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#19 ポーションとは?


「マコトの親分、はい。あんたのギルドカードだ。あいつらが逃げるとき落としてった」


「おっとサンキューな、ブラッド」


 左手でギルドカードを受け取った。


 チンピラみたいなのに絡まれて時間を浪費しちまった俺は、依頼の中から大急ぎでポーションという文字を探しまくる。

 子分のブラッドの、不思議そうな視線を感じる。


「急ぎの用ですかい? 親分らしくないですね、しかも冒険者ギルドに来るのを怖がってるようにも見えたし」


「……ん? それがどうした?」


「いや、ギルドに来るたんびにあんな騒動起きちまうんなら、怖がる気持ちもわかるんですがね」


 言いたいことはわかる。

 荒くれ者どもが酒飲んでるの見て、確かに俺は『急いでギルドから出ないと』と思ってた。


 まぁ半年前に『救世主』という肩書きが付いちまってから、あんまりギルドに来たくないって気持ちはあるかもな。絡まれたりしそうで。

 でも、


「新聞なら見ただろ? ブラッド」


「ああ、やっぱりそのことですかい……さすがは親分!! ……って俺は思っていやしたが」


「何でだよ!?」


 今回は特別だ。

 ――まず、今の俺はベルク家とケンカしてて、新聞で大々的に報じられている。


 つまり、特別『悪目立ち』している状態。


 余計に他人に関わると、変な騒動が起きるんじゃないかと何となく予想してた。

 加えて、


「見ろよ。この惨状」


「え? 右腕……どうしやした!?」


「リスキーマウスの毒にやられちまっ――」


「「「うおおおおッ!?」」」」


 ブラッド含めた周りの子分たちが、一斉にイスをガタガタッと後ろへ引いた。

 どうした急に。


 ――あ、言ってなかったが、半年前に俺の子分になったのはブラッドだけじゃない。

 元々ブラッドが率いてた三十人くらいの荒くれ冒険者がみんな俺の子分になった。


 その中でも筆頭みたいなポジションの、俺と同じDランクのゼインという男が口を開く。

 ガクガク震えながら。


「う、ぬなっ、親分!? ど、どどどうしてリスキーマウスの毒で死んでないんスか!?」


「生きてちゃ悪いのか? ゼイン」


「いや生きてて良かったっスけど……そういう話じゃないっスから!」


「じゃあどういう話――」


「「「ぎゃああああ!!!」」」


 俺が少し振り向いて右腕が揺れただけで、ゼインも子分たちも、ブラッドまでもが恐怖して俺から離れてく。


 冒険者の経験豊富なこいつらが……俺ってば、どんだけヤベー魔物と戦ったんだよ。猛毒の危険度もモノホンなんだな。


「な、なるほど……急いでる理由も、ギルドに来たくなかった理由もよ〜くわかりやした」


「だろ?」


「そんな状態で、何の依頼を探してるんで?」


 落ち着いてきたブラッドがまとめる。

 ようやく話が方向性を得てきたところで、俺は「むむっ?」と一つの依頼に目をつける。



『依頼:ポーションの材料集め

依頼者:情報開示せず

報酬:金貨500枚

概要:商売のためポーションを作りたいが、材料が足りない。持ってきてくれれば報酬を出す。場合によってはポーションの実験にも付き合ってもらうかもしれない。必要なものは――』



 あった。かなり探してやっと見つけた一つの依頼だ、マゼンタ団長が言ってた噂はこのことだろう。

 軽く読み上げたのでブラッドやゼインたちも聞いていて、


「……何ですかい、これ? 依頼者の情報無いし……報酬が金貨500だと?」


「すげぇ大金。相手は王族か何かっスか?」


 二人とも微妙な反応だな。

 俺が、よくわからない、という顔をしてると、


「こりゃ『怪しい』依頼ですぜ」


 ブラッドは一言で簡潔に説明を済ませてくれた。

 でも怪しく見えちまうくらい、それだけ『ポーション』というものが希少で、貴重なんじゃ?


 そもそも、


「『ポーション』ってのは何なんだ……知ってるかブラッド、ゼイン? 俺は解毒の方法を探してて、噂で聞いてきただけなんだが」


 マゼンタでさえ『よく知らない』というポーション……あいつの場合、俺の心配をして細かい説明を省いてくれたってのもあるだろうが、それほどのモンだ。

 いったいどういう存在なんだ?


「あー、俺たちもよく知らないんでさぁ。親分、あんたと同じで噂話ばかりになっちまいやすが……ゼイン、頼む」


「了解っス、兄貴」


 ブラッドがそう建前を言うと、ゼインが説明を始める。

 そういえば、ゼインって意外と頭が回ったり賢かったりしたんだっけ。



「ポーションってのは『魔力の込められた薬』のようなもんだと聞いたっス。魔法だったり、あるいは魔物から剥ぎ取ったものとかを材料にするんで、作るのも、扱いも難しいとのことっスよ」


「じゃ、そこらの薬よりも明らかにスゴいんだな」


「恐らく……そっス」



 そりゃ魔法のある異世界ならではの発明だな。

 解毒方法が見つかってねぇリスキーマウスの毒のことで、マゼンタがオススメしたワケだ。


 そして説明を聞きながらも依頼文を読み進めてた俺は、あることに気づく。


「お前らも……おかしいと思ってたか? この依頼は金貨500枚って法外な報酬なのに、どの冒険者も飛びつかなかった理由をよ」


「そりゃ怪しいから、じゃないんですかい?」


「どうやら違うようだぜブラッド」


 依頼概要の最後には依頼達成に必要な、ポーションの足りてない材料が書いてある。

 そこには、



『火の魔石、ガーゴイルの翼……()()()()()()()()()()



 一撃で死んじまう毒を持つ魔物から尻尾を奪わなきゃいけないなんて、とんだ鬼畜依頼だよな。

 今となっちゃ俺には楽勝だが。


 あと『ポーションの実験に付き合ってもらうかも』とか書いてあったっけ。

 付き合わせてもらおうじゃねぇか。解毒のポーションの実験に。


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