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#33 隕石


 隕石みてぇな魔法に救われ、ようやく解毒のポーションを浴びて毒から解放された俺。

 しかし――その隕石みてぇな魔法をモロに食らったはずのハイドも、まだ生きてやがった。


「失敗、したこと……無い! 無い!! 俺、は……いつだって……対象を……ブチ殺してきた!!」


「……体が燃えてるってのに、お喋りなオオカミだぜ」


 勘弁してくれ。まだこいつの相手しなきゃいけねぇのか……とはいえ、青色の『回復』ポーションを飲んだ俺は準備万端。

 だが気になるのは、



「ゼイン! ……プラムを元に戻す方法、あると思うか!?」


「……ッ!」



 未だにポーション屋の死体を殴り続けてるプラムゾンビを、元の可愛いプラムに戻してやることはできるのかって問題だ。

 ゼインは戸惑いながらも、


「……あるかもしれないっス!」


 そう腹をくくり、壊れた馬車の周辺に転がるポーションのフラスコ達を漁り始める。



「『攻撃』のポーションがあれば、『回復』のポーションもあり……『毒』のポーションがあれば、『解毒』のポーションもある……つまり『ゾンビ』の逆の効果を持つポーションも、存在するかもしれないっス!!」



 なるほど。やっぱゼインの野郎、IQ高いだろ。

 今までの法則からいくと『ゾンビ』のポーションは黒色だったから、探すべきは白色ってワケだな。


 それを探してるんだろうゼインだが、


「あれっ……?」


 あいつは青色のポーションを手に持ち、何かを察したような顔と声。

 そりゃ『回復』のポーションだろ? さっきも俺が一気飲みした……


「マコトの親分。さっき俺が投げたポーション、この色だったっスよね……?」


「は?」


「いや、親分が飲んだやつ」


「あぁ青かったが……あれ? よく見ると、さっきお前から貰ったヤツ、もっと色が薄めだったような……」


「あっ……ヒュッ」


 『ヒュッ』てのは、顔面蒼白のゼインが息を呑んだ音、とでも説明すりゃいいか。

 どうしたんだ、確かに青じゃなくて水色だったかもしれんが、それだと何の問題が……




「すいません、親分が飲んだ……水色のポーションは、たぶん『発狂』のポーションっス」


「え〜〜〜〜〜っ!!?!?」




 頭を抱えたゼインが謝罪してきた。


 驚愕した俺は、自分の体を見てみる。


 すり傷や切り傷。細かい傷だが、どこも治ってない。

 疲れが吹っ飛んだような気がしたが、どうやら頭がおかしくなっちまった影響らしい。


 そういや水色のは――ポーション屋が『新作だから試してみよう』ってゼインに向かって説明してたっけ。


 ああそうだわ。

 『発狂のポーションだ』ってハッキリ言ってたわ。思い出した。


 おいおい、俺、全部一気に飲み干しちまったぞ……



「あははは……あはは! あれ? やべぇ! なんか、なんか楽しくなってきたぞ!! あっははは!」


「どうした!? どうした!? マコト・エイロネイアー壊れた! 壊れた!」



 悔しいが、ハイドの言う通り。



「ああ俺、壊れた! あはは! 見事にぶっっっ壊れちまったよ!! だ〜〜っはっは!」


「コワイ!! コワイ!!」



 怖いのはお互い様だろ。

 そう言いたくなっちまってた俺だが、




『マコトさん!?』


「……え〜!? あはははっ! 女神様か!?」




 マジかよ。

 脳内に直接響くこの声は、俺を日本から異世界転移させてきた女神様ので間違いねぇ。

 最近話してねぇと思ったら、このタイミングかよ……最悪すぎる。


『あの! テレパシーなので声は出さなくても――』


「だっはははぁ〜!! 女神様だ! よっ、お久しブリ大根!! ぎゃあっはっは〜〜!!」


『……は……?』


 ほら、女神様にビックリされてる。

 止めたくても、俺の口も動きも止められねぇんだからしょうがなくねぇ?

 俺悪くなくねぇ?


『本当は今、私は貴方と会話できる立場には無いのですが――緊急事態のようでしたので一瞬だけ』


「緊急!? あははは、俺の人生はいつだって緊急〜!! 救急車呼んでくれ!!!」


 ああもう、何を言ってんだ俺は。

 自分でも全く意味がわからんまま喋ってる。


『……いいですか? よく聞いてくださいね』


「イヤだ!!!! ば〜〜か!!!」


『聞きなさい』


「はい」


 何だよ女神様、お母さんかよ……そして俺はプラム以上のクソガキと化している。

 コントじゃねぇんだぞって……



『貴方の能力《能力ガチャを引いたら、武器ガチャが出ました(笑)》なのですが……アレは想像力がとても重要なのだそうです』


「重要……じゅ〜よ〜……需要と供給……!」


『聞きなさい』


「はい」


『今、完全に頭のネジが飛んでしまったマコトさんの想像力は留まるところを知らず――能力のリミッターが一時的に解除されそうです』


「え? 三行でまとめて?」


『能力が一時的に覚醒しそうです。はい、テレパシー終了』


「まったな〜!!!」



 ただのテレパシーだっつってんのに、俺ってば空に向かって大きく手を振ってる。バカか……


「え、親分? 今誰と話してたんスか?」


 ほら、今度はゼインがビックリしてる。

 目の前のハイドもビックリしてるが、



「ただしハイド、てめ〜はブチ殺します!!!」



 どんだけ狂っちまった俺でも、ハイドへの殺意だけはブレていなかった。

 空高くジャンプした俺が、その手に生み出した『武器』は、



「ヒャッハ…………エ〜〜〜〜〜ッッ!?!?」



 ガチの、()()だった。


 魔法で出した隕石モドキなんかじゃねぇ。宇宙から引っ張り出してきたような、正真正銘の本物だ。


 こんなの、これまでの武器ガチャではあり得なかったよな。

 今、能力が覚醒してんだ……というより、俺の頭がおかしくなってるから、奇想天外なイメージができて、奇想天外な物も生み出せちまうワケか。



「どっこいしょぉぉぉぉ!!!!」



 空から、俺は両手で隕石を投げつける。


 ――こうして、異世界での異次元バトルが開幕しちまったんだ。


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