#51 再会と大岩
――――あぁ……頭が痛ぇ。
俺、かなり高い所から落ちたと思うんだが……ここはどこだ? 地獄か。
「ん? この柔らかな感触……天国か」
頭は痛いんだが、地面に寝てる割には後頭部が柔らかいものに乗っている気がする。
試しにちょっと寝返りをうって下を見てみると、
「ひっ!! スライム!!?」
俺の頭、偶然にもスライムの上に乗ってたようだ。
本気で怯えた声出しちまった。
いや、あんだけ酷い目に遭ったらトラウマにもなるだろ。スライム恐怖症かもな。
急いで飛び退くと、
「あれ? ……ポンプ??」
「あ、マコト様……ごめんなさいっ! 勝手に膝枕してしまって……」
「い、いや、それは別に良いんだが……?」
俺が頭を乗せてた場所にあるのはポンプの膝だけだった。見間違いか……ちょっと俺がスライムにビビり過ぎてるだけみたいだ。
にしても、ポンプもケガしてねぇみたいで安心だ。
「わ、私はもう大満足ですので……ハァ、ハァ……」
「また洞窟っぽい場所だな。景色がコロコロ変わるからおかしくなりそうだな、ダンジョン」
あまり見たことがねぇ『膝枕してあげた側』が興奮している様子をスルーして、俺は辺りを見回す。
「……ウェンディとはぐれちまったか。トラップ部屋に、ハイド……無事だと良いが」
「小隊長は強くて賢いから、大丈夫だと思います」
「……そう思うしかねぇな。よっこらしょ」
憶測で話を進めてもしょうがねぇか。ポンプも気の利いたセリフ言ってくれたことだしな。
この洞窟っぽさ満点の空間の中に、少し細くなってるが別の場所に行けそうな道を見つけた俺は、ゆっくり立ち上がる。
ポンプもちょこちょこついてくる。
「んん? 坂道……」
その細道から顔を出して様子を見ると、向かって右から左へ下り坂になってる広い道が。
どっちに向かおうかと思ってたら、
――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!
揺れ始めた。
おいおい、何だってんだ? 地震か? マジで忙しねぇなダンジョンの中って。
ちょっとイラつきながら坂道の上の方に目をやると、
「――あああぁ!! ちょっと! そこ、どいてほしいでありますぅぅぅ!!」
「ふぁ〜〜〜〜ん♪!!!」
なんか聞き覚えのある声とセリフと共に、数人の騎士がパニックになりながら駆け下りてくる。
ありゃ……新人騎士のアバルドとネムネムだ! 『学園』でガーゴイルと戦ったのが記憶に新しいが。
とはいえ、
「お前らどうした!? 暗くて見えねぇのか……こっちはマコトとポンプだ!」
「ぴ〜〜〜ん♪」
「やや!? マコトさん!? それに一番小隊のポンプさん!」
「……ってそのまま通り過ぎんのかよ!!」
あの二人以外にも何人かモブ騎士がいたが……ん? よく見ると後ろからもう一人駆け下りてくる。
「おーーーい!? マコトかぁー!? お前も逃げた方が良さそうだぞーっ!」
「いやジャイロじゃねぇか……え?」
元気そうというか、緊張感の無さそうな騎士団の団長でソフトモヒカンな赤髪、ジャイロだ。
問題はその後ろの巨大な影で……
「「大岩〜〜〜〜ッ!!!?」」
目を疑うほど巨大な丸い岩が転がってきやがる。
俺とポンプは思わず叫び、ジャイロと並んで坂を駆け下り始めた。
俺は『うっかりした!』と思った。
元いた空間に引き返せば大岩に追われることはねぇと考えたからだが、振り返ってゾッとする。
「この辺の空間、全部潰しながら迫ってきてんじゃねぇか……」
恐ろしすぎだろダンジョン。なのに、
「なーマコト! オレだけじゃキツかったが、お前がいりゃーできそうなこと閃いた! ってか何で裸?」
「……あんま無茶言うなよ……?」
隣で走る若き騎士団長様は、歯を見せて笑いかけてくる。
俺、もう疲れてきたんだけどな……




