#41 カタナ
もう一作品の方を投稿してたら、もう1年も経っちゃったんですか!?
すみませんでした…
その代わり、『ダンジョン編』となる第三章は最高に楽しい章にしたいと思っています。
元からその予定だったし、ワ◯ピースの新しいオープニング曲と映像を視聴して「これこれ!やりたいのこういうの!」と感動しイメージが湧いたのもあります。
いつもスーツしか着てない主人公も色々と変身したりするので、何となくイメージしながら読んでみてください。
「メイド長――ジキルよ」
「……はっ。ここに」
私はベルク家のメイド長兼戦闘員、ジキル。
隣で鼻をほじっている狼の獣人ハイドとともに、またこうしてアルドワイン・ベルク様と対面している。
私は魔術師団のルークに敗北したことを咎められ、目の前の主に殺されかけたが――忘れなければ。
アルドワイン様だって、もうそんな細かいことは忘れているだろう。
彼に仕える他に、私には生き場所が無い。
ここでやっていくしか、ないんだ――
「これは我が家の『家宝』とも呼べるもの――遥か東の国で使われる武器『カタナ』だ」
「……!」
「ジキル、これを授ける」
「……この身に余る、光栄です……!」
まさか、そんな物をくれるなんて。
初めてのことだった。
私は相変わらず逆光で顔の見えないアルドワイン様の前へ出て、両手で鞘に入った『カタナ』を受け取る。
少しだけ刃を出して見てみる。
何という輝き……鋭さ。全く知らなかったが、東の国ではこんな武器が使われているのか。
「知っての通りマコト・エイロネイアーは今日、騎士団とともに『迷宮』に突入する。貴様らも行け。必ず、奴の首を取ってこい」
「はっ」
「ダンジョン! ダンジョン! ヒャッハー!」
情報なら掴んでいた。
理由は不明だが、マコト・エイロネイアーも騎士団のダンジョン突入作戦に同行するらしい。
まぁ奴らもズブズブの関係なのだろう。
「それともう一つ、貴様らに念を押しておくぞ」
「……ん?」
「ぜ、絶対に……絶対に!!」
私にカタナを渡し終えたアルドワイン様の手は震え、尋常でない量の汗が見えた。
「絶対に……マコト・エイロネイアー以外の者には手を出すなよ!!?」
数日前、アルドワイン様は直接マコト・エイロネイアーによって脅迫されたのだ。
内容は『俺に挑むのは良い、だが知り合いに手を出したら即刻殺す』というようなもの。
それからというもの、アルドワイン様は過剰なまでにマコト・エイロネイアーを恐れている。
もう、殺すのなんて、やめたらいいのに。
一応、メイド長として心配だけはしておかねば。
「アルドワイン様……ひどい汗ですが、体調の方はよろしいでしょうか?」
「なッ!?」
「え……えっと……」
主は変な反応をしてきて、早足で私の目の前まで歩み寄ってきた。
右手を振りかざし、
「あうっ……!」
「このクソアマが!! 私をバカにしたのか!? 私が恐れているとでも!? 汗など、かいちゃいないッ!!!」
顔を、殴られた。
痛い。とても痛い。
床に倒れた私を見下しながら、アルドワイン様は震えた声で怒鳴ってきた。
ただ心配しただけなのに……
「ジキルとハイドよ……特に、殺し屋ハイドよ! マコト・エイロネイアー以外の者に手を出したら、報酬はナシだ!!」
「あぁ!? 邪魔されたら!? 邪魔されたら!?」
「知るか、貴様らで何とかしろ! 早くダンジョンへ行ってこい!!」
「……行くぞ女! 行くぞ! ヒャッハー!」
ものすごく不機嫌そうに舌打ちしたハイドが、うずくまる私を引きずっていく。
『ダンジョン』とは魔物の巣窟――らしい。
戦いの舞台がそんな危険な場所だと確定している上、マコト・エイロネイアーと行動を共にするのはサンライト王国騎士団の精鋭たちだ。
ハイドは異常に強いから良いとしても……私はそんな環境で生き残れるほど強くもない。
いくらカタナをくれたところで……これでは「死にに行け」と言われているようなものだな……




