#109 SIDEルーク:暴走には暴走を
自信がなくなってきてしまいました…なぜなら僕はこの最終章で、ふざけ倒すつもりだからです。整合性は二の次です。すいません本当です。伝え忘れです。ここで宣言しました。
最後が一番面白くなればいいな、とか言いましたが、やっぱりそれは僕の願望に過ぎません…
嫌でなければ…温かい目で見守ってくださると…
「っ……うッ……!!?」
道端に倒れているルークは、目覚めて。
「うっ、あああァァァ〜〜〜!!!」
横にいるはずのマコトがいないことよりも、王国が滅茶苦茶になっていることよりも――
まずは自分の右腕が体から切り離され、近くに落ちていることを叫ぶしかなかった。
苦痛、絶叫。
頭が真っ白になりかけるが、そうなる前に、ひたすらに這いずって腕を拾う。
断面を合わせ、
「ぅ……ううう!!!」
氷の魔法で覆って、無理やり接合。
自身の魔法がこんなにも冷たくて痛いなんて、初めて知った。
「ふぅっ……ハァ……ハァ……!」
確かラムゼイが創ったという〈混沌世界〉にて、無数の風の刃のようなものを食らった覚えがある。
あの時、右腕を斬り飛ばされてしまったらしい。
アレがいったい何だったのかは不明だが――ルークは魔術師だからといって体を鍛えていないわけではない。
敵側には、まだまだ、死神なんかよりもよっぽど強い『何か』が控えているのだろう。
「と、とにかく……!」
「ヴアーーー」
「ヴオォーーー」
飛び回る死神、逃げ惑う人々。
再び世界は闇に包まれ、危機に陥っているようだった。
(また……繰り返してしまった……)
半年前とほぼ同じ展開。
いや、もっと悪くなっている。
1人この事態を危惧していたルークには、当然思うところがある。
だが――
「……〈アイス・バレット・ラッシュ〉!!!」
「ヴオァァッ」
「ヴォッ」
走り出す。氷の弾丸を次から次へと死神たちへ飛ばし、撃ち落としていく。
悩んでいる場合ではない。少しでも多く人の命を救うことだ。
しかし、
(……マコトさんはどこに……?)
彼のことだから既に動いて戦っているはずだが、妙に嫌な予感がした。
探さなければならない、とルークの本能が言っている。
▽ ▽
走り続け、死神を何十体と撃ち落としたところで、
「……マコトさん!?」
とうとう発見。
だが彼の姿というのは、
「あバラバラ肋あびらあばらババパパババば†Å■♨∴丶㊙%△●☆ラララ◯□✦♨」
「えぇ……?」
マコト・エイロネイアー。
背中から歪な『黒い翼』を生やし、まるで変死体のようによくわからない姿勢で空中浮遊をしている。
よくわからない言葉を呟き続けている彼の全身からは、フニャフニャと『黒い腕』のようなものが蠢いて……
「ヴアーーー」
「ヴヴーー」
「マっ、マコトさん!?」
鎌を振り上げる死神たち10体ほどに囲まれるが、マコトはそれに気づいた素振りも無い。
すると、
「…………ハァァァァイッ!!!」
「ヴォ」
「ヴ」
マコトの謎の掛け声とともに、体から生えて揺らめいていた『黒い腕』が勢いよく飛び出し、全ての死神を掴む。
次の瞬間、
「ス・ル・メ・イ・カ〜〜〜〜〜ンㇴ!!」
「ヴォゲ」
「ァガ」
グシャグシャの、グシャリ。
彼に向かっていった全ての死神が、一瞬にして潰されてスクラップになってしまった。
さらに『黒い腕』たちは潰した死神を握ったまま、バチンと拍手してスクラップの塊のようにしてしまった。意味ある?
見ていたルークは、
「もしかしなくても……これは『闇属性魔法』ですよね。マコトさん……どうやら……あなたは『魔王』になってしまったようです」
「そいやっそいやっ、」
「人格が変わるとは聞いていましたが……何なんでしょうか、その状態は……?」
だが希望は無くもない。
今マコトを攻撃したのも、マコトが攻撃したのも死神。あれらは『魔物』であり、本来ならば『魔王』に仕える存在。
同士討ちということは……もしかすると罪の無い人々に被害を出すことは……
「ア〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!」
そんな希望は崩れる。マコトは闇の腕で死神スクラップを振り上げ、見据えた方向に投げつける。
その先には――
「うわぁぁあ!!」
「キャーー!!」
国民。
マコトは、やはり人間にも魔物にも無差別攻撃を仕掛ける暴走状態なのだ。
「〈アイス・ウォール〉!!」
「ルーク様!?」
「ひぃ、助かったぁぁ!」
氷の壁を張り、スクラップから国民を守ったルーク。
腹を括らねばならなかった。
「ラムゼイさん達も何とかしなければなりませんが、その前にあなたを止めないといけま……え?」
覚悟を決めたその時、ルークの背後の地面から闇の腕が生えてきた。
――ドゴッ!!!
「びッ!?」
気づくのが遅れ、顔を殴られる。叩きつけられた地面も抉れる威力。
「……い……いきなり酷いじゃないですか……ではこちらも。〈アイス……」
「おったまげ〜〜〜〜!!!」
――ドゴゴゴゴゴゴッ!!!
「ッ!? ごぶがばがはァッ!?」
魔法を発動しようとしたのに、四方八方から殴られ叩かれ、キャンセルされてしまった。
鼻からも口からも血を噴きながらルークは、
「ガフッ……わ、かりましたよ……やってくれましたね。僕にだって、考えがあるんです……そちらがその気なら……容赦しません」
ブチギレである。
再び四方八方から闇のパンチが迫るところ、ルークは杖に全体重を預け、静止。
世界がスローモーションのように感じられ、
「〈氷結の悪魔〉」
強制支配魔法。
一流の魔術師ルークならダンジョンの外でも、空気中の魔力を利用して発動する方法が何となくわかったのだ。
闇のパンチが全て凍りつき、周囲の民家ごと塵となって消し飛ばされる。
付近一帯のみ吹雪が吹き荒れ始める。
「ゴォオオオオ……!!」
白い息が牙だらけの口から放たれる。
虚ろな目、氷の角、氷の翼、氷の爪、氷の尻尾、全身を覆う鎧のような分厚い氷。
今度は片側だけでなく……全身。
つまり、
「……ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」
ルークまで暴走状態に突入。
巨大な氷の拳が空中に現れて、余裕しゃくしゃくでホバリングするマコトへ一直線。
「ん?」
その『魔王』の顔面に、
――バキィィッ!!
「ほブ!!!」
氷のパンチがブチ込まれる。
暴走と暴走がぶつかる、カオスバトルの開幕だった。




