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#7 『学園』防衛戦!?


「来るぞ!! 伏せろリリー!!」


「わああっ!?」


 異常事態に気づいた俺は、しゃがむと同時にリリーを床に押し付けた。

 次の瞬間、無数の黒いガーゴイルが弾丸みてぇに続々と窓を割って侵入してきやがる。


「――遊んでる場合じゃねぇな!」


 エプロンとゴム手袋、溶接マスクを外してその辺にポイ捨て(用具室で拾ってきたんだがまぁ良いだろ)。


「グェェア!」

「ギエェ!」


 学校の中を飛び回る大量のガーゴイルども。

 その中から数体のガーゴイルが迫ってくる。俺はチェーンソーを再び吹かし、


「おらぁ!」


「ギャッ」


「うらぁぁ!」


「グゥェ」


「近寄んなぁぁぁ!!」


「ギゴォ」

「オガァァ」

「グエェ」


 これまでに無いくらい滅茶苦茶に振り回し、近づくガーゴイルをバッタバッタ薙ぎ倒す。

 周囲にガーゴイルはいなくなったな。さて問題はこっからだ。


「この量はさすがにヤベェな! 外にもまだまだ飛んでるし、『学園』全体がガーゴイルの巣窟になっちまう!」


「も、もしかして……血の海みたいになっちゃいますか!?」


「うーんそうだな。って言えるかぁ! 天然発言にしちゃ怖すぎるぞ!?」


「ごめんなさい! 『海』っていうのは見たことないけど……」


 へー、見たことねぇのか。

 確か俺の親友ってか相棒のジャイロや、ルークもそんなようなこと言ってたな。

 この世界にも海はあるらしいが、大半のヤツは見たことねぇんだと……って脱線したな。


「リリーお前、どうする? ……俺が守ってやろうか?」


「……!」


 正直、俺はリリーについて詳しいとは言えねぇ。友達ではあるけどな。

 弓矢が上手いってプラムから噂程度に聞いてるが、どれほどのモンなのだろうか。


 だから判断を本人に任せた。


 するとリリーは、



「……いえ。私も戦います。『弓矢の上手さは学園(イチ)だ』という先生たちの言葉を、信じてみます!」


「……よく言った」



 思わずリリーの頭を撫でちまうが、彼女はリアクションもせず真剣な表情。というか、緊張してるみたいだ。

 すぐに「じゃあまずは教室に戻ります」と言い残し、張り切って駆けていった。


 俺も彼女を追いかけながら、拳を振るう。


「ギェギェェ!」


「……追わせねぇよ鳥野郎!」


「グヘェッ!?」


 能力《超人的な肉体》のおかげで、俺は肉弾戦もスゲェんだぜ。


 とりあえず俺の仕事は生徒たちを逃がしつつ、走ってく若い芽(リリー)の背中を守ることだな。

 今、ほんのちょっとだけな。教室まで送るだけ。あとはリリーが何とかすると信じてるから。


 ――しばらく走るとリリーの教室に到着し、



「待ってたぞ良い子ちゃん。俺に恥をかかせたこと、許さないぞ!」


「後悔させてやる!」

「アールくんは負けてねぇ!」

「チビが、ぶん殴るぞ!」


 教室でリリーを待ってたのは――机に直接座るアールと、怒りを燃やす大きな三人組。

 他の生徒たちは、荒れた三人組に怯えて教室の隅っこに逃げてやがるな。


 そりゃあんな体のデカい男たちが機嫌悪く振る舞うんだ、同年代でも怖いだろうけど、


「そこ、私の席です。どいてください」


 リリーはもう違った。


「あぁ!?」

「ナメてんのかチビィ!」


 怒号を上げながらデカい奴らがリリーに近づいてくるが、


「グギェェ!!」

「グェ、グェェ!!」


「え、ぇえ!? が、ガーゴイル、だぁ!! うわああああ」



 リリーと俺の後ろから教室に入ってきて、翼をバッサバサ羽ばたかすガーゴイルに、アールもデカい奴らも腰を抜かした。

 そこで動いたのは他でもなく、


「どいてって、言いましたよね!」


「うわ!?」


 リリーだ。リリーは机の上のアールを押し退け、自分のバッグから『弓矢』を取り出す。

 素早く後ろを振り返り、


「やぁぁっ!」


「グギェ!?」

「ギャァェエッ!」


 マジか。達人技だよこれ。二本の矢を同時に弓にセットして同時に放ち、二体のガーゴイルの胸に直撃させる。

 つまり、一度で二体まとめて仕留めやがった!


「おいおいすげぇなリリー! こりゃ間違い無く『学園一』だぜ!」


「は、はい……! はい……!? えっと、今何が起きたのかよくわかりませんけど、はい!」


「マグレだったのかよ!」


 俺に褒められてあたふたと焦るリリー。そこは嘘でも決めとけよ、ったく正直だな。

 そこが良いとこだが。


「んじゃ、進むぞリリー! ……おいモブ生徒ども! 逃げるのはもちろんだが戦えるヤツはどんどん戦え、俺とリリーだけじゃガーゴイル対応しきれねぇからな!?」


 それを聞いた生徒たちの中には、咄嗟に杖や剣を構える者もいた。

 まぁこの『学園』、弓だけじゃなく魔法や剣術の講義もあるってんで戦力外ばっかりじゃねぇ。恐らく未来の騎士団員や魔術師団員たちもいるワケだ。


 が、しっかり戦闘員と呼べるほど強ぇヤツは……少ねぇだろうな。ガーゴイルの量に対して圧倒的に戦力が足らん。


 俺は今三階にいるらしいが――二階なんかも心配だな。


 下の階にはさっきまで俺が特別講義をやってた教室もある。そこにはプラムがいるくらいで、フィーナンとかは頼りにならんし、放置しとくと大変なことになりそうだ。


 上の階にはもっと上級生がいるらしいから、何とかなるかもしれんが……どうなる? この防衛戦。


 窓からわんさか侵入してくるガーゴイルを、弓矢で次々と仕留めながら、リリーも戦況を考えてくれてたようで、


「マコトおじさん! 私はそんなに強くないし、下の階に行ってプラムと合流します! おじさんは上をお願いします!」


「お!? 司令塔みてぇでカッコいいな! ひとまず従っとくぜ」


「ありがとうございます!」


 赤面しながらお礼を言ってきた小さな司令塔は、頼もしい弓さばきで進撃してった。

 俺もパワーを頼りに上の階を目指した。



▽▼▼▽


▽  ▽



「プラム! プラム、起きてっ!」


「あむぅ、まだまだ私は食べられるよぉ、もぐもぐ、もぐも……はぇっ!? 寝てた!?」


 机に突っ伏してガッツリ寝ちゃってた私は、すばやく起きあがってヨダレ拭いて目を開ける。

 そこには親友のリリーがいた。


「どしたの? 講義は?」


「もう、寝ぼけてないでよプラム! ガーゴイルたちがいっぱい暴れててタイヘンなんだよ!?」


「へぇぇガーゴイルが。それは大変大変」


「ちゃんと起きてプラム!!」


「いたいっ!」


 どうしてもまだ寝ぼけ眼の私のほっぺに、リリーのムジヒな平手打ちが。

 手が出るの早いなぁって、私は嫌そうにしてたけど、すぐ異変に気づく。


「わぁ助けてぇぇぇ!!」

「ギェェ!!」


「あ……ほんとにガーゴイルだ!」


 廊下を逃げ回る制服を着た生徒と、それを飛んで追いかける黒い魔物。

 しかもたくさん見えるし。寝てる間にとんでもないことになっちゃった!?


 ――いかなきゃ!


「うおおお許すまじガーゴイル! 寝起きの私は乱暴なんだからねっ、〈ファイア・ジャベリン・ラッシュ〉〜〜〜!!!」


「ぷ、プラム待ってよ!」


 廊下に飛び出た私は杖を取り出して振るい、炎の槍を体の周りに六本出現させる。

 走りながらそれをバンバン飛ばしてって、


「ゲェッ!?」

「ギァァエ!」

「ギェ!」


 生徒たちを追いかけ回すガーゴイルどもを、一網打尽ってやつにしてく!

 あれ? でもなんか今、後ろからリリーの声がしたような。振り向くと、


「わっ! ど、どうしよ! プラム助けて!」


「リリー!?」


 リリーは廊下には出てきてるけど、私からだいぶ離れたところでガーゴイルに掴まれて『ぴんち』になってる!

 た、助けなきゃ――


「グェェ!」


「うわ、邪魔しないでよ!」


 ガーゴイルに腕を掴まれて止められる。

 そいつを火の魔法で吹き飛ばしたけど、今度は別の奴がどんどん来て囲まれちゃう。


 すごい数だよ! 対応しきれない!!



「りっ、リリー!!」


「プラムぅ……っ!」



 絶え間なく火を生み出してガーゴイルを寄せつけないようにはできるけど、このままじゃ、リリーがころされちゃう!!

 必死に手を伸ばすけど、とどくわけもなくて――






「〈そよ風(ブリーズ)・ナックル〉!!!」






 そのとき。


「せりゃあぁぁぁッ!!」


「――ォゥグエエッ!?」


 見えないくらいの速度で誰かが走ってきて、リリーを襲うガーゴイルの顔面をぶん殴る。

 メリメリとめり込ませた拳ごとガーゴイルを床に叩きつけて、廊下の床が爆発したみたいになって、ヒビ割れた。


 あ、あれ……誰?



「つまらない理由で遅れたの。ごめんねリリーちゃん、プラムちゃん」



 風属性の魔法を纏った拳を床から引き抜いて、水色の髪を邪魔そうに揺らす、その人。

 ウソでしょ!? フィー先生だ!!



「フィーナン先生……!? あ、ありが……」


「ええ、リリーちゃん。明るい表情になったけど、本当にマコトさんに助けてもらったの?」


「……はい! 助けてもらいました!」


「そう、なの」



 リリーとお喋りしてるフィー先生は、何だか浮かない顔をして、



「本当は私が、あなたを守ってあげなきゃいけなかった……担任じゃなくても、教師としてね」


「っ! 先生……!」


「でも私はまだまだ()()だし、学園長や先輩の指示に従うしかなくて……アールくんを叱れなかった……」


「……先生……」


「リリーちゃん、あなたを守れなかった……ごめんね! 本当に、本当に悔しい!」



 おちゃらけた人と思ってたけど、フィー先生は本当に泣きそうで、うつむいてて、苦しそう。

 リリーも慰めてあげたいみたいだけど、フィー先生はそれを振り払うように顔を上げた。



「だからせめて、ここからは私が守る!」



 フィー先生が、また拳に風を纏わせる。



「生徒を守るのが教師の務めなんだから!!」



 ――突き出した拳の爆風で、正面のガーゴイルたちが一斉に吹き飛んでった。











読んでいただきありがとうございます。

え〜…言いにくいのですが、書き溜めがなくなりました…

最近やる気が出にくい中、割と見切り発車で始めてしまった続編で…申し訳ありませんが、続きが気になる方は…気楽にお待ち下さい…なるべく早く書きます。


しかし既に2件もブックマークが付いている!

外されたとしても、もうそれだけで嬉しいので大丈夫です(笑)

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