#40 病室205
二章、ラストエピソード。
三章もゆっくりやっていきます…
俺は『205』というプレートが貼り付けられた病室の前に到着。
受付でこれも聞いておいたんだ。
なぜかというと、
「よぉ、フィーナン! フィー先生! どうもこんにちは、『救世主』のマコトだ!」
ノックしまくる。
この病室には例の『学園』でガーゴイル軍団と一緒に戦って、重傷を負ったフィー先生が入院中。
「……どうぞ」
ん? ちょっと返事まで間が空いたな。
しかもその返事も、どこか控えめというか、元気が無いというか。
まぁまだ傷も癒えてねぇだろうし、しょうがねぇか。
「邪魔するぜ! ……え?」
勢いよく扉を開けると、ビックリ。
個室って聞いてたからフィーナンだけと会話するつもりだったんだが、
「お前は……」
もちろん水色の髪にモノクルが特徴のフィーナン本人は、ベッドで上半身だけを起き上がらせていて、俺の方を見てる。
しかしそのベッドの横のイスにも、座ってるヤツがいた。
「……!」
鎧を着た女騎士だ。
身長は低くて細身、ふわふわしたピンク色の髪。
こいつも知ってるヤツだ。
「ネムネム……? どうしてお前がフィーナンと面会してんだ?」
「…………」
同じく『学園』で共闘した、騎士団のアバルドの部下だったよな。
特徴としてはバカでけぇハンマー振り回してたのと、
「お前、まともに喋んねぇだろ……?」
「…………」
こいつの喋り方は変だった。
例えば「ぴょ〜〜ん♪」「ふぉ〜〜ん♪」みてぇな、意味不明な言葉しか発してなかったはず。
アバルドはその言葉からしっかり意味を汲み取っててワケわからんかったが、
「ふ……ふぉ〜〜〜ん……!」
――なぜか顔を汗まみれにしたネムネムは、やっぱり意味不明な言葉を発して、俺から逃げるように病室から走り去っていった。
新米女騎士のネムネムと、新米教師のフィーナン……何の繋がりがあんだろうな。
ま、俺が知らなくてもいいか。
「マコトさん……来てくれるなんて」
「いやいや、お前には謝罪したくてな。あと感謝だ」
「え?」
フィーナンは、特にネムネムのことには言及せず会話対象を俺に変えた。
俺は事前に買っといた花を花瓶に差しといて(ブラッドやゼインは花なんか要らねぇだろうからやめた)、話したいことを話す。
「『学園』の件は、もっと早く助けてやれなくて悪かったな。校舎もぶっ壊しちまって……」
「い、いえ! マコトさんに全て任せるなんてできないし……校舎は、私とはそんなに関係ないし……」
「そうか。騎士団が修繕するって話だったが、ちゃんとやってくれてんのか?」
あ、そういや自分で言ってて思ったんだが、ネムネムもその件で来たのかね。
でもこいつただの新米教師なんだろ? やっぱわかんねぇな。
「やってくれているようです」
「参ったなぁ……ほとんど壊したの俺だから騎士団に金を渡したかったんだが、俺も状況がそれどころじゃなくなっちまってな」
「何かあったんですか? ……あ、新聞の件ですよね……まさかあのイジメ問題がここまでの事件に……」
「そうそう、ベルク家の殺し屋に狙われちまってる。しかもプラムがゾンビになっちまって」
「ふぁ!?!?」
ベルク家の問題を塗り変えるほどの衝撃だったのか、プラムゾンビの部分にめちゃくちゃ驚いてるフィー先生。
そうだよな。普通このリアクションだ。改めて考えてみると俺の周りどんだけトラブル起こってんだよ?
「プ、ププ、プラムちゃんが!? ゾ、ゾ!?」
「ああ、そうなんだ。んでダンジョンに突っ込んでいっちまったから助けに行くんだ」
「ダ!? ダン、ダンジョン!?」
もう驚きすぎて、もはやフィーナンとは会話になってねぇような気がする。
けど、これだけは伝えなきゃな。
「――ガーゴイル軍団からプラムとリリーを守ってくれたこと、俺は忘れねぇ。本当にありがとう」
「……っ!」
「プラムはもちろん俺の大切な親友だし、加えてお前の頑張りをムダにしねぇためにも、必ず救うぜ……ゆっくり休めよ」
俺はフィーナンにサムズアップを向け、そのまま踵を返す。
と、その前に。
「……お前、どうやってネムネムと会話した?」
「ふふっ……だんだんわかってきますよ」
「はあ」
異世界には、まだまだ不思議が多いぜ。
しょぼ〜〜〜ん♫




