表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/179

第27話 それぞれの動向

いつもの曜日に書いていたら終わり直前に全部消えてしまいました。

ほとんど書き直しはきつい。

「よくお越しいただいたオリアーナ殿!」


「ありがとうございます。クラレンス閣下!」


 時間は遡り、アデマス王国から南西に位置するラクト帝国への亡命に成功したオリアーナ。

 この国の貴族であるクラレンス伯爵に会い、深く頭を下げる。

 アデマス王国の研究所閉鎖が起きる少し前、研究に興味を持っていた彼からオリアーナは勧誘をされていた。

 当たり障りなく対応し、勧誘は受け流していたのだが、いざ研究所閉鎖ということになった時に彼のことを思いだしていた。

 すぐに連絡を取り合うと、研究員共々受け入れてもらえるという返事が来たため、オリアーナたちはそれに乗ることにしたのだった。


「以前閣下が仰っていた通り、研究の継続をさせて頂けるのでしょうか?」


「もちろんですよ!」


 まずオリアーナは、研究の継続を認めてもらえるかの確認をしておくことにした。

 連絡を取った時、ちゃんと了承を得ていたから研究員とデータを持って亡命してきたが、もしも駄目だということになれば、さらに他の国へと向かうことも考えなければならない。

 オリアーナにとって合成獣の研究は、アデマス王国への憎しみも相まって、並々ならぬ思い入れが強いものになっている。

 いつか自分たちを切り捨てたアデマス王国へ見せつけてやるつもりだ。


「あの研究はアデマス王国からの侵攻を防ぐための切り札となることでしょう!」


 ラクト帝国は他国へ攻め入るよりも、基本的に守りに重きを置いている国だ。

 この国にとって一番迷惑なのが、北のアデマス王国だ。

 隙を見せれば攻め入ってくるアデマス王国を追い返すために、毎回手を焼かされている。

 昔から、アデマス王国の一部である敷島の者たちが脅威だというのに、最近ではおかしな魔物を兵器として使い始めた。

 これまで見たこともない魔物で、毎回ラクト帝国の兵に死人が出ているため調べてみた所、合成獣と呼ばれる人造生物だということをクラレンスは知ることになった。

 そして、駄目元で勧誘をおこなってみると、案の定色よい返事を受けることはなかった。

 しかし、少しした後、オリアーナからアデマス王国内では研究を停止させられたため、亡命させてもらえないかという連絡を受けた。

 アデマス王国の侵攻で敷島並に危険になってきた合成獣の研究員とデータが手に入るなら、亡命させることなどたいして問題でもない。

 クラレンスは、アデマス王国への防衛手段の1つにさせてもらうつもりでいる。

 

「そう評価して頂けると我々としても研究のしてきた甲斐があるというものです」


 クラレンスの高評価に、オリアーナは感謝の言葉と共に頭を下げた。

 この国では敷島の連中のような目の上の瘤となるような者たちは存在しない。

 研究の成果さえ出せれば、すぐにこの国での地位を確固としたものにできるはずだ。

 そう思うと、研究への意欲が高まるというものだ。


「皆さんをお連れするのはアウーリエという地です」


「アウーリエ……、たしかソーリオ王国近くだったかと?」


 アデマス王国への対策として考えているのなら、なるべく北の地で研究した方が良いと思える。

 その方が、すぐに防衛戦に参戦できるというものだ。

 ラクト帝国は、南に隣接するソーリオ王国とは仲は良くも悪くもないという間柄でしかないはずだ。

 揉めているという話も聞いたことがないため、ソーリオ王国の方に行かなければならないとなると疑問が残る。


「その通りです。私の領地であるジグランデ地方の一部です」


「なるほど」


 クラレンスのフルネームは、クラレンス・ディ・ジグランデ。

 ジグランデ地方の領地を国から授かる領主だ。

 彼が受け入れるのだから、彼の領地で研究させるというのも納得できる。


「では、行きましょう!」


「はい!」


 よく考えれば、どこであろうと研究さえできればいい。

 そう思うようにしたオリアーナは、クラレンスに案内されるまま南の地へと向かうことにしたのだった。






◆◆◆◆◆


「何っ!? 山城の者が死んだじゃと!?」


「はい……」


 研究員の始末と研究所の破壊を任務としていた者たちは、敷島へ戻るとすぐに頭領の下へと報告に向かった。

 その報告に、頭領は怒りの表情に変わった。


「損傷が激しいな……」


 報告を裏付けるように出された英助の遺体を見て、この場にいた全員が顔をしかめる。

 発見した時には、魔物に所々喰われていたので、致命傷がどこなのかが分からない。

 これでは、魔物に殺られたのか、それとも他の何かに殺られたのかの判断も出来やしない。


「お主の見解は?」


「未知の魔物により殺害されたと考えるのが有力かと……」


 隊の者は、いつの間にか英助がいなくなったために捜索へ向かったのであって、遺体を発見した時には目の前の状態になっていた。

 隊の者に気付かれずにいなくなるなんてことは、英助本人がおこなわない限り不可能なように思える。

 しかし、そんなことをする理由は考えられないし、もしもそんなこと勝手にすれば敷島の人間に追われることになる。

 英助の実力でそんなことをするはずがない。

 そう考えると、何か特殊な魔物に殺られた可能性が一番有力だと考えられる。


「まさか、合成獣が……」


 そうなると、もしかしたら研究所の合成獣という説も浮かんで来る。

 報告によると、研究員とデータが全てなくなっていたようなので、その可能性もあり得ないとは言い切れない。

 そのため、この場にいる人間は、未知の合成獣に殺られたのだという結論になろうとしていた。


「……お待ちください!」


「どうした? 斎藤?」


 この場には、次期頭領候補の五十嵐・菱山・斎藤の3家の当主たちも立ち会っている。

 その中の限の父である斎藤家の重蔵が、英助の遺体に何か違和感を感じ取った。

 その違和感を解消するために、重蔵は英助の遺体に近付き調べ始めた。


「……骨に僅かな斬り傷がついております」


「なんじゃと!?」


 近付いて調べてみると、その違和感の正体はすぐに分かった。

 魔物に喰われて見えている心臓部分の近くの骨に、僅かに刃物による傷がついていたのだ。

 その重蔵の言葉に、頭領をはじめとする面々がその部分に目を向ける。


「傷からいって、恐らく刀ではないでしょうか?」


 英助の遺体を発見した時、側には彼が付けていた刀が無くなっていた。

 ゴブリンなどの鬼系の魔物は、人間の持ち物を奪い取って使用するということがある。

 もしかしたらそう言った理由で無くなったのだと思っていたが、英助の死因が斬られたことによるとなると話が変わってくる。


「では、人に殺されたということか!?」


「恐らく……」


 敷島の外に出せるような人間が、ゴブリンごときに殺られる訳がない。

 そうなると、そもそも剣よりも扱いが難しい刀を使える生物ということになる。

 考えられるのは人間となり、英助は何者かに拉致され殺られたということになって来る。

 頭領の問いに対し、重蔵も同じ考えに至ったことから頷きを返す。


「おのれ……!! 何者かは分からんが、見つけ出して目にもの見せてやろうぞ!!」


 仲間の死に怒りが沸き上がり、頭領の目には老体とは思えないほどの炎が燃え上がっていた。

 刀を使いこなせるということは、そう簡単に英助の刀を売り飛ばすとは考えられない。

 何故なら、敷島産の刀はアデマス王国内に置いて業物揃い。

 売るより使用する方を選択をするのが当たり前だ。

 しかし、この場合その刀を持っているということは、英助を殺したということを証拠になる。

 敷島の人間と知っての行為なのかは分からないが、手を出された以上報復に出るのが敷島流だ。


「頭領! 山城の者が島の外へ出る許可を頂きたい!」


「……よし! 殺られたのは山城の人間だ。山城の者たちが報復に出ることを許す!」


「ありがとうございます!!」


 殺られたら、殺り返す。

 そう考えた頭領は、英助の死を受けた山城の人間が島の外へ犯人探しに出ることを良しとしたのだった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり誤魔化しきれなかったか。 追手が来そうですね。 A級相手に派手に動いてしまった主人公たち、 刀を手がかりに追跡にかかりそう。 そして主人公たちを苦しめた研究者たちが、他国でまた研究…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ