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#最終回 最終回!最終回です!



 完全に『魔王』となったマコト・エイロネイアーは、



【アヒャアヒャアヒャ〜ヒャヒャヒャ!!!】


「あああああああああ」



 狂ったように笑いながら、ラムゼイの全身をグチャグチャに破壊し続けている。

 破壊したところですぐに再生していくのだが、それも意に介さず。再生したらまた破壊するだけだった。


「ホ……〈ホーリー・アロー〉っ!」


【邪魔するなァ!】


 試しにリールがラムゼイに向けて射ってみた『光属性』の矢を、マコトは鬱陶しそうに跳ね返す。


 もちろんマコトは知っている。ただ攻撃しても無意味なのだと。

 でも、体が勝手に動く。わかっているのに。


 ――嗜虐心が止まらない。



「何ですかこの状況は……」


「もともと不安定だったマコトさんの『闇の心臓』が、トドメの闇属性魔法を食らって完全に覚醒してしまったようです――彼は今『魔王』です」



 困惑するミーナに、ルークは説明をする。理解しきっているわけではないが、そう説明する他にないだろう。



「マコトさん本人が言っていたように『闇属性』と『光属性』を用いることで、ラムゼイさんたちを倒せるとしても……」


「ど、どうなるんですか……?」


「僕らの中で『闇属性』を扱えるのは彼だけ……しかし、あの状態では連携なんて取れません」



 ずっと上から目線の態度だったラムゼイが――もはや涙目で、ただただ悲鳴を上げ続けるだけの存在になっている現在。

 立場が逆転しているとはいえ、



「このままではラムゼイさんたちを倒すこともできず、今度はマコトさんが誰にも倒せない存在となり――マコトさんが世界を支配する結果になってしまう」


「……何ですかその状況は〜〜〜!!?」



 ひと通り説明を聞いたところで、ミーナは最初の疑問に立ち戻るしかないのだった。



▽  ▽



 ここで動いた者が一人。



「マコトぉぉ!!」



 プラムだった。走り出す少女は、



「みんな見て! マコトは時々『白い煙』を出してるよ! いつも使ってる能力だ!」


「え? プラムちゃん……?」


「マコトは戦ってる! 『魔王』になんかなってないんだよっ!!」



 彼が魔王の意識に抵抗していると信じ、彼のもとへ一直線。

 暴れ回る『闇の手』を掻い潜り、


「っ……!」


【グッ! 何だ! 離れろォ!!】


 背後から彼に抱き着く。

 マコトはようやくラムゼイから離れ、プラムを振り払おうと暴れている。


 もちろんプラムは離れない。首を絞め落とすほどの力で抱きしめているから。


「んんんっ……!!」


 彼女からも『愛の魔法』のピンク色のオーラが滲み出し、段々と勢いを増し、強まっていく。

 〈超人的な肉体〉の白いオーラ、『魔王』の黒い闇、そしてプラムの『愛の魔法』。


 三色のオーラが混ざり始めていた。


 そして、



「は、はやく……はやく『魔王化』を止めなきゃ! 誰か、誰か助けてよぉ!」



 プラムはとうとう泣き叫ぶ。


 ラムゼイでさえ過剰なダメージで()()()いて、誰一人として動けていない。

 ただマコトがプラムを引き剥がそうと暴れ回っているだけの状況が、一向に終わらない。


 願いを聞いたルークは、



「……そうだ! 『光』です! 『光属性』を撃ち込んでください!」



 どうにか頭を回転させてブラッドやエルフたちに指示を出すが、


「待ってくれ、プラムちゃんも巻き込んじまうぞ!」

「それで『魔王化』が直る保証はあるの!?」


「う……」


 言い返すことができない。ルークも冷静さを失っているようだ。

 が、



「――やって!!」


「「えぇっ!?」」


「いいから!! やって!!」



 『巻き込む巻き込まない議論』の張本人であるプラムが、早く撃てと懇願するのだ。

 それこそ誰も言い返せない。他に良い案が出ることもない。


「……クッソぉ!! どうにでもなれっ! 限界まで溜めた『光』、親分とプラムちゃんにくれてやるぜ!」


「ちょ、ブラッド!?」

「本気!?」


「エルフの姉妹! お前らもやれ! マコトの親分を殺すぐらいのつもりで!!」


「「え〜〜〜〜っ!!?」」


「そうでもなきゃ、効きゃしねぇよ! 彼の強さ知ってんだろ!? ぉるるらァ!!」


 ブラッドは有言実行した。『魔石(マジ)ランチャー』から、本当にフルチャージの『光属性』の弾が射出される。

 リールとルールも、彼に背中を押されて覚悟を決める。


「「〈ホーリー・ストライク〉!!」」


 ゾンビドラゴンにも撃ったほどの、本気で放つ姉妹の合体技だ。

 ――殺人級の『光』が二人に迫る中、



「こ、の……おとなしく……『魔王』の座を……明け渡せ……」



 ボロボロのラムゼイが中途半端に再生したまま、おもむろに立ち上がる。

 顎が外れ、あんぐりと大きな口が開かれる。腹の奥底から『闇』がせり上がり、



「ァ……ガ……〈堕落退廃(ディジェネレーション)(デス)・ブレス〉……!」


「あ」



 何と『闇属性』の超巨大ビームまでもが、追加されてしまう事態。

 新たな『闇』と、フルチャージの『光』が同時に接近……そして。




 ――ボゴォォォォンッ!!!




 着弾。

 マコトとプラムを中心に、色彩豊かな、色鮮やかな大爆発が発生した。


 どういうわけか――その爆発は〈混沌世界(カオス・ワールド)〉の真っ黒な地面を破壊し、巨大な穴が出来上がる。


 そこに、




【……】

「……」




 一つの肉塊のようになってしまって、しかも黒焦げのマコトとプラムが――

 落ちていく。


 どこを見渡しても暗闇の世界で、どこまで続いているのか、どこまでが暗闇なのかすらわからない深淵へと。


 虚しく、落ちていく。


 これでは『魔王化』もクソも無い。




「や……やった!! 勝ったぞ! 俺の勝ちだぁ! 『異世界の救世主』をっ、この俺が討ち取ったぞォォォォ!!!」




 ボロボロの体で、ラムゼイが渾身のガッツポーズをしている。

 そう。決着の瞬間である。











「「「……えぇえ〜〜〜〜〜〜ッ!!? ここまで来て負けるのぉぉぉぉぉ!!?」」」











 敗北が決まってしまった仲間たちは、もう叫ぶしかなかった……

 異世界はもう終わりだ。



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