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今ならそっと教えてあげる 男同士がキスして許してもらえる方法

 ぼくは不思議な生き物を見かけた。

 躊躇なく弓をひく。彼らは武装していて、その足取りはぼくらの住む小屋に向かっていたからだ。

 そしてその会話内容は明らかに僕らに利益をもたらすものではない。

 ぼくは『なぜか』彼らの言葉を理解できた。


「餓鬼族だな。今どき珍しい」

「がき……犬頭鬼もそうだけどおとぎ話にしか出ないと」


 ぼくはその子供くらいの大きさの生き物の死骸を改めて確認する。

 そういえば村の住民にもいたかもしれない。自然すぎて気にもとめなかったが。


「『車輪の王都』には多少いるのだが、もう少し文明的でな。毒や骨折による奇形や障害を楽しみ尊ぶ珍奇な性質をもってはいるが概ね一般的な人間より知能は高く、その治金術やきんじゅつや商売の巧みさには定評がある。とはいえ商会を作るのは嫌い家族単位で行動するらしいが……このように野でくたばる生き方を選ぶ輩もまだいるようだな」


 ぼくの知る我が……いや、もう敵だな。樵の男曰くかの『車輪の王国』は女や異種族でも能力や人格次第で厚遇するというのはうそではないらしい。それは王位継承者である『黒太子』の方針でもあるという。


 ならばなぜ、無害なぼくらの村を襲ったのだろう。ぼくから父を、母を、あの子を奪ったのだろう。


「教会の力が最近強まって、異種族や女は住みにくい世の中になりつつあるからなぁ」


 樵の男は複雑そうな顔をして見せようとしたのだろう。妙な顔になっていてぼくは久々に笑うことができた。


「なんだ。ガキ。てめえそんないい顔できるのかよ」



 樵曰く、「仕官するなら『車輪の王国』『我が国』『緑の大地』が良いぜ」だそうだ。

 女も魔法使いも占い師も異教徒や異種族ですら分け隔てなく受け入れてくれるからだそうで、世界一の国であるだけのことはあるそうだ。


「だが、連中は、特に『黒太子』はあの子の仇だから」

「うーん。うーん。俺が歓迎したあのガキンチョどもが『黒太子』だとするならば何かの間違いだと思うが、坊主が嘘つくタマにも見えねえからな」


 とにかく僕は旅立ちの用意を整えることに成功した。

 背中には背嚢と盾と剣。腰には短銃。食料と水をもって。


「いやあ。二人いたから冬越しの用意がはかどった。お代はタダでいいぜ」


 ありがとう。師匠。

 ぼくは彼の頬にキスしてやった。


 彼は男にキスされたことに大変不満足そうで嫌がりつつも大いに照れた様子で僕の旅立ちを見守ってくれた。


「またこいよクソガキ!」

「ああ! 絶対戻ってくる!」


 ぼくは旅立つ。


 黒太子。君を殺すためだ。

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