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白き勇者は黒き王子へ復讐を挑む  作者: 鴉野 兄貴


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8/13

傷を癒す秘密の方法 一流だけが学べるその内容とは

 商人が馬車を操るそばで盗賊が字を教えてくれとせがむ。

 ぼくは傷も癒えていないのに困ったことだ。


 揺れる馬車の中で舌をかまないようにつっかえないように話すぼくと子供のように続きをせがむ彼。


「女性しかいない島の伝説、女性のみの国や村の物語は多く」


 なんだろうこれ。占い師の文字なのは間違いないが。

 胸をなぞりながらぼくは想う。彼女がぼくの胸に刻んだ文字のことを。

 夢枕に彼女が謳った伝説を。


「女ばかりの村なんて珍しい話じゃねえっすよ。おれっち達の界隈でもありますぜ。献身的でアレも上手な不老長寿の女たちが尽くしつくしてくれるそういう話がありまして」

「どこにでもある下世話な話だね。その世界に行った男たちは二度と戻らなかったとか」


 脳裏に母とあの子、そして占い師の顔が交互に浮かんだがぼくは首を振って妄想を振り払う。

 占い師が胸に刻んだ爪痕はもうないが、ぼくと彼女たちを縛る誓いはまだ残っている。


「しっかしあれっすね。兄貴」

「どうしたの。早く寝なよ。ぼくみたいにおなかに大穴が開いたわけではないでしょ」


 冗談を言える程度には傷も回復したらしい。

 戦士の用意してくれたジンタンなる薬は格別に効いた。


「数日でおなかがふさがるわけないでしょ兄貴」


 盗賊は呆れていたが実際ふさがったのだから仕方ない。

 戦士も不思議がっていたが、商人の警告で僕らは剣を抜き放つ。

 馬車に襲い掛かる魔物を迎え撃つぼくら。


 王都に向かう旅程で人食いの魔物が増えている。

 商人が杖を振るい、戦士が大斧で薙ぐ。盗賊の投げる短剣は確実に敵の動きを止めていく。


 大きなカエルと人との混合のようなバケモノ。

 鳥の声を放つ猫と蛇の合わさったような魔物。

 人と蜘蛛が合わさったような魔物。


 どれも伝説にしか聞いたことのない人食いの魔物たち。



「騎士達も苦戦しているようだね」


 商人が呟き、スタッフスリングを兼ねた杖の先で指し示す先には車輪を思わせる紋章が描かれた鎧とそれを着た骸骨。

 銃を撃ち尽くしたと思しき骨は半分以上溶かされている。


「内臓が食い尽くされている」


 商人が呟く。


「ぞっとしねえなぁ」


 盗賊がふざけている。


「我々と魔物、ここまで治安が荒れれば外国や山賊まで出るだろう。黒太子も大変だな」


 いわゆるテロリストである私に付き合う商人はさておき、王国に仕えていた戦士。

 一介の泥棒に過ぎなかった盗賊には悪いことをいたかもしれないが、彼らはぼくに付き合ってくれるらしい。


「そりゃ、妻子を人質にとられていますし」

「まぁお前はほうっておくと何をするかわからないから」

「兄貴一人で何をするのです。あれっすか。オ〇ニーすか」


 占い師と踊り子を取り戻さねばならない。

 悪態をつきあいながらぼくらは旅を続けることにした。


「おいしそうっすね」

「何を言っているのだお前は」

「魔物を食うとか非常識にも……」


 おいしそうだ。


 倒した魔物を眺めながらぼくらは唾を呑む。


 特に内臓を食べたい。

 傷に効くかも知れないじゃないか。


 戦士が皮をはいでいく。

 盗賊が恐る恐るカエル人間もどきの内臓を穿り出し、商人がスパイスを取り出してくれた。


「うまい」

「マジ旨いっす」

「すっげーうめえ」

「本当においしいですね」


 肉を食い終わったぼくらの周りで、今まで見なかった人間の死骸が増えた気がする。

 処理したはずの魔物の死骸はどこかに消えていた。


 たぶん小型の魔物が食べていったのだろう。夢中で食べていたから気付かなかった。大型の魔物が食事中に近づいていたなら危なかっただろう。

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