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#43 過剰戦力


「……んのヤロー!!」


 地下から現れた巨大な魔物に食われそうになってる、落下中の俺が見たのは、


「ブギョオオオオ!!?」


 地上のジャイロが、押し倒してきたエリートオークの顔面を鷲掴みにし、炎で焼いてるとこだ。

 甲高い絶叫を上げたエリートオークは、振り回されて地面に叩きつけられた。


 上位種だろうがお構い無しだな、おい。


 それよりピンチは俺たちの方だ!



「マ、マコト!! このままでは全員食われて、突入も叶わず全滅になってしまう!! 何とかできぬか!?」


「わかってらぁ!」



 落下しながら、近くにいた女騎士ウェンディが俺に助けを求めてくる。


 ――地中から勢い良く飛び出してきた、でっけぇ魔物だがどうやら体型としては細長い魔物らしい。

 超巨大なヘビとか、ミミズみてぇな感じかな?


 気づけば辺りは暗くなり、赤やピンクの壁に囲まれて――つまりは口の中だな。

 ギザギザの歯は口の先端だけじゃなく、その後ろにも多段階で何列も並んでるタイプだ。うぉ〜気持ち悪ぃ。


 奥の方から巨大な舌が迫ってくるのが見える。

 あれに絡め取られたら、マジで全員叩き潰されてゲームオーバーだな……



「ルーク! バートン! 壁でも舌でもいい、攻撃しまくれぇ! 食われてたまるかってんだ!」


「は、はい!」

「命令すんナ!」



 これだけ騎士が食われてるが、俺が指示を出したのは魔術師たちだった。

 まぁ魔法が使えるワケで、遠距離攻撃ができるからな。それだけの理由だ。


「はぁぁ!」


「おらヨォ!!」


 ルークは氷の礫を口内にバラ撒くように、バートンは尖った石で舌を的確に狙い、それぞれ杖から魔法を発射しまくっている。

 少しずつ魔物は怯み、地中へ引っ込んでいく。仕上げに俺が、


「ダイナマイトでも味わってろデカブツ!」


 周りに人が多くて、あんまり無茶できねぇが……

 爆発寸前のダイナマイトの束を生み出し、ポイ捨て。重力に従って喉の奥へ落ちていき、



「ギィィィイイイィィィィ!!!」


「うるせぇ!?」



 爆発に喉を焼かれた魔物が、気色悪い鳴き声を上げながら大きく引っ込んでいく。

 ってか口の中だからマジで耳ぶっ壊れそうだわ!


 だいぶ引っ込ませたおかげで、飲み込まれて全滅って状況は抜け出したが……まだまだ口を閉じられたら俺含め数人はヤバい。


 もう一発、決定打を――



「俺の『エクスカリバー』にお任せあれっ!」



 おっと。知ってる声が聞こえた。

 騎士団がこんだけ集まってるんだ、()()()だって参加してるわな。


「登場して早々悪ぃんだがな、エリートオークにデカブツ……」


 思わず魔物に謝りてぇ気分になっちまった。


 俺の頭上で、青白く光る大剣を振り回す騎士はアーノルドってヤツ。半年前に魔王軍とも一緒に戦った仲間だ。

 だが、別にアーノルド自身は至って普通の若い騎士。


 問題は、アーノルドを持ち主に選んだあの大剣だ。



「お前らごときが襲うには、俺たち――ちょっと過剰戦力すぎるぜ!!」



 振り回されたあの剣の名は『聖剣エクスカリバー』、心の清らかな勇者にしか抜けねぇ超強い剣。

 ソニックブームみてぇに撃ち出された鋭く巨大な斬撃が、デカブツの口腔を斬り裂く!



「ギィィィイイイイイイ……!」



 情けない声を上げながら、デカブツは俺たちを食うのを諦めて完全に地中へ消えていっちまった。


「へっ! どうだ、見たかよ! ナイスじゃねぇかアーノルド!」


 俺は嬉しくてサムズアップ。

 ――空中でな。


 あれ? これヤバくねぇ?


 下を見りゃ、先の見えねぇ奈落の暗闇。


 上を見りゃ、当然だがルークもバートンも、ウェンディもアーノルドもその他大勢の騎士たちも……みんな仲良く落下中。


 さらに上からはジャイロが穴を覗き込んでて、



「魔物を退けたはいいけどよー……お前らそのまま落ちてくってのも予定通りか?」



 キョトンとした顔で、ド正論をかましやがった。



「んじゃ、オレは入口から優雅に入ってくぜー。お前らは頑張れよー! ぶははは!」


「「「ああああああ!!!!」」」



 けらけら笑いながら消えてくジャイロに対し、俺たち全員は必死の表情で叫びながら落ちていく。

 まさか、こんな方法でダンジョン侵入とは……


 初っ端から幸先悪すぎだろ。

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