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第92話 1対多③

「「ハッ!!」」


「フッ!」


 敷島兵の2人が、ほぼ同時に限に襲い掛かる。

 2人からの攻撃を、限は盾にするようにして樹木の背後に回り込む、


「だったら……」


 樹の裏に隠れたくらいで、回避しきれたわけではない。

 だったら邪魔する樹ごと始末してしまおうと、敷島の2人はそのまま斬りかかる。


「「ハッ!!」」


“ドサッ!!”


 2人の攻撃により、樹が斬り倒される。


「っ!!」「いない!?」


 これで隠れることができなくなった限を斬り殺そうと、敷島の2人が刀を構えるが、肝心の限の姿がない。

 いつの間に移動したのかと周囲を見渡すが、どこにも見つからない。


「上だ!!」


「何っ!?」


 樹を斬った2人が限の見失っていると、他の敷島兵が声を上げる。

 その声を聞いて、2人だけでなく他の敷島兵たちも視線を上に向けた。


「いたぞっ!!」


 太陽の光によってなかなか見つからないでいた限の姿を発見した1人が、上空を指差す。

 多くの視線が向かった先には、刀に魔力を溜めた限がいた。


「まずい!!」


「迎撃……!!」


「そんなの間に合わん!!」


 限の姿を確認した敷島の者たちは慌てる。

 あの状態の限が次に何をするのかをすぐに理解したからだ。

 自分たちも跳びあがって迎撃をするという選択肢が浮かんだが、すぐにそれを否定する。


「ハーッ!!」


 魔法を放つには溜めが必要で、それはどんな達人であろうと一緒だ。

 しかし、溜めの時間を短くすることはできる。

 その方法は、魔力のコントロールを徹底的に鍛えることだ。

 人体実験による副作用で魔力を感じることが出来るようになった限は、魔力を感じる力は誰よりも上だ。

 その魔力感知を使用してのコントロール訓練により、限の魔力操作は天下一品まで高められている。

 つまり、他の敷島の者たちが迎撃をするよりも、限の攻撃の方が早く発動する。


「グアッ!!」「うわっ!!」「ギャー!!」


 上空から刀を振り回すことにより、限は魔力の斬撃の雨を地上にいる敷島の兵たちに降らした。

 その斬撃により、多くの敷島兵たちが怪我を負う。


「くっ!」「このっ!」「っと!」


「チッ!! やっぱり大量にとはいかないか……」


 斬撃により怪我を負う敷島の兵たちがいるのとは反対に、斬撃を防いだり躱したりする者もいる。

 むしろ、7割は後者だ。

 ぜいたくを言えば半分くらいは戦闘不能に持ち込みたかっただけに、限は思わず舌打ちをした。

 しかし、それも予想の範疇。

 敷島の者なら、あの状況で咄嗟に防御や回避に意識を向けるのが当然。

 攻撃を受けた者は、実力不足と言った方が良いだろう。


「でも、少しは減らせたか……」


 希望通りとはいかなかったが、実力不足や防御下手を潰せた。

 そんな者たちでも、居れば数となり力になる。

 近接戦で役に立たないまでも、魔法による援護で邪魔をしてくるかもしれない。

 数を減らしたことで、その危険性を多少は回避できたため、限はひとまず良しとした。


「野郎!!」


「今のうちに囲め!!」


 攻撃を終えて落下してくる限。

 その間に、攻撃を防御・回避した敷島兵たちは、周りを囲みにかかる。

 

「フッ……狙い通りだ」


 このまま地上に降り立てば周囲を敷島兵に囲まれ、限でも無傷では済まないかもしれない。

 にもかかわらず、落下しながら笑みを浮かべた限は、小さく呟きつつ敷島兵の集まる地上に刀を向けた。


「発動!!」


「「「「「っっっ!?」」」」」


 限の言葉と共に地面に魔法陣が浮かぶ。

 突然のことに、さすがの敷島兵たちも驚きで目を見開く。


“ズドンッ!!”


 浮かび上がった魔法陣が、大爆発を起こす。

 それにより、限の周囲を囲むために集まっていた敷島兵たちが吹き飛んだ。


「くっ! 思ったより爆風が強かったな」


 ここまで、限はただ無策で動き回りながら迎撃をし続けていたのではない。

 動き回りながら、地面に少しずつ魔力を設置していたのだ。

 どんなに限が強くても、増え続ける敷島兵相手に逃げ続けることができるわけがない。

 いつか囲まれてしまう。

 しかし、その時は逆に自分にとってもチャンスだ。

 敵が一ヵ所に集中しているということなのだから。

 そのため、用意していたのが爆撃だ。

 その爆撃により思っていたよりも熱風が巻き上がり、それを受けた限は手で顔を覆った。


「がっ……」「うぐ……」「うぅ……」


 爆撃によって巻き上がった土煙が治まると、そこはまさに死屍累々といった状況になっていた。

 大量の敷島兵が爆発によって怪我を負い、五体満足で生き残っているのは数えきれるくらいしか存在していなかった。

 そういった者たちは、魔法陣の外側にいたのだろう。

 魔法陣の中心にいた者たちは僅かな肉片だけ残して、跡形もなく吹き飛んでしまったようだ。


「あっ! 刀……、まあいいか」


 殺した敷島兵から刀を奪う。

 限はそれを密かに楽しんでいたのだが、爆撃によって刀までもが持ち主と共に吹き飛んでしまった。

 全員の刀を手に入れなければ気が済まない。

 などというほど完全主義者じゃないため、限は仕方ないことだと諦めた。


「さて、生き残っている奴らを仕留めるか……」


 残っている敷島兵は、全体の2割程度。

 その程度なら、囲まれずに戦うことも難しくない。

 しかも、そのほとんどが怪我をしている。

 そんな相手が自分に脅威を与えることはできないと、限は自信をもって仕留めにかかることにした。


「っっっ!?」


“ゴウッ!!”


 生き残った者たちを仕留めようと足を踏み出そうとした時、限は強烈な殺気を感じ、その場から跳び退いた。

 跳び退いた瞬間、先程まで限のいた場所に巨大な火球が落ちてきた。

 もしもあのまま回避に移っていなかったら、限は消し炭になっていたことだろう。


「貴様……よくも我が兵をやってくれたな!?」


 火球が飛んできた方角に視線を向ける限。

 すると、こめかみに青筋を立てた菱山源斎がゆっくりと限へと向かってきていた。

 仲間を大量に殺されて、完全にお冠のようだ。


「おぉ! 大将のお出ましか……」


 元々、限はここにいる敷島兵を皆殺しをするつもりでこの戦いに参戦した。

 大将である源斎の殺害も、当然その計画の1つだ。

 まだ生き残っている敷島兵がいるが、源斎の相手をするのが優先だ。

 自分の父である斎藤家当主の重蔵。

 それと同等の実力を有すると言われている源斎と戦える良い機会に、限は嬉しそうに笑みを浮かべたのだった。



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