表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/145

#15 初めてのおうち


「到着ですね、マコト様」


「おう、確かに魔術師団の寮からそう遠くねぇ位置だ」


 マゼンタ団長が貸してくれるというボロ家に到着した、俺とメイドのミーナ。


 ほー、二階建てだ。

 元は倉庫として使う予定だったそうだが、掃除が面倒にでもなったのかね。


「ひとまず中を見てみましょう。マコト様が気に入ったのなら、すぐにお掃除を始めちゃいますから!」


 両手をグッと握ってやる気をアピールしてくるミーナ。カワイイじゃねぇか。

 汚い見た目に反して意外としっかりしてるドアを開け、ギシギシと音が鳴る玄関へ。


 ……このボロボロ具合い、メイドの掃除だけで何とかなるか?

 大工とか呼ばねぇとダメな気がするんだが。


 一階をミーナとともに見て回る。


「なかなか広いな。作りはしっかりしてるし……」


「では、二階も」


 元々俺って家とかに興味も無さそうだし、こだわりとかも無いからさっさと決めちまってもいいんだが。

 まぁ普通は全部見てから決めるよな。と思いミーナの後に続いて二階へ上がるが、



「……ん?」



 どうにも、他の生物の気配を感じにくいはずの俺が、とても、とても強く感じるぞ……

 敵意を向けられてる感覚だ。


「おいミーナ、気をつけろ」


「へっ?」


「何かいるぞ、ここ。魔物かもしれん」


「えー? ちょっとマコト様、そんな急に冗談よしてくださいよー」


「い、いやいやホントなんだって!」


 やべぇ、ミーナに冗談だと思われてる。

 オオカミ少年よろしく、普段からくだらねぇジョークばっかり言ってるせいで信じてもらえねぇのか。


 でも、もし魔物がいるとして、どこだ?


 一階にはいなかったし、二階も今見て回ってるが、姿は見えない。

 そもそもここは魔物を避けるため高い外壁に囲まれた、サンライト王国の王都。その中でもかなり中心の方にある建物だ。


 魔物がここまで侵入してるなら、王都中がパニックになってるはず――



「きゃっ」



 え?

 嘘だろ、ミーナの声だ。


 俺の後ろにいると思ったが……どこ行った? 今の一瞬で消えちまった。


「ミーナ? おーい、ミーナ!」


 前後左右キョロキョロと探し回る。

 おかしいな、と思い上を見ると、


「あ!?」


 ミーナの足が天井へ消えていくのが、ほんの一瞬だけ見えた。

 そうか。屋根裏か。


「マズいな。ハシゴみてぇなの出してもどっから登ればいい? と、とにかく武器ガチャよ、上に登れるものをプリーーーズ!!」


 手を合わせて祈る。

 ポン、と何かが召喚される音が聞こえる。しかし、手には何も生み出されてねぇ。


 ちょっと動いてみると、背中に何か背負われてる。


 リュックサック? ランドセル? 違うな、やけに重いぞこりゃ。


「まさか……ジェットパックか!?」


 驚いたな。ジェットの噴射で空を飛ぶ機械……みたいなやつだっけ?

 とにかくこれなら上に行ける。


 ってか、


「こんなの武器として出るんなら、マザーガーゴイル倒すとき、アバルドやジャイロを踏んづける必要無かったような……」


 あの時の苦労返せよ。

 どうしてこれが武器として判定されるのかよくわからなかったが、


「このボタンを押すと上昇……っておい!? おいおいおい速すぎる! 待て待て待て――」


 とんでもねぇジェットの噴射力、ものすごいスピードで俺は真上に飛んでく。


「ぼがぁッ!?」


 結果、頭で天井を突き破る。痛い。きっと脳天から出血してる。ハゲそう。

 そのまま、


「うわあああああああああああ!!」


「チュー!?」


「きゃあ!?」


 何か生き物の腹っぽい柔らかいものに頭突きし、そのままジェットの噴射力で、生き物ごと屋根の上へ飛び出しちまった。

 ――こんな速度で頭突きさせられるんだ、ジェットパックも武器判定されるワケだ。


 ってか「チュー」って何!? ネズミ!?


「うお!」


 ジェットパックが俺の背中からすっぽ抜けて飛んでいき、消滅する。

 俺は何とか家の屋根に着地、ミーナを攫いやがった野郎と向かい合い……


「チューゥゥゥ!!!」


「やっぱネズミだな! 突然変異のネズミか!?」


 ネズミとはいえ、長い尻尾でミーナを捕らえるあいつは三、四メートルぐらいの茶色い巨体を持ってる。

 突然変異のネズミかと思ったが、


「マコト様! これは魔物です!」


「やっぱ魔物か」


 尻尾に捕まってるミーナが、必死そうに喋ってきた。こいつのこと知ってそうだな。




「確か名前が……リスキーマウスです!」


「えっ!? 名前が危険(リスキー)!!!」




 あのネズミ、色々な意味でヤバすぎるだろ! 特に名前が! 消される!!

 それにしても、魔物がどうしてこんなとこにいるんだよ。とにかくやるしかねぇけど。


「チューウウウウ!!」


 ――かくして俺は、ミーナを救い、俺の新しい家を取り返すために、




 ミッ…………




 じゃなくて、リスキーマウスと戦うハメになった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ