#31 待ち望んだポーション
「ア"ー! ア"ーァ!」
頭を潰されて死んだポーション屋だが、プラムゾンビは未だにその死体を殴り続けてる。
そのすぐ横にはポーション屋が使ってた馬車が止まったままで、
「ゲホ、ゴホッ! ま、まぁ確証は無いっスけど……イチかバチかの賭けっスね……」
『毒』のポーションを浴びて脳天が紫色に染まった、ゼインの姿。
頭を痛めて、逆に冴えちまったあいつは、ポーションの仕組みを何となく理解したらしいんだ。
「ゼイン……もう今の頼りはお前だけだ……!」
リスキーマウスの毒がもう目の下まで回ってきてる俺は、ゼインを急かさねぇくらいの小声で呟いた。
「あぁ……合ってりゃいいんスが……よしもう一度思い出せ俺。マコトの親分を吹き飛ばした『攻撃』のポーションは赤色だった」
ゼインはブツブツと何か言ってる。頭を整理しながら、馬車の荷台を漁ってるみてぇだ。
「それと反対の効果を持つ『回復』のポーションは……そうだ、青色だったっスね」
ん? どういうことだ?
「そうだ、そうっス……反対の効果を持つポーションは、反対の色になってる可能性が高い……!」
マジか?
攻撃が赤。回復が青。確かにポーションってのはカラフルだと思っちゃいたが、そういう仕組みかもしれねぇのか。
考えもしてなかったぜ。
しかしゼインを絶賛苦しめ中の『毒』のポーションは、確か紫色だったよな?
紫の反対って何色なんだ? わからん。
だが、どうやらゼインはわかるようだ。
「紫色の反対は……えぇっと、緑色……もしくは黄色か? ……あぁ、どっちの色のポーションもあるっス……」
緑か黄ね。
それはいいが、どっちのポーションにも『解毒』の可能性があるよな。
それはどうするのかと思ったが、
「マコトの親分のためっス……ええい、ままよ!!」
ゼインは緑色をした得体の知れねぇポーションを、自分の頭に数滴かけた。
……そうか、あいつも解毒が必要なんだよな。
が、
「ぐあぁあ〜ッ!? 何だコリャぁぁ〜〜!!」
うわ、グロテスク! 最悪だ!
ゼインの両目とか口から、気持ち悪い植物みてぇなのが飛び出してきた!
今のあいつ視界ゼロなんじゃ……
「ゼイン……!」
「くっ、終わらない……まだっス……親分……!」
俺も馬車に向かってんだが、今さら毒が体の芯まで効いてきて、歩くことしかできねぇ。
目が植物になっちまったゼインは必死に手探りで、
「こっ、これっス!!」
ポーションを掴む。
それは確かに、黄色のポーションだった。
手が震えながらもゼインは、自分の頭に黄色いポーションを流した。
――その瞬間。
あいつの頭に侵食してた毒も、目と口から生えてきてた植物も、消えてなくなった。
やっと見つけたぞ『解毒のポーション』。
「お、親分!!」
「よくやったゼイン!」
嬉しそうに叫ぶゼインを、俺もとりあえず親分として褒めとく。
馬車へ歩いていく俺だが、
「〈大災害・ブレス〉ッ!!」
そんな声が聞こえた。
歩きながらも俺は少し振り返る。
それは、プラムゾンビにハイドが吹っ飛ばされてったはずの方向から聞こえてきたからだ。
ハイド……あのオオカミ野郎、まだくたばってなかったのか!?
誰もがそう認識したところで、
「……おわっ!?」
真っ黒な極太ビームみてぇなのが一直線に飛んでくる。
俺はどうにか躱したが……
「クソ、馬車が! ゼイン!?」
――ポーション屋が使ってた馬車が、引いてた馬ごと消し炭にされちまった。
ゼインは近くに倒れてる。
あいつも、解毒のポーションも……大丈夫なのか!?




