐らく俺は死んだんだろうナ』……ギ……」


「バートン……」



 まるで録音メッセージのように、ミニゴーレムから音声が流れ出す。

 もちろんこの世界にそんな技術は無い。バートンの魔法の技術が高等だからこそだな。


 ルークも含めて周りのヤツらはみんな、驚くよりも混乱してる。

 どうして敵だったあいつが、こんなことをしてるのかって。


 だろうな。

 今のところ、あいつの真意は俺しか知らねぇワケだし。



「ゴ……ギ……『ルークには、感謝してもしきれねぇヨ。それから、最後、俺を救おうとしてくれた、マコトにもダ……』」


「……!」


「『ありがとう……俺はただの悪党だガ、最後に一度、人の役に立ってから、消えるとするヨ……』ゴゴ、ゴ……」



 バートンゴーレムが立つことによって五色の円が全て輝き、台座へと魔力みたいなのが流れ込み、それは全て大きな扉へと流れていく。

 扉が重く開かれていくと同時、


「バートンさん……ありがとうございました」


 ルークが礼を言った。


 しっかり最後に役に立ってくれたバートンゴーレムは、静かに崩れて、もう動かなくなった。

 まぁ、あいつは使命を全うして満足死していったんだ。感謝はするが、何も言うまい。



「この先に『ボス』ってのがいる――」


「ねぇ〜さっきから『ぼす』って何? 何のこと〜?」


「は?」



 先を見据えて心構えをしとこうと思ってた俺に水を差す、間の抜けた声。

 それはアバルドを治療してる最中の、



「プラム?」


「だってさぁ誰も教えてくれないんだもん〜! ねぇ、ここどこなの? 『ぼす』って何?」



 そ、そうか……何回も「後でいい」とか言った気がするが、マジで全く説明せずにボス部屋まで来ちまった……

 ご、ごめん。今から説明してくとするか。


 ぼんやりした顔で首を傾げるその仕草はクソガキとは思えず、美少女と言って差し支えない。

 なので、



(この子……!)

(純粋……!)

(((超かわいい……!)))



 疲れ切った戦士たちは、満場一致で、プラムに癒されることとなった……



▽▼▼▽



 ――右手に、大きなモーニングスターをブンブン振り回し。

 ――左手で、死神が持ってるような巨大な鎌を肩に乗せる。


 そして俺は、鎮座する『ボス』とご対面。



「久しぶりだな。生きてたのか……"ジョーイ"」


「……キジャアアアアッ!!!」



 正面に立ちはだかる、巨大な蜘蛛(クモ)の魔物――半年前に倒したはずの相手だった。

 だが見た目がだいぶ違ってる。前会った時は普通にデカいクモだったが……


「足長ぇし……背負ってんのは『闇の結晶』か? イカレてんなぁオイ」


 ヤツの目線はかなり高い位置にある。

 なぜなら、腹部からクソ長い糸の塊がドレスのように地面まで伸びてるから。その先端に"ジョーイ"本体がいる。

 んで、本体から地面までは糸ドレスだけでなく、八本の足が伸びてる。あんなに足長くなかったぜ?

 そんで言ったように背中に『闇の結晶』を背負ってる……というか背中から生えてるように見えるな。


「おいジャイロ、ウェンディ……お前らの言ってた『仮説』ってのは……」


「おー、バッチリ当たりだな」

「うむ。だからといって、対抗策などは特に無いのだが……」


 俺も何となくわかってた。


 突入する数日前……プラムがゾンビになってダンジョンに入って行っちまった日。

 あの時、入口からクモの糸が飛んできたんだよな。しかもデカかった。


 でもってダンジョンが出現してる位置だ。

 ちょうど半年前この"ジョーイ"が巣を張ってて、俺がアイツを叩き落とした谷があった所だった。

 まぁ発生源が本当に"ジョーイ"なのかは定かじゃねぇがな。


 ルークは顎に手をやって唸ってる。


「う〜ん……蜘蛛型の魔物……これが『ボス』……そう来ましたか……」


 何だか驚いてるようなガッカリしてるような雰囲気を感じるが、もっと予想してたことがあったのかな。

 マジで、後で話し合わねぇと。


「ルークはあいつ知らねぇんだっけ?」


「噂だけですね……確か、騎士団の討伐隊40人ほどを、ほぼ全滅に追い込んだとか……」


「あ〜そんな話あったな……んでその殺してる光景が『楽しげな子供』っぽかったってワケで、ジャイロが皮肉で名付けたんだっけか」


 俺もその事件は直接見ちゃいねぇが、えげつねぇし痛ましい話だ。

 異世界に来たばかりの俺と、あと子分のブラッドたちも、ワケあってコイツと戦ったが、割と死闘だったような……



「キジャアアアア!!!」



 おっと。呑気に喋っていられる時間は終わりのようだな。

 "ジョーイ"の野郎、叫び声が迫真すぎるし目の色なんかおかしいし『闇の瘴気』吸いすぎてラリってんじゃねぇか?


 さっきの騎士団の話があるんで、



「よぉー、また会えるとは思ってなかったぜ"ジョーイ"……半年前は色々とやってくれたなー、オレが焼き殺してやる……!」



 ジャイロは苦虫を噛み潰したような表情から、無理やり笑顔を作って言った。

 そうか。あいつは結局"ジョーイ"とは直接戦わなかったが、そのせいで不完全燃焼というかトラウマというか……複雑な心境になってたっけ。


「マコト、ここはオレに任しとけー! さっきの変な魔法をここで練習がてら……」


「待ってくださいジャイロくん。僕も強力な魔法を習得できそうなんです」


「はぁー? てめーはジューブンに魔法は得意だろーがよ! 譲れ!」


「そんなボロボロの体で無茶するべきではないです。回復魔法はかけましたが、完璧なものではないんですから」


 あれ? ルークが横槍入れて、なんか流れおかしくなってきたぞ。

 俺の後ろで若者二人が……また始まったか、仲良いんだか悪いんだかわからねぇケンカ。


「あのクモ野郎と因縁があんのはオレだー!」


「え? 半年前のことをまだ引きずってるんですか? 騎士団の団長ともあろう人が、なんだか乙女のようですね〜」


「て、てめ……ッ」


「あ、すみません。傷付けるつもりではなかったんですが……」


「傷ついてねーし!? 半年前ちょっとゲロ吐いたことなんか思い出してねーし!? 最近てめー引きこもってっから、人の気持ちわからなくなったんじゃねーのか!?」


「なっ……!」


 おいおいおいおい時間が足りねぇよ、いつまで続くんだよこの応酬。

 まったく今となっちゃ騎士団の団長に、魔術師団のナンバー2のこいつらが……半年前と変わらず、


「楽しそうだなぁ」


「「楽しくないっ!!!」」


「ハモんなよ……」


 っていうか俺たち今何してたんだっけ?

 そうだった、目の前には『ボス』が……



「キジャアッ! ブシュッ! ブシュゥッ!」



 ああこれも見覚えのある糸吐き攻撃……だがちょっとパワーアップしてんな。

 口からだけじゃなく、尻もこっちに向けて二方向から糸を連射してきやがる。


 ……ってか"ジョーイ"のヤツ、蚊帳の外にされて若干怒ってねぇか??

 そりゃ怒るか。『ボス』の前でこんな態度する連中は他にいねぇだろ。



「〈愛の盾(ハート♥シールド)!!〉」


「おぉプラム」



 だがそんな怒りの連射糸も、プラムのトンデモ魔法でラクラク防がれる。

 驚いてる様子の"ジョーイ"に、



「キ、キジャ……!?」


「さて"ジョーイ"。お前の見た目もヤバくはなったが……俺たち全員とどっちがヤベェかな?」



 舌を出してケタケタと笑ってみせた俺は――死神の鎌をぶん投げた。

 豪速の勢いで"ジョーイ"の目に突き刺さる。


「ギィィジャアアアアッ!!?」


 ヤツは痛みに動揺しながらも、鎌が消滅したことに気づいてすぐ糸連射を始めるが、


「オレが!」

「僕が!」

「オレが!」

「じゃあ間を取って!!」

「オレが!」

「2人で一緒に!!」

「オレが!」

「あぁもう話になりません!!」

「オレがっ!!!」


 ルークとジャイロがケンカしながらも勝手に力を溜め始めた結果、



「〈火山の神拳(ボルケーノ・フィスト)〉!!」


「〈氷結の悪魔(アイス・デーモン)〉!!」



 こんなことあり得んのか……このボス部屋の半分の結晶が赤く、もう半分の結晶が青く輝き、二人が同時に『強制支配魔法』を発動。

 話し合いは決裂したようだから……偶然にも上手くいっちまったんだな。


「キジャアッ!?」


 降り注ぐ糸の塊たちも、赤い拳に焼き切られ、氷漬けにされて割られ、効き目ナシ。

 呆れたように見てたプラムと俺は合流し、


「も〜、いつまでケンカしてんのあのバカたち〜!! 子供なんだから!」


「勝手にやらせとけ、行くぜプラム!」


「うん!」


 俺の手に乗ったプラムの足を思いっきり上に投げ、


「〈愛の機関銃(ハート♥シャワー)〉!!」


「ギジャジャッ、ジャジャッ!」


 "ジョーイ"の頭上まで飛んでったプラムは杖からハートの弾丸を連射し、ヤツの全身に浴びせかける。

 俺も続いてジャンプし、


「くらえモーニングスター!!」

「〈愛の鞭(ラブ♥ウィップ)〉〜〜!!」


「ギジャッ! ギゴッ! オゴォ!?」


 空中で二人並んで、トゲ鉄球とピンクの鞭を振り回してフルボッコ。

 ――静かに、俺たちの背後から鋭い足が何本も狙ってきたが、


「ギ!!?」


「させませんよ……」


 右半分を氷の悪魔に変身させたルークが、迫ってた足を氷漬けに。

 白い息を吐き出すルークの後ろから飛び出すのは、



「その長い足、邪魔だろ!? 剪定してやるよ!」


「ギジャアアアア」



 アーノルドがエクスカリバーを振り、一直線に飛んだ斬撃が凍った足を斬り落としていった。やるじゃねぇか。



「〈部分巨人化(ぶぶんきょじんか)〉! はあああッ!!」


「ギィ!?」



 ウェンディは腕だけ巨大化させ、"ジョーイ"の下に伸びてた糸のドレスを殴り壊した。

 おい、あいつ、あんなことできるようになっちまったのかよ? だいぶ人間辞めたな……


 バランスを崩した"ジョーイ"が、前みたいにただの巨大クモっぽい姿で地面に落ちる。

 違うのは、


「おい『闇の結晶』が光ってるが……!?」


 背中にあるヤツだよな。

 何本も生えてる結晶だが、それぞれ光り始めてる……またビームみたいなの飛んでくんじゃねぇか!?



「〈シャイニング・スラッシュ〉!!」


「ぽ〜〜〜んっ♪!!」



 すると飛んでいったのは光属性の斬撃……ラムゼイか! それが直撃したことで、どうやらチャージが止まったようだ。

 そして更に飛び込んだネムネムが、ハンマーの一撃で結晶をぶっ壊した。


「ギ……! ィィ……!」


 お〜お〜、もう既にボコボコだな。

 仕上げに掛かるとするか。



「ダンジョンとも……お前とも! いい加減にお別れだクソクモ野郎! ――〈理不尽な暴力(アウトレイジ)〉ッ!!」


「〈愛の鼓動(ハート♥ビート)〉ッ!!」


「〈絶対零度(アブソリュート・ゼロ)〉……!!」


「ギジャアアア〜〜〜〜ッッ!!!」



 俺、プラム、そしてルークの技が、混ざり合うように一つの攻撃となって、"ジョーイ"の巨体を紙切れみてぇにぶっ飛ばす。

 もはや動けもしねぇ『ボス』だが、


「……?」


「言ったろ、オレが焼き殺すって」


「ァ……!」


 空中から舞い降りてきたジャイロが両方の赤い拳を突き出し、




「〈究極(ウルティメイト)超新星(スーパー・ノヴァ)〉ッ!!!」


「ギアアアアアア――――」




 殴られた"ジョーイ"の全身が真っ赤になって、血が沸騰し、膨れ上がる。

 オーバーキルにも程があるだろ、と言いたくなるほど連続した爆発で……ただの灰になった。


 ひっそりと……地下深くで半年間続いていた"ジョーイ"との因縁は、今度こそ幕を閉じて。

 ジャイロは個人的に、半年前の雪辱を果たすことができたようだった。


 ダンジョン攻略、完了――ってとこか。







お読みいただきありがとうございました。

もうガス欠です…この作者にしては頑張った方ではないでしょうか?

三章もほぼ終わって後は残りカスみたいなお話だけなので、続きは10月を過ぎてからということで…

これからは今までと変わった展開にはなる…はずです。続く四章は短く、その次が最終章を予定しています。

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