あなたの未来を占う ダントツの仲間たちが待っている
占い師の女性と踊り子の女性はぼくを大人にしてくれた。
先日ぼくは獅子の魔物が出るという町にてぼくと志を同じくする双子と出会った。
魔物に殺された父の仇を討つために旅立ったという二人とぼくは実に話が合った。
双子でありながら占い師の女性は非常に外交的であり、踊り子の女性はその生業に反して実に貞淑な性質の持ち主である。
『人に化けていた』魔物を無事討ち、一杯を勧められた挙句気づいたら一服盛られて占い師と褥を共にしてしまう程度には。
朝になると裸の女性とあられもない姿のぼく。
濡れて干されたぼくの一張羅が宿の窓から垣間見えた。
妹である踊り子は激怒していた。『露出度が高いくせに妙に生真面目で』占い師はぼやくと踊り子は『仕事の服と普段の生活は関係ない』と文句を言い。
「こういうのは早い者勝ちよ。だってイケメンだし」
「姉さん! 不純よ! 不潔よ!」
洗濯されてしまった服も着れずにシーツを身体にまとって縮こまる僕を尻目に姉妹は激論を交わしており。
ほとんど意識も記憶もないが、あの夢だか現だか分らない、あの子とも致したこともなかった事柄は全て事実のようでありぼくはあの子に対する罪悪感と占い師に対する複雑な感情、くってかかる踊り子に対する不思議な思いに飲んだこともない酒への渇望を感じていた。
騒ぎを聞きつけ仲裁してくれたのは偶然隣部屋に泊まっていた商人と旅の戦士である。
護衛として戦士を雇い、たった二人で行商をしているという商人は実に愛想の良い男で弁が立ち、姉妹のこじれを仲裁してくれた。
元々仲の良い姉妹であり、二人は視線を時々逸らしあいつつも一緒にぼくらと同じテーブルについている。
なお、戦士は裸を見たということで占い師に殴られた。ぼくは大丈夫だったので少し申し訳ない。
服が乾いたのは良いが泥棒が持っていった。
その泥棒を捕まえてくれたのも戦士である。
戦士と商人は泥棒を引き連れ、ぼくらの宿にて服を返してくれた上泥棒を如何にするか問うてきたがぼくとしては服が戻ればそれでいい。
釈放してやると泥棒はぼくについていくという。
この泥棒は次の街に向かうための洞窟にて活躍してくれ、ぼくらに馬車をもたらしてくれた。不思議な縁に感謝している。
黒太子を討つというぼくの目的を聞いた彼らの反応はさまざまであった。
姉妹は意外とあっさりと同調してくれた。曰く、父を殺した魔物と黒太子はなんらかの関係があるに違いないという。
商人は複雑そうな顔をしていたが、通報はしないと約束してくれた。
戦士ははっきりと不快感を表にだしていたが、あえて口には出さなかった。
泥棒は黒太子さまを討つなどとんでもないと意外にもはっきり反対意見を出した。
黒太子は人気があるらしい。それは姉妹のように異国の血を引くもの、商人のようなよそもの、戦士のような異種族の血を引くもの、泥棒のような貧しいものにも慈悲のこころで接してくれるからだという。また、婚約者の頼みを聞く形で親のいない女性たちに教育を授けたという。
黒太子は善人か悪人か。ぼくらの中で意見は分かれた。
ぼくは彼が善人であるという話は疑問を抱かないわけにいかない。しかし皆は『確かめてみるべきだ』という。
ぼくらは彼の婚約者である女性が運営するという学校がある街に向かうことにした。