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#21 東の墓地、再び



「いででで……あぃでででででっ……!」


 今までリスキーマウスの毒に侵された右腕は『ちょい痛い』程度だったが、どんどんキツくなってきた。


「親分、大丈夫ですかい?」


「っていうか親分、その紫色のやつ、胸の方まで広がってるような気がするんスけど……」


 心配するブラッドに被せるように、ゼインが言ってくるから確認してみると、


「……あ、ホントじゃねぇか……これ全身に広がったら終わりかね?」


「本来は一瞬で広がるんですがね……」


 おいおいブラッド、俺の抵抗力に呆れた感じのコメントしないでくれよ。


「その前に親分、目のとこまで広がったら失明しちゃうかもしれねっスよ? もしかして脳まで到達したら脳死しちまったり……?」


「怖ぇなゼイン! クソ、だったら即死した方がマシって結果になっちまうぞ!」


 まぁこの広がり方だと一瞬だけ失明したり脳死した直後にジワジワ絶命してくっぽいが……

 恐ろしくて考えたくねぇ。


「てゆうか〜、マコトは今どこ向かってんの?」


「あぁそれはな。ポーション作りの依頼文には『東の墓地に拠点を作って待つ』と書いてあるもんだから、そこに向かって……」


「ふーん。東の墓地って懐かしいね」


「あぁ…………あッ!? プラム!?」


「えっ、プラムちゃんっスか!? かわいい!」


 ――リスキーマウスの尻尾を持つブラッド、大量のガーゴイルの翼を抱えたゼインを伴って、サンライト王国の壁外の野原を歩いていた俺たち。

 誰にも何も伝えず突っ走ってた俺に子分たちはついてきてくれてたが、クソガキは直球の質問してきた。


「プラムお前……普通についてきやがったのか」


「てへぺろ☆」


「ところでお前『火の魔石』とか持ってる?」


「は? あるわけないじゃん。マコト馬鹿なの?」


「役立たずよなぁ」


「はぁぁぁ!? マコトのロクデナシ!!」


「あぁぁぁ!?!? あ、否定できんな。」


「否定しないんかい!!」


 って、何が悲しくてクソガキとコントみてぇなのさせられてんだ俺は。こう見えて生命の危機なんですけど。


「プ、プラムちゃん……かわいいっスね!」


 約一名うるせぇのいるし。

 ゼインだけでなく、子分たちみんなが俺とプラムのやり取りを、温かい目で見守ってる。


「って、見せモンじゃねぇんだぞお前ら!」


「「「「「す、すいません親分!!!」」」」」


「人数が多くて暑苦しいわボケ!」


 ホント、この人数の多さの割に『火の魔石』の入手についてはダメダメだってんだから参ったぜ。


「そうだぞてめぇら。親分の危機だってのに、『ロデオ』とかいう料理屋からそんなカスみてぇな小さい欠片一個貰うだけなんてよぉ」


「すいませんブラッドの兄貴! マコトの親分!」

「知ってるのが『ロデオ』しか無くて……」

「でもちょうど在庫が切れてたらしく!」

「発注した魔術師団から届くのはまだ先だと……」


「じゃあ魔術師団とこ行って貰ってくりゃあ良かっただろうが!」


「い、行ったは行ったんです兄貴!」

「でも俺らみたいなチンピラお断りって!」

「魔法でぶっ飛ばされちゃったんです!」


「そうかそうか、よしわかったぞ。つまりてめぇら俺にもぶっ飛ばされたいってこったな?」


「違いますぅ!」

「兄貴ゆるじでぇぇぇぇ!」


 拳の骨をバキボキ鳴らすブラッドに、怯える子分たち。

 いやこれは怖ぇよ。下手したら魔術師団に乗り込んで魔石強盗しそうな勢いだよもう。


 ――『ロデオ』ってのは知った名だ。店長とちょっとした知り合いなんだ。

 そういえばあそこで『火の魔石』ってのは確かに見たことある。フライパンとかを熱する、コンロの代わりみたいに使ってたっけ。

 魔法適性の無い、例えば俺のようなヤツでも簡素な魔法ができる。それが魔石って代物なんだよな。


「でもなぁ……」


 俺は確かに消しゴムのカスみてぇなサイズしか無い『火の魔石』を手の中で……というか指の上で転がしてみる。

 こんなんでポーションの材料として足りるとは思えんな。


「まぁでも行ってみるしかないっスよね。ね、プラムちゃん!!」


「うん。そうだねゼイン」


 ウキウキで話しかけるゼインに、プラムは感情の死んじまったような声で返答。

 すると今度はブラッドが、



「それよか親分、俺が気になっちまってんのは……」


「『東の墓地』のことだろ? もう気にすんなよ、俺なんか忘れかけてたぜ」



 俯きながらポツリ。


 何かというと――東の墓地ってのは、ブラッドと俺がしちまった大ゲンカの舞台でもあるんだよな。

 わざわざそこが依頼人との集合場所ときてる。


 ブラッドが俺を墓地に閉じ込め、スケルトンって骨の魔物を召喚して俺を殺させようとしたんだ。

 いや〜懐かしいぜ。


 あれ、そういえばあの時プラムってどうしてたっけか?

 そう思いプラムを見てみると以心伝心、



「私? 私はね……あっ、そうだ! ゼインに誘拐されてたんだ!」


「あああ!!!」



 俺は叫んじまった。


 今でこそプラム自身も笑い話みたいにしてるが、思い出した俺は沸々と怒りが……

 もうあの()()()()()()とは和解して子分にしたけどよ……



「プラムちゃ〜〜ん!」



 そう言ってプラムに向かって飛んできたゼインを、



「うるぁぁぁぁぁッッ!!!!!」


「ぶぼふぇぇぇ!?!?」



 左手に生み出した巨大な()()()でぶん殴った。

 ゼインは白目になって、どっか飛んでった。


 ペチンッて良い音がした。





 てへぺろ★

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