#34 1人怪獣大戦争男 vs 発狂覚醒チート武器ガチャ
深く考えずに読んでください…それが正解です。
発狂中の俺は上空から、火だるまの隕石をハイドに向かって両手でぶん投げた。
驚いていたハイドだがすぐに飛び上がり、
「〈大狂気・クロー〉!!」
両手の先から伸びた漆黒のオーラ――闇の魔法で作り出した黒い爪で、あいつは隕石をバラバラに斬り刻みやがった。
「ぎゃあ〜〜〜はっは!! おま、ハイド、ヤバすぎだろ! ヤバすぎぃいあっはっは!!」
「ヒャッハー、お前も大概! お前も大概! マコト・エイロネイアー!!」
笑いの止まらねぇまま落ちてく俺と、下から飛んできたハイドが、とうとう崩れた隕石越しに対面すると、
「ハイ先手必勝どぅえ〜〜〜〜す!!」
刃がビームになってる剣――まぁライトセ◯バーみてぇなのを俺は振り上げ、
「ブェエエェェッ!?!?」
殴ろうとしてきたハイドの右腕を斬り飛ばした。
狼の獣人だからフサフサモフモフの腕だ、ちょっと心も痛むが……ハイドの野郎は、やりすぎた。
俺を怒らせるには充分すぎるほどに、な。
な〜んて思いながら地面に着地した俺だが、
「痛ェェェ!! ……けど、へっちゃら! へっちゃら!」
ハイドの斬られた腕、吹っ飛ぶ腕。
空中にて、それぞれの断面から黒いオーラが湧き出し、二つのオーラが混じり合い、そして引かれ合い、
「……冗談キツいぜっ!! ぎゃ〜〜〜〜っはっはっは!! どあっは〜〜〜〜!! お前もう嫌だ!」
ハイドの腕、くっつきやがったぞ。
笑いが止まらん。
いい加減もう、何なんだ? アイツ。
もはやバケモノすら超越した……とすりゃ何だ? やっぱ怪獣? もはやゴーストか?
「今度こっちの番! こっちの番!」
俺の正面に着地した五体満足のハイドが、両手と両足をガッシリ大地に踏ん張らせた。
「すぅぅぅぅうううぅぅ〜〜〜〜…………」
四つん這いで、口から掃除機みてぇな勢いで空気を吸い込んでる。
いや、掃除機どころの吸引力じゃねぇ……しかも胸が風船みてぇに巨大に膨らんでる。
肺活量どうなってんだ。
「お? お? やんのか!? やんのかよオオカミ、コノヤロー!!」
俺は身構える。ハイドが口を閉じて吸引をやめると、
「――〈大災害・ブレス〉ゥゥゥゥ!!!」
どうやってんだか知らねぇが技名を叫びながら、胸に貯めた膨大な酸素を黒色の極太ビームに変換し、口から放射してきた。
「超ウケる〜〜〜〜!!!」
言葉の通り、俺は甘んじて受けることに。
微塵も動かず、どす黒い一本の極太ビームを全身に浴びた。
「ヒャッハー!! これで終わり、終わり! マコト・エイロネイアー討ち取った!! これで、」
「――ファイナルアンサ〜??」
「終わっ……?」
爆煙に包まれてて見えなかったんだろう俺が、正体不明の『パワードスーツ』のようなものを着て出てきたんだ。
俺は無傷。ハイドもビビったことだろう。
「何だソレ!? 何だソレ!?!?」
「正解は〜〜……? CMの後で〜〜!!! ハイ残念無念ご愁傷様ですもいいところ〜〜〜!!」
「今言え! 今言え!」
「じゃあ言ってあ〜げ〜……? る〜〜〜!! 正解は〜〜、俺にもわからな〜〜い!! ぶあ〜〜っはははは! ハックション!!!」
「わかんねぇのかよフザけんな! ヒャッハー! てか今クシャミした!? クシャミした!?」
……えっと、だな。
つまりこの白くてカッコいい、メカメカしいというか機械的で、鎧のように俺の全身を守ってくれた『パワードスーツ』のような代物なんだが。
正直言って、何なのかわからん。
元の世界で漫画だか、ゲームだかアニメだかで見かけた何かの再現なのかもな。
――今の俺の脳内は、俺自身でもついていけねぇほどに奇妙な状態らしい。
「地獄でママにテレフォンでもしっってな〜〜〜!!」
もうセリフの一つ一つも意味わかんねぇ俺だが、パワードスーツの両腕や背中のとこから、次々とアームというかが飛び出す。
合計20本くらい出てきたが、その全部、先端が銃口のようになってるな……まさか?
「一斉射撃〜〜〜!!」
「ブギャアァァァァァァァァッ!!?」
全てのアームがハイドに照準を合わせ、前も見えなくなっちまうぐらいの弾幕をハイドに浴びせる。
しかも音もやべぇ! 耳がイカれちまうじゃねぇか!
「ハイドくん死んだかね!? お? 死んだかね!? 念のためもうちょっとやっとくね〜〜〜!!!」
一斉射撃はいいが、煙がすごすぎてハイドがどうなったか見えねぇ。
今度はパワードスーツの肩甲骨らへんから、ガチャッと引き出しみたいなのが出てきた。
そこにはどうやら合計6本のミサイルが積んであったらしく、
――ドドドドドドォォン!!
飛んでったミサイルが、煙の中にいるであろうハイドに全弾命中した。
……それで済んでくれりゃ良かったのに、
――ボコッ!
後ろから変な音がしたんで、ウィーン、ガシャ、ウィーン、ガシャ、とパワードスーツごとのっそり振り返る。
ハイドのヤツが地面から出てきた。穴掘って背後に回ってやがったか!
「オオカミかと思ったらゴキブリみて〜にしぶとくて、今度はモグラみて〜〜〜だな!! お前って何の生物目指してるワケぇぇ〜〜!?」
「俺、神! 俺、神!!」
ハイドが意味不明なこと言ってからまた四つん這いになり、
「〈ダーツ・ザ・漆黒〉ゥゥゥ!!」
「おぼふ」
ロケットみてぇに突っ込んできて、闇を纏った頭突きがパワードスーツの腹に命中。ヒビ割れた。
そうなると俺自身の腹まで衝撃が来たが、
「ゲフッ……神だぁ!? この世界の神は今、『女神様』だけ〜〜〜〜!!! 悔しいのぉぉぉ〜〜!!」
「ヒャッハーァ!?」
ちょい吐血したが、俺はボロボロのパワードスーツを着たまま、あるものを生み出して振り上げる。
網みてぇなのに大量に入ったダイナマイトだ。
振り下ろして、
「「ぎえぴィィィィィィィィ!!!!」」
超・絶・大爆発。
もちろん二人揃って巻き込まれた。
俺はパワードスーツがあったから無傷で済んだが、まぁ極太ビームと頭突きでボロボロになってたスーツは完全に壊れちまって消滅した。
どうやらハイドも爆破直前にジャンプしてダメージ軽減してたらしく、焦げながらも生き残ってやがった。
まだあいつは空中にいるんで、
「槍投げいっっっくぞ〜〜〜!!!」
いい的があるんで、槍投げにもってこい。
「槍を準備しね〜〜〜とな」
俺はなるべく槍っぽいイメージをし、
「さぁ出てこい……」
手に力を集中させる。
「――とりあえず『海の神ポセイドンの三叉の槍、トライデント』でいこう」
「とりあえずがスゴそう!? スゴそう!?」
なんか異世界産なんじゃねぇかと思うほど、幻想的なオーラを放つ三つ又の槍が出てきたが……ハイドに投げる。
「ふぬゥゥゥ!」
苦労はしてそうだが、投げられたポセイドンの槍を、ハイドは受け止めやがった。
ならばと俺は、
「『北欧神話の主神オーディンの槍、グングニル』でいこう」
「ちょっと待って! ちょっと待って!」
なるほど、神話の記憶から生み出してんのか?
いやもう自分でも全くわからん。
とりあえずこれまたオーラがスゴいグングニルも、槍投げの要領で投げつける。
「ふぬゥゥゥ!!」
ハイドはそれも掴んだ。
片手にトライデント、片手にグングニルという史上最高にワケのわからねぇ状態に陥ったまま、あいつは着地した。
が、着地したのは、
「ヒャッハ!? 何だこりゃ!」
線路というか、敷かれたレールの上だった。当然それは俺の生み出したモノ。
俺はだいぶ遠いところからレールを持ち上げ、
「ぅぃよっっっこいしょおおお〜〜〜〜〜!!」
持ち上げたのを地面に叩きつけると、その先に続くレールが波打ち、ハイドの足元をパァンッと打ち上げた。
「ギャアッハ〜〜〜!?!?」
不意をつかれたハイドは打ち上げられてバランスを崩しまくり、まだ勢いが死んでなかったトライデントとグングニルがあいつの腹にぶっ刺さる。
「よく……も……! よくもォォォ!!」
二本の槍が刺さって、槍が消滅しても盛大に出血しまくっているハイド。
さすがに疲れてきてるのか、血を吐きながら珍しくガチギレして叫んでいるようだ。
だが、
「俺は全然止まる気ねぇ〜〜〜〜んですわ!!」
俺は両手から扉を生み出す。
巨大な木製の扉だ。何だコレ……俺ももう疲れてきたんだが、体はウキウキしちゃっててダメだこりゃ。
「扉、パッッッカ〜〜〜〜ン!!」
扉が開くと機関車が飛び出す。機関車は線路を真っ直ぐに進んでいく。
……俺もう疲れたよ、パ◯ラッシュ……とは思いながらも俺も機関車の屋根に飛び乗る。
線路の先にはハイドがいる。
よし、このまま轢いてフィニッシュで――
「マコト・エイロネイアーぁぁぁぁ!!!」
ハイドは大量出血の状態なのに、白目をむいて大声を張り上げる。
どっしり構えて、
「その心臓ォオ! お前の呪われた心臓ォォォ! 俺たちにっ、寄越せェェェェェェ!!!!」
「のわ〜ッ!?」
最高速度の機関車を両手で受け止め、
「ウォォォォォオオオオオオ!!!!」
「ぐわぁ〜〜!!?」
受け止めた機関車を持ち上げ、背後の地面に屋根から叩きつける。
いわゆるスープレックスをしやがった。機関車に。
空中に投げ出された俺は、機関車が消滅したことでハイドの姿を視認。
――また胸に空気を溜め込んでやがる。
「相手になるぞ〜〜〜〜!!」
俺の右腕が変化する。
確かロッ◯マンとか、メト◯イドで見かけたことのあるような、ビーム砲みてぇな感じ。
それが、俺の右腕にくっついている……その砲口にエネルギーが集約されていき、
「〈大災害・ブレス〉ゥゥゥ!!」
「俺も極太ビームぅぅぅ!!」
ハイドと俺、それぞれの超巨大レーザービームがぶつかり――どちらに偏ることもない互角の威力は、その場で大爆発を引き起こす。
気づけば、俺たちの周囲は……焼け野原だな。




