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#53 ミニゴーレムの襲撃!



 50〜100体のロボット軍団が、一斉に起動して俺たちの方へ向かってくる。

 この状況を引き起こしたと言っても過言じゃねぇ俺は責任を感じて、


「うぉああああ――ッ!!」


「マコトさん威勢いいすね、突っ込みますねぇ!」


 なんかラムゼイからヘラヘラ言われたが、とにかくロボット軍団の中心までジャンプして飛び込む。

 白いオーラを纏う足で、


「おるるらァ!!」


 一体のロボット――近くで見てみると思ったよりメカメカしくなくて、壁と同じでレンガとか石で作られてるように見えるが……蹴り飛ばして破壊した。


 だが、


「……おっと……?」


 倒れゆく石ロボットと同時に着地した俺は、気づく……今の一発だけでもう息が上がってるってな。

 もちろん俺自身の話。


 思えば数日前のハイドとの死闘から、白いオーラ、つまり〈超人的な肉体〉のフルパワーを酷使しすぎてる。

 あの時の疲労も完全には回復しきってねぇのに、ダンジョンに入ってからも戦闘続き。

 しかもハイドだの大岩だのロボットだの、敵が強くて硬いから常にフルパワー。


 こんなに能力を使い続けたことが無かったから初めて知るが――どうやら使いすぎてバテ気味らしい。

 大岩の時も『もう疲れてきた』って感じてたな、そういえば。


 ――ミシッ……!


「あ、いでででッ!?」


 考えてたら、後ろから石ロボットにすげぇ握力で肩を掴まれた。

 油断も隙もありゃしねぇな……っ、


 ――ガシャァン!!


 俺の手に生み出され、振り回され、石ロボットを一撃で粉砕したのは――鎖の先にトゲ付き鉄球、いわゆるモーニングスターだ。


 恐らく今は〈超人的な肉体〉をフルパワーで使いすぎなのが問題。だったら可能な限り『武器ガチャ』で対応して、体術は温存しねぇと。

 武器を生み出すの自体は疲れねぇからな。


「狙うなら俺を狙えぇ! でも近寄んじゃねぇよポンコツクソロボども! おらぁ!」


 中心に飛び込んだから当然囲まれてるが、鉄球を振り回し、叩きつけ、押し潰し――着実に石ロボットどもを掃除してく。

 いやでもこれ、マジで量が半端ねぇな! このままじゃいつかジリ貧……


「ぴょ〜〜〜ん♪」


 するとフワフワピンク髪の小柄な女騎士――ネムネムが、俺に続くように巨大なハンマーを振り上げて飛んできた。

 振り下ろされたハンマーが石ロボットの脳天に直撃すると、その体がズボボボッと床にめり込んでく。


「やっぱ強ぇなお前!」


「ふぁ〜〜ん♪」


「チッチッチ……マコトさん、まだまだこんなもんじゃないですよ〜俺たち」


 ちょい遠めからラムゼイの声がいちいち聞こえるのはなんなんだ、イケメンのくせにお喋りな野郎だな。

 ん? ネムネムが動きを止めた。囲まれてるってのにボコされちまうぞ、と心配したが、


「ぶい〜〜ん♪!!」


 ネムネム自身から、そしてハンマーから、紫色の稲妻(イナズマ)が放たれてる!?

 それを勢い良く振り下ろすと大地が揺れ、衝撃と電流が周囲の石ロボットどもを吹き飛ばしてやがる!


 あいつ魔法も使えたのか!?

 紫色っつっても綺麗で『闇属性』じゃなさそうだが……


「そらよぉーっ!」


 ――ズバッ!!


 今度はジャイロが背中の剣を抜き、炎を纏わせた刃で石ロボットを一刀両断にして現れる。


「あー、ネムネムは風属性の魔法使えんだよなー」


「風!? あれ風か!? もはや雷だろ」


「そう思うのもわかるけど、まー派生した形ってやつよ。ルークの野郎も水属性で、氷の魔法ばっか使ってんだろ? そーゆーこった」


「風……まぁ自然現象的には雷だとか、そういうのも近しい……のか……? ってかネムネムあんだけ強ぇなら、大岩もあいつと処理すりゃ良かっただろ!」


「いやぁーオレも声かけたんだけどな? あいつ、ダンジョン入ってから()()()()みたいでよー。今こんだけ動けてっから安心したが」


「元気が?」


 モーニングスターと炎の剣で、敵を倒しながら会話する。

 俺が引っ掛かったのは、


「あんなまともな言語も喋らねぇネムネムに、元気だとか元気ねぇだとかの『感情』ってあんのかよ……?」


 何だか他のヤツは意思疎通できてたり会話成立してたり、俺にはワケがわからん。あいつに感情ありそうだとは微塵も思えねぇんだが。


「マコトさん失礼すね! ネムネムだって立派な人間ですよ!?」


「ラムゼイ……お前もそっち側か」


「変な喋り方してたら人権無いなんて、俺はそうは思いませんね!」


「いやそこまで言ってねぇけど……」


 いつの間にか俺の近くに来てた若者ラムゼイに説教食らっちまった。

 ヤツは「俺の本気も見せたげますよ」と剣を振り上げ、その刃が黄金の光を放ち始めた。


「――〈シャイニング・スラッシュ〉!!」


「光の魔法か!」


 輝く刃が横一直線に駆け抜ける。

 石ロボットが三、四体、一気に斬り伏せられちまった。こいつも魔法剣士みてぇなヤツとは。


 他にも周りを見てみると、



「〈重量級(ヘビー)・スラッシュ〉!!」



 確かビミパットとか呼ばれてた、体格の良い重量級の騎士が、大剣を豪快に振り下ろして石ロボットを叩き斬った。

 わお、床まで抉ってるぞ。


「ひぃ!」


 今はカールーヌって足を怪我してる騎士に肩を貸してるポンプが他の石ロボットに襲われかけるが、



「ふぅんッ!! ……効かんぜ」



 駆けつけたビミパットが、全身を盾にして石ロボットのパンチを堂々と受けた。

 直後、全く怯まずに反撃してる! あいつすげぇな。タンク役ってヤツか。



「守られてばかりじゃ……僕だって!!」



 カールーヌも負けじと弓矢を放ちまくってる。俺の方にも援護射撃してくれて、助かるな。


「……どーだ? やるだろ二番小隊」


「あぁ、感心だ!」


 ジャイロがニヤリとして言ってくるんで、俺もありのままに応じる。

 強ぇじゃねぇか二番小隊。石ロボットもどんどん数が減ってきて……



「ん?」



 不穏な動きを見つける。

 この部屋には『闇の結晶』は見当たらなかったんだが……どっからか黒い塵が現れて、上を飛び回ってるんだ。

 それらは残った石ロボットたちに入り込んでく。


「何だ……おいお前ら、気をつけろよ!」


 俺の目の前の石ロボットが、何だか黒いアーマーを纏ったようにメタリックな姿に変わった。

 試しにモーニングスターで全力で殴ってみると、


 ――ガィン! ギィン!


「硬ぇっ!?」


 さっきまでの比じゃねぇ硬度だぞ!?

 しかも片方の手が刃物みてぇに変形して、それも振り回してくる。


「うぉっ! コイツ、動きも速くなってる!」


 極めつけに、


 ――ギュイ〜〜〜ン……


 妙な音とともに、石ロボットの頭部に光る一つ目が、異常な輝きを帯び始めた。

 おい、何か出そうだぞ。


 ――ピュンッ!!


 危ねぇっ!

 ギリ避けたが、レーザービームかよ! 黒色だからやっぱり『闇属性』か……何にせよこのままじゃ……



 ピュンッ! ピュンッ! ピュンッ!!



 部屋内はあっちこっちでレーザービームが飛び交う地獄絵図に変わる。

 騎士たちもそれぞれ避けてたんだが、



「うあぁッ……!!」



 足を怪我してたカールーヌが逃げ遅れ、レーザーに腹を貫かれちまった……!

 倒れたのを必死に起こそうとするポンプだったが、重傷のカールーヌを狙って他の石ロボットも凄まじい勢いで走っていき、


「ま、守りますっ!」


 庇うようにポンプが剣を抜くが、



「あっ――」



 防御が間に合わず、刃物に変形した手に斬られ――ポンプの体は上下真っ二つにされちまった。


「あ……あぁ……」


 部屋の隅で、アバルドが目を見開いて頭を抱える。

 でも気持ちは俺だって同じだ。


「ポンプ……?」


 ちょ、ちょっと待ってくれ急すぎる……今の一瞬で死んじまった?

 血が……出てねぇように見えるのは錯覚か?



「ふんっ! ――はぁ!?」



 ビミパットも大剣を叩きつけたが、石ロボットが硬すぎて刃がボロボロに砕けちまってる。

 おい、唐突に形勢逆転しすぎだろ!!


 クソ、また〈超人的な肉体〉のフルパワーを出しまくるしか――



「――ったくお前らヨぉ! せっかく人が『ミニゴーレム』観察してるってのに起こしやがっテ……しかも勝手に劣勢になりやがってヨぉ!!」



 何だ?

 浮遊する土塊に乗って、石ロボット――ミニゴーレムどもの合間から現れた一人の男。


 フードを深く被ったそいつは、魔術師団からルークと共にやってきた助っ人。



「土の魔術師!?」


「バートンだっつってんだろ失礼な奴だナ!! 少し待てヨ……手伝ってやるゼ?」



 胡散臭いヤツが出てきやがったぞ。


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