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04

「編入生を紹介する」


新年度が始まり最初の日。

教壇に立った教師の声に教室内がざわめいた。


この学園は十五歳から入る事になっているけれど、家の都合で前後の年齢で入る者も多い。

だから二年目から入るのは他国からの留学生くらいで、編入生というのはとても珍しいのだ。


「彼女は去年まで平民の学園に通っていた。主席だったためここでは二年生に入る事になったのだ。———入りなさい」

「…はい」

教師の声に、愛らしい声が応えた。



私は斜め後ろの席から殿下の様子を見つめていた。

初めは興味なさそうだった殿下だったけれど…教師の隣に立った彼女が伏せていた顔を上げた瞬間。

黒い瞳に光が宿るのを見た。


「ガーネット・ロジエです。…慣れない事ばかりでご迷惑をおかけすると思いますが…よろしくお願いいたします」

その光を見届けて、私は声の主を見た。


花びらのような柔らかなピンクブロンドの髪。

白い肌に甘さを想像させる、ふっくらとした唇。

そして何よりも…引きつけられるのは、紅い宝石のような大きな瞳。


ああ…良かった。

『彼女』は存在したのだ。



私や殿下が前世で読んだ漫画の登場人物と同じ名前や容姿でも、中身や関係性は漫画とは異なっていた。

だからヒロインである彼女がいるのか…本当にこの学園に来るのか不安だったけれど。


確かに彼女、ガーネットは漫画のヒロインそのものだった。





「殿下」


編入生の紹介からそのまま続いた座学が終わり、立ち上がった殿下の側へ行く。

殿下を見上げて…それから、意味ありげに視線を彼女へ送る。


そうして再び視線を戻すと、殿下は眉根を寄せていた。


「綺麗な宝石でしたわね」

そう言って首を傾げてみせる。


目の前の瞳に浮かぶのは、困惑と好奇心…そして、ほの暗い光。

「きっと、あの宝石はまだ誰のものでもありませんわ」

私の言葉にゆらりと瞳に浮かんだのは…おそらく、喜び。



「…君は…知っていたのか」

彼女が現れる事を。

彼女がもたらすものを。


「さあ…どうでしょう」

知ってはいるけれど、その先にある未来が望み通りになるかは分からない。


けれど。



シナリオなど、これから作ればいい。

それを作れるのは、きっと私。


だって私は悪役令嬢なのだから。


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