#16 壮絶! ネズミ駆除
ミッ………………じゃなくて。
リスキーマウスと睨み合う俺。あの巨大ネズミ、顔がシンプルに怖いぜ。
「すみませんでした、こんなことになってしまって。マコト様を信じなかったばかりに……」
メイドのミーナは、怪我は無いもののリスキーマウスの尻尾に絡め取られて捕まっちまってる。
バツが悪そうだから励ましてやろう。
「いいんだよミーナ。日頃の行いが悪かったんだ……お前の」
「私のですか!?」
「いや嘘。俺の日頃の行いが悪かった」
だからダメなんだって! こんなことばっか言ってるから仲間に信用されねぇんだ俺は!
「気をつけてマコト様、このリスキーマウスは『主婦たちの天敵』として有名です!」
「主婦の……ってそれ普通のネズミの説明だろ! こんなバカでけぇの主婦の手に負えるか!!」
「あれ!? すみません!」
こんなとこで天然発揮してんじゃねぇよミーナ! お前殺されるかもしれねぇんだぞ!
やべ、リスキーマウスが後ろ足踏ん張らせてる。
「チューウウウ!」
「うわぁっ!」
すげぇ速さでジャンプしてきて、飛び出した前歯で噛みつこうとする。
俺は避けたが、奴の前歯は屋根にぶっ刺さってる。
クソ、新居が! 夢のマイホームが! 穴空けてんじゃねぇよネズミ野郎!
「って……」
何だあれ。
前歯の刺さってる部分からジワジワと、何やら屋根が紫色の気味悪いものに侵食されてってるんだが……
「そうでしたマコト様! リスキーマウスは前歯に猛毒を持っているんです! お気をつけて!」
「言うの遅ぇな!?」
絶対さっきの『主婦の天敵』の情報と今の間違えただろ! 屋根が「ジュゥゥ……」って言ってるんだが。マジで避けて良かった。
と思ってたら、
「チュー!!」
「ぎゃあぁぁぁ!」
屋根から前歯を抜いたリスキーマウスは、猛烈な勢いで俺に前歯を振るってくる。
俺は傘を生み出してバッと広げるが、
「チューウウッ!」
「やべっ!」
前歯に切り裂かれて一撃でズタボロに。
傘を捨てて消滅させ、すかさず今度はフライパンを生み出し、
「んにゃろがぁ!!」
「ヂュッ」
振り上げたフライパンで前歯ごとリスキーマウスの顔をぶん殴る。
カァンッと良い音が鳴り、俺は跳び上がって追撃をリスキーマウスの脳天にブチ込む。
「ヂョッ」
成功はしたが、
「う、うわマジか!」
さっき前歯ごと殴ったときにフライパンに毒が付着しちまってたらしく、取っ手まで紫色に染まってきてた。
それが俺の手に移る前に捨てたから良かったが、どんだけ危険な毒なんだよ。
リスキーなんて名前が付くわけだ。
……何で英語?が異世界にあるのかは意味わからんけどな。そこは考えないってことで。
「とにかくコレだネズミ野郎!」
次に生み出したのは、チーズを仕掛けてネズミが来たらバチコンと挟む、よく見るネズミ捕り器だ。
まぁ、リスキーマウスに合わせたのをイメージしたから、特大サイズな。
俺が両腕でそれを持ち、手を離したら消滅しちまうから、離さないように慎重に――
「って、手も離さず罠仕掛けられるかぁ! くたばれネズミ!」
「ゥヂューゥゥゥ!?」
手を離したら消滅って武器ガチャの特性は、とことん罠を仕掛けるのに向かねぇ。
なので、罠で豪快にリスキーマウスをぶん殴ると、
「チュー」
「あっ」
ぶっ壊れたネズミ捕りの間から、偶然にもリスキーマウスの前歯が出てきて、
「ぐあぁっ!? やべぇぇぇ!!!」
俺の右肘のあたりを掠っちまった。
クソ、毒が付いちまったかな。怖くて右腕を見る気にはならねぇ。
――こんな危ない害獣(魔物)はとっとと駆除だ。
「まずミーナを離せ」
怯むリスキーマウスの背後に回った俺は、斧を生み出して振り下ろし、その尻尾を切り落とす。
「きゃあ!」
ミーナが落ちるが、何とか屋根の端を掴んでぶら下がったのを確認。
待ってろ、すぐ助けに行く。
「お前を駆除した後な――!」
「ヂュウウウウ!!」
斧を水平に振ってリスキーマウスの腹に突き刺す。手を離すが消滅する前に、
「落ちろ!」
刺さった斧を蹴っ飛ばし、その影響でリスキーマウスはバランスを崩して屋根から下の道路へ落ちていく。
俺も追いかけ、
「そのデカい口に、相応しいものをくれてやる!」
「チュ!?」
空中で痛みに悶えるリスキーマウス。その毛皮を掴んで移動し、顔面まで到達。
もう毒に侵されてるだろう右手でリスキーマウスの前歯を掴み、左手には火炎放射器。
「おらよぉぉぉぉ!!」
「ピギィィィィィィィ!!!!」
強制的に口の中に突っ込んだ火炎放射器から大量の炎が噴射される。
リスキーマウスは意味不明な鳴き声を上げながら、内蔵を焼き尽くされてく。
道に落ちたリスキーマウスは、丸焦げになって死んじまったようだ。
「マコト様……!」
「おお……そうだった、ミーナ落ちてこい。受け止めてやるから……毒の回ってない手で」
屋根の端を必死に掴んでたミーナが、とうとう疲れて落ちてくる。
俺は左手一本で彼女の体を受け止めた。
全体的に紫色に染まっちまった右腕には……もう感覚が無かった。
どうしよう。




