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第40話 変異種

「ハッ!!」


「ギャッ!!」


 一角兎の角による攻撃を受けないようにするため、レラは横へ動きつつ杖を振り下ろす。

 その攻撃を受けた一角兎は、悲鳴と共に吹き飛ばされて動かなくなった。


「ハァ、ハァ……」


「大丈夫か?」


「フゥ~……、はい。大丈夫です」


 弱い魔物ばかりだとは言っても、さっきから次々現れている。

 限の指導により魔力の温存をしつつの戦闘をしているのだが、こうも頻繁に出現すると体力の方に影響が出てくる。

 レラの強化が目的のため、限たちが強力をしていてないのもあって、動きっぱなしのレラは息切れをしていた。

 動きは悪くないが、体力の方がまだまだのようだ。

 確認のための限の問いに、軽く額の汗をぬぐって深く息を吐いて息を整えたレラは、笑顔で答えを返した。


「それにしても本当に多いな……」


 レラの様子も大丈夫そうなので、このまま森の探索を続けることにしたのだが、魔物が出現しすぎだ。

 弱い魔物だからこそ繁殖力が高いとは言っても、ここまでひっきりなしに出現してくるのは違和感を感じる。


「何か変異種でもいるのかもしれないな……」


「変異種……ですか?」


 元々ここの森は弱い魔物しか出現しないという話だが、ここまで出現しているというのは少しおかしい。

 何かしらの原因があると考えられる。

 こう言った場合、魔物の中に変異種が現れた場合が多い。

 ゴブリンなら、ゴブリンジェネラルやゴブリンキングなどと言った上位個体の出現によって、巨大な集落を形成するという可能性がある。

 その場合、森に住む他の種が逃げるように森の外へと向かい、人の目につくようになる。

 限たちの前に現れ続けている魔物たちは、そう言った逃げてきた種の方なのかもしれない。


「もう少し進めばわかる。注意して進めよ……」


「はい!」


 今回はレラがメインに戦うことになっているので、警戒はしているが広範囲の探知はしていない。

 どんな魔物の大繁殖なのかは、もう少し行った森の奥に入ればわかるはずだ。

 相手次第では危険な目に遭うかもしれないため、限はレラに注意を促しておいた。

 レラは限に心配されているのが嬉しいのか、笑顔で返事をした。


「っ!?」


 森の奥へと進んでいると、レラは急に足を止める。

 何か魔物がいるのを感じ取ったようだ。

 範囲は広くないが、探知の魔法も使えるようになっているようで、限は静かに感心していた。


「スコルピオーネ!?」


「しかも大軍だな……」


 小型犬ほどの大きさのサソリが、地面を埋め尽くすように迫ってくる。

 この魔物も1体だけならたいして危険ではないのだが、こうも大量に出現すると苦労しそうだ。


「こいつらの尾には毒があるから気を付けろよ」


「はい!」


 探知ができているのだから恐らく分かっているとは思ったが、限は念のため忠告しておく。

 この魔物は尾の先の針を敵に刺し、毒で動けなくしてから獲物に食らいつくのが基本的なパターンとなっている。

 限の忠告に、レラは頷きながら返事をした。


「風刃!!」


 この大軍相手に打撃戦闘はあり得ない。

 一気に倒すために、レラは魔法で攻撃をする事を選択した。

 レラの風の刃による魔法攻撃で、サソリたちはバッサバッサと斬り裂かれて道をつくるように死体が転がった。


「竜巻!!」


 結構な量のサソリを倒すことに成功したが、まだまだ大量の数が残っている。

 なので、レラは更に魔法を放つ。

 魔法による小さい竜巻を作り出し、レラたちの側にいたサソリたちを巻き込んで行った。

 巻き込まれたサソリは竜巻内で切り刻まれ、魔法が終息した頃には、ほとんどのサソリたちが生命としての活動を停止していた。


「フゥ~……、どうやらここら辺の魔物は倒せたようですね……」


「あぁ……」


 魔法の連発で軽く疲労を感じたのか、レラはまたも汗を拭きつつ息を吐きだす。

 僅かに生き残っていたサソリたちは、瀕死の状態でいたのでキッチリ杖を突きさして仕留める。

 これでとりあえず周辺の魔物は倒せた。

 一安心しているレラとは違い、限はこの先の魔物が何なのかの探知を始めた。


「この先に変異種がいる。少し休憩して出発しよう!」


「はい……」


 探知をしたことで、限はこの先どんな魔物が待ち構えているか分かった。

 魔法連発による疲労感が抜けるまで少し休憩し、それからその変異種に挑むことにした。

 限とは違い、そんなに広範囲の探知ができる訳ではないレラは、どんな変異種が待ち構えているのかと緊張したように返事をした。






「……あそこですね?」


「あぁ……」


 休憩後に少し進むと、少し開けた場所へとたどり着いた。

 そこには土を固めて作り出したような巣穴がある。

 恐らくその中に魔物たちが潜んでいるのだろう。

 森の樹の影に隠れながら、レラと限は小さい声で話し合っていた。


「何の魔物でしょうか……?」


「少し待ってみよう」


「はい……」


 もしも変異種の出現で勢力が変わっているとしたら、仲間も多くいるはずだ。

 そんな魔物がいるのかを確認するために、レラたちはこのまま少しの間様子を見ることにした。


「来た!」


 レラたちが物音を立てずにそのまま巣穴を眺めていると、レラたちとは反対側の方から物音がしてきた。

 どうやら外に出ていた魔物が住穴に戻ってきたようだ。


「……トーポ?」


 草をかき分けるように姿を現したのは、中型犬くらいの大きさをしたネズミの魔物だった。

 何でも食べる雑食の魔物で、大繁殖を起こすと人間だけでなく動物や魔物を食い散らかすことになるだろう。

 あの巣穴の中にどれほどの数のネズミが住んでいるのかは分からないが、周辺の町に攻め込んでくる前に叩き潰しておいた方が良いだろう。

 そのため、レラたちは今後の戦い方をどうするか決めていた。


「焚火をして軽い風魔法で洞窟内へ煙を流し込みます。それで飛び出してきた魔物を入り口付近に作った落とし穴に落として仕留めるというのはいかがでしょう?」


「じゃあ、落とし穴は俺が作ってやろう!」


「お願いします」


 巣穴の中がどういう形になっているか分からないが、煙が中に入って来たら外へと逃げ出そうとするに違いない。

 逃げだしてきた魔物を捕まえるために、限は落とし穴の設置を始めた。


「始めます!」


「了解!」


 合図と共に、レラは火魔法で薪に火をつける。

 そしてその煙を風魔法を使って巣穴に向かって流し始めた。


“ドドドド……!!”


「こ、これは……」


 少しの間ネズミが出てくるのを待っていると、段々と地面が揺れるような振動が伝わってきた。

 その音が聞こえてくるのは巣穴の中からだ。

 つまり、この振動を作り上げているのは……。


「「「「「キシャー!!」」」」」


 巣穴の中にいたネズミたちだ。

 煙の侵入により、我先にといわんばかりにネズミたちが出口へと殺到してきたのだ。


「ヤバいな……。予想以上の頭数みたいだ」


 何の魔物が潜んでいるかは探知していたが、頭数までは数えていなかった。

 予想以上の数により、限が作った落とし穴ではすぐに溢れてしまい意味をなさなくなてしまった。


「レラ、少し減らすから……」


「いいえ! 限様、私が1人で対応します!」


 巣穴からはまだ続々と外へと向かって来ている。

 恐らく、とんでもない地下深くまで巣穴が広がっているのかもしれない。

 このネズミの大繁殖が、森の魔物が人間に目撃される原因だったようだ。

 さすがに数が多すぎるので、限はレラを控えさせてネズミを間引こうとした。

 しかし、レラを控えさせる言葉が言い終わる前に、レラは自分から意見を述べる。


「……そうか? じゃあ、任せる」


 指示に従うのではなく、珍しくレラが自分から言い出したことなので、限はできる限り任せることにした。



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