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#42 ダンジョン の せんせい こうげき!


 俺は、数日前にも発狂しながら訪れた『ダンジョン』という洞穴の前の草原にいた。

 ズラリと並ぶ、騎士団の連中と一緒にな。


「よーし、お前ら!! とうとうこの日が来た! この『ダンジョン』から魔物が生み出され続ければ、いずれ王国の危機となる! オレ達で潰すんだー!」


「「「おう!」」」


 その先頭で声を張り上げるのは、騎士団の団長ジャイロ・ホフマン。

 まぁ俺の相棒でもある男だ。部下たちは……んん……50人くらいはいるか?



「先に忠告だー! 今日、同行する『異世界の救世主』マコトの件だが、あいつの親友のプラムっていうチビっ子がゾンビになってダンジョンに紛れ込んでる!」


「「「えぇ!?」」」


「何かしらゾンビを見つけたらまず報告! 可能なら傷つけず捕縛! 間違えても殺すな! これを徹底してくれ! ……でも、めちゃくちゃ強いらしいから無理は厳禁!!」


「「「お……おう!」」」



 俺が言おうとも思ったが、いらねぇ心配だったな。ジャイロは「プラムはオレのダチでもあるから頼むぜー!」と続けたが、特にモブ騎士達からも不満は無さそうだ。

 良かった。


 ――結局、騎士に見張っててもらったが、プラムはダンジョンからまだ出てきてないらしい。

 『迷宮』と書いて『ダンジョン』と読むぐらいだ、中は入り組んでるだろう。魔物の邪魔だって入る。


()()()はあるものの……」


 白色のポーション。ゼインが見つけてくれた、恐らくゾンビ化を治療できるポーション。それを移し入れといた小瓶を眺める。

 懐にしまっとく。これだけは失くさねぇようにしないとな。


 ……またしても、骨の折れそうなトラブルだぜ。

 プラムのために全力を尽くすが。



「あー、あともう一点! そのプラムってのが魔術師団の団員でな、そっちからも少し同行者がいるからなー! ま、気にしないで良し!」



 ジャイロの妙な言葉に振り返ると、ちょうどいいタイミングで、



「マコトさん。お久しぶりです」


「……おお! ルーク、やっぱ来たか!」



 魔術師団のナンバー2のルークが合流。

 こいつも俺の相棒だな。んで、こいつにとってもプラムは妹分。大切な存在なんだ。


「何だよお前〜、最近顔見せなかったじゃねぇかよ〜。寂しいじゃねぇか!」


「あはは。すみません」


「プラムの事となったら飛んできやがって、わっかりやすいヤツだぜ!」


「そりゃ心配ですよ、もちろん。大事な妹分ですからね。ゾンビだなんて……事情まで聞きませんけど、マコトさんだって苦しんだことでしょう」


「ま、まぁな……」


 そういえば俺も、プラムゾンビを前にして泣いちまったっけ。お恥ずかしい。人のこと言えねぇな。

 ……ん? それよりも、


「そいつ、誰だ?」


「え? あぁ、彼ですか……」


 最初からルークの斜め後ろに、無言でついて来ている謎の人物がいた。



「…………」



 ローブで顔は見えねぇが、さっきのジャイロの発言からしても魔術師団の関係者……だよな?

 何だかそのローブ、どっかで見たような気がするんだが……



「バートンさんですよ。覚えていませんか? 半年前に僕たちが魔王軍と戦った時、何度も邪魔してきた土の魔術師です」


「えっ!? いや、何となく覚えてるが……敵じゃねぇか! それこそプラムが倒したんだったよな!?」



 ルークから飛び出したまさかの衝撃発言。

 直接見ちゃいねぇが、プラムと、あとブラッドとゼインが協力して倒した敵だったはずだ。俺が確認するように聞くと、


「ああそうだヨ! 敵だったし、無様にもガキに負けちまった土の魔術師が俺ダ!」


「えぇ!? てっきり牢屋にブチ込まれてるか、ムーンスメル帝国の復興のために働いてるもんだと思ってたぜ」


「最初は捕まってたサ! だがこのルークに実力を買われ、今は魔術師団で馬車馬のように扱き使われてんだヨ!」


「そっかそっか」


 なるほどそういう経緯か。

 本人としては納得いってねぇようだが、こうやってルークが監視してるなら安心だろう。


「……まぁ本音を言っちまうと、お前みたいなどうでもいい脇役の存在なんて完全に忘れてたけどな」


「おいルークこいつ殺して良いカ!?!?」

「ダメです」


 おいおい俺は素直に言っただけなのに、ずいぶんと噛みついてきやがる。

 気性荒いの直ってねぇし、まだ牢屋にブチ込んどいた方が良さそうだなこりゃ。検討しておこう(何様)。


「すみません。マコトさんとしても不安はあると思いますが、彼は優秀なので……プラム救出にも協力してもらおうと思いまして」


「その点に関しちゃ否定できねぇな、こいつのお邪魔攻撃には苦しめられた記憶がある。でも良いんじゃね? 今さら反乱起こしたって、俺たち負けねぇし」


「クソ、言われたい放題だナ……事実なのが厄介ダ」


 そうやって喋ってる内に、騎士団の方もどんどん動き出してる。

 ジャイロが剣を抜いて、



「訓練の日々を思い出せ!!」


「「「おう!」」」


「サンライト王国民の不安を取り除く! それがオレたちの仕事だ! 突撃ぃぃぃー!!」


「「「うおおお!!」」」



 洞穴に剣先を向けて部下たちを鼓舞しつつ、駆け出していく。部下たちも続こうとしたが、



「ブゴオオオッ!!」


「いっ!?」



 ジャイロが侵入するより先に、洞穴から何かが飛びかかって来やがった!


「うおーぉ!」


 押し倒されたジャイロが、勢い良く地面を滑っていく。のしかかってるのは紫色の人型の魔物だな。

 イノシシっぽい顔、ありゃエリートオークだ。ただのオークならザコだが、上位種だぞ!


「だ、団長っ!? ……うわ!?」

「揺れてるよな!?」

「何だこの地響きは!」


 騎士たちが騒ぎ出したように、俺も感じる。これは地震か!? 異世界でも普通にあんのかよ!?

 と思いきや『ボコボコ、ボコッ……』と下から異様な音がして――



「「「うわあああああ!!!?」」」



 地面が()()する。俺たちの体は今、宙に浮いてる状態。


 見たこともねぇ超巨大な魔物が、鋭い牙だらけの巨大な口を開けて地下から飛び出してきた。

 俺たちを全員、大地ごと飲み込もうとしてやがる――!?


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