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第41話 レラの戦い

「「「「「ギギッ!!」」」」」


 洞窟から出てきたネズミたちは、限たちの姿を見て睨みつける。

 煙を洞窟内へ入れていたのが、限たちだと気付いたからだろう。


「危ないと判断したら手を出すからな?」


「はい!」


 こちらへ向かって来ると判断した限と従魔たちは、レラを置いてその場から距離を取る。

 レラ自身が1人で対処するといったため、任せることにしたからだ。

 しかし、数が数なので、もしもの時は介入することだけは告げておいた。

 任されたレラは、力強く返事をして杖を構えてネズミたちとの戦いに挑むことにした。


「ギギッ!!」


「ハッ!!」


 最初に襲い掛かってきたネズミを躱し、レラは杖を使った棒術で戦う。

 思いっきり脳天を叩いて動けなくする。


「っ!!」


 大量に敵を相手に棒術で戦うなんて無謀もいいところだ。

 次々襲い掛かってくるネズミたちを目にし、レラはすぐに魔力を温存している場合でないと理解した。


「風刃!!」


「ギャッ!!」「ゲッ!!」


 向かって来るネズミに対し、魔法による風の刃を飛ばす。

 その魔法により、ネズミたちの数体が一辺に細切れの肉片へと変化した。


「っ!! 退かない!!」


 仲間の数体が一辺にやられたというのに、ネズミたちは全く怯まない。

 そんなことお構いなしと言うかのように、レラへ向かって襲い掛かっていく。


「ギッ!!」


「危なっ!!」


 次の魔法を放つための魔力を溜めるためにネズミから距離を取ろうとするレラだが、ネズミたちが追いかけてくる。

 距離を取ることができず、ネズミの前足による攻撃がレラへと迫った。

 それをレラは何とか躱したが、その間にネズミたちに囲まれてしまった。


『わざわざ止まって魔力を練っていたら間に合わない!!』


 元々は聖女見習いとして回復魔法だけしか練習してこなかったが、限の指導で色々な攻撃魔法を覚えることができた。

 しかし、これまでこんな多くの敵と対峙するようなことがなかったため、いつもは止まった状態で魔力を練って攻撃をすることしかしてこなかった。

 そのため、止まってないと魔力を練るのが普通になってしまっていたが、この状況ではそんなこといちいちしている時間はない。

 そのことをようやくいま理解した。


「まずいか……」


 離れた場所の木の上からレラの戦闘を眺める限。

 レラが気付いたことは、限はとっくに見抜いていた。

 戦闘慣れしていないせいというのもあるのだろうが、魔法の威力は良くなっているのに止まっていないと魔法を使えないのでは意味がない。

 それが分かっただけでも、今回レラに戦いを経験させられて良かったかもしれない。

 しかし、それも今では危険な状態になってしまった。

 そろそろ自分たちが出ていった方が良いだろうと、限は刀の柄に手を置いた。


「旋風!!」


 限たちが援護に向かおうとしたが、レラはまだ諦めてはいなかった。

 習った攻撃魔法の中でも特に風系統が特に得意だと認識していたレラは、風の魔法を重点に使って戦うことを決意した。

 溜めた魔力を使って、自分の周囲に風を巻き起こす。

 それが防御となるように、レラへと近付いたネズミが風に巻き込まれて上空へと吹き飛んだ。


「ギギッ!!」


 高く打ち上げられたネズミは、地面へと落下する。

 落下によるダメージを受けているが、死に至るような怪我ではないようで、すぐに立ち上がりまたレラへと向かってきた。


「空圧砲!!」


 旋風の魔法で敵を寄せ付けなくし、レラはその間に次の魔力を練っていた。

 空気を圧縮した弾を飛ばすイメージによって放たれた空気砲弾により、レラの正面の一線上にいたネズミたちが抉り飛ばされるように肉片をまき散らした。


「上昇!!」


 やはり、止まった状態ならかなりの威力の魔法を撃つことができる。

 しかし、それでは今後の戦いで限の足手まといになる。

 そう判断したレラは、動きながら魔法を放つことを始めることにした。

 まずは、囲まれている状況から脱出するため、魔法で風を放って上空へと跳び上がる。


「竜巻!!」


 上空へ飛び、落下する前に魔力を練る。

 そして、落下を始めてネズミたちのいる地面へと近付くのを見計らって魔法を放つ。

 自分の体を浮かして着地する目的と共に、竜巻の魔法によってレラの落下地点に集まっていたネズミたちが吹き飛んだ。


「風刃!!」「風刃!!」「風刃!!」


 周囲に敵がいなくなった場所へと着地したレラは、間髪入れずに魔法を連続発動する。

 止まっていてはまた囲まれてしまう。

 そう考え、動きながらの魔法だ。

 その風の刃により、ネズミたちが細切れへと変えられていくが、止まった状態ではなったのよりかは威力が落ちる。

 そのため、風刃一発で2、3匹しか倒せず、段々と迫り来るネズミとの距離が詰まってきてしまった。


「ギッ!!」


「クッ!!」


 とうとう追いついたネズミが、レラを捕まえようと前足を伸ばしてくる。

 それが肩を掠り、レラの服が少し破れた。


「ハッ!!」


 このままではまた囲まれてしまう。

 そう思ったレラは、風魔法を利用して移動速度を上昇させる。

 初めて行使した魔法に少しバランスを崩しながら、レラはネズミたちから距離をとることができた。


「空圧砲!!」


 距離が開いたことにより、レラへと迫るネズミたちは列をなしていた。

 一直線上の敵を殲滅する魔法。

 それをネズミたちへと放ち、レラは一気に敵を減らすことに成功した。


「ハァ、ハァ、ハァ……」


 戦い始めて魔法の連発使用。

 魔力の消費を考えないで戦っていたため、レラはあっという間に息が切れた。

 数百の敵を倒したというのに、まだ多くの頭数が残っている。

 額に掻いた汗をぬぐい、再度接近してくる敵に向けて魔法を放つための魔力を練り始めた。






「ゼェ、ゼェ……」


 レラがネズミの魔物たちの相手を始め、しばらく経った。

 魔法を連発し続け、ようやく殲滅の終わりが見えてきた。

 しかし、魔力を使い続けたことによる疲労で、レラは呼吸が荒く顔色が悪くなっていた。

 残りの魔力も尽きる手前まで来ていた。


「っ!!」


「ガアァーー!!」


 残り僅かのネズミを倒すために、懸命に魔力を振り絞る。

 しかし、その時洞窟から巨大な生物が出現してきた。

 そして、他のネズミを下がらせ、自分が相手をすると言わんばかりにレラへと視線を向けた。


「……で、でかい……」


 出てきた巨大な生物はネズミたちの変異種らしく、像並みの大きさで多くの魔力を有していた。

 万全の状態のレラでも、倒せるか分からないような存在だ。

 今の魔力切れ寸前のレラでは勝てるとは思えない。


「ガアァーー!!」


「ストップ!!」


「っ!! 限様……」


 疲労困憊のレラへ向けて、巨大ネズミが襲い掛かろうとした。

 逃げることもできずにいたレラを見兼ね、限が横から参戦した。

 真横からの限の蹴りで、顔面に受けた巨大ネズミが吹き飛ばされて行った。

 数度地面を跳ね、巨大ネズミは何とか体勢を立て直した。


「レラ、ここまでだ!」


「……はい」


 今回は自分一人で依頼達成をしたいと思っていたのだが、あんな巨大ネズミ相手と戦えるほど魔力が残っていない。

 これ以上は戦えないと判断し、限は代わりに残りを請け負うことを告げた。

 その判断に反論できず、レラは表情を暗くしながら頷いた。


「ガアァッ!!」


 蹴られた痛みに、怒り心頭に発するといった感じの巨大ネズミ。

 怒りに任せ、限に向かって襲い掛かっていった。


「でかいだけのネズ公が……」


「っ!!」


 向かってきた巨大ネズミに対し、限が腰に差した刀を抜く。

 その抜刀一振りで、巨大ネズミの首が斬り落とされた。

 あまりにもあっさりと倒したため、レラは改めて限の強さを知ることになった。


「よしっ! 魔石とって町へ向かうか?」


「……はい」


 残っていたネズミの魔物は、白狼のアルバと亀のニールが倒してくれていたようだ。

 それを見た限は、戦闘終了を確認し、予定通り次の町へと向かうことにした。



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