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シャワーの蛇口をひねりお湯を出す。自分の浴室とは違った気がして落ち着いてシャワーに浴びられない。なんだ、これではまるで童貞の様ではないか。高校生の頃は何度か女性と交わったことがあったがそれとは違う感じがする。そんなことを考えながら頭を洗う。普段より念入りに体を洗い浴室を出る。スマホの画面を確認し0時に設定しておいたリマインダーの『始末書』という現実から目をそらす。『0:26』時間を確認して髪を乾かし彼女の下へと足を運ぶ。彼女を確認すると僕の服を僕よりも着こなし人の布団で寝息を立てている。『据え膳食わぬわ男の恥』自分の心に言い聞かせゆっくりと彼女(僕)の布団へと入る。先ほど嗅いだ浴室の匂いよりも濃い匂いが僕の鼻に伝わってくる。ゆっくりと彼女のほほに手を添える。少し唇を突き出し彼女も応える。「寝てたんじゃなかったのか?」そっと囁き彼女の唇にキスをした。-
さっぱりとした朝を迎えた僕はスマホの画面を確認して青ざめる。『7:36』またやってしまった。飛び起きて支度を始める。しかし改めて考える。今日は土曜日ではないか。机の上を確認すると『昨日はありがとう。お昼は予定があるからまた夜に遊びに来てもいい?連絡待っているね♡』いかにも女性が書いたような字のリア充宣告のメモ紙を見つける。にやける顔を正し、連絡をしようと電子の板を持ち上げる。『ブブッ』電子の板からは絶望を告げる声がするような気がした。深呼吸をしてスマホのロックを解除する。『課長とゴルフの約束』…リマインダーというものは便利だ。忘れっぽい私には不可欠のものだ。しかしいっその忘れたままにしてくれていた方が良かった。支度は出来ている。何ならシャワーのおまけつきで間にあう。「ふぅ…」一息置いて仕事の準備を始める。