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第171話 一矢

「グルアッ!!」


「ガウッ!!」


 オリアーナの命令を受け、ミノタウロスはアルバに接近すると共に両手で殴りつけてきた。

 アルバはその攻撃を、ギリギリのところで回避する。

 その表情は必死。

 そのことからも分かるように、全力のアルバでも対応を間違えればミノタウロスに負けるかもしれないということだ。


「ガアッ!!」


「バウッ!!」


 攻撃を躱して距離を取ったアルバに対し、ミノタウロスは右手に魔力を溜める。

 そお行動から、魔力の球を投げて攻撃してくると判断したアルバは、自身も口に魔力を集めだした。


「ガアァーー!!」


「グルァーー!!」


“バーーンッ!!”


 両者の魔力球が同時に放たれる。

 そして、両者の中間地点で衝突し、巨大な爆発音が地下通路内に響き渡った。


「ガウッ!!」


 爆発音と共に爆風を生み出した魔力球の衝突。

 それが治まった瞬間、アルバが動く。

 接近すると共に、ミノタウロスに右前足で殴り掛かったのだ。


「グルッ!?」


 時間を稼ぐような会話をしていたことから、アルバは逃げ回ると思い込んでいた。

 それなのに攻めてきたため、ミノタウロスは驚きで慌てた声を上げる。


「グッ!!」


 ミノタウロスは、アルバの攻撃をガードを固めて受け止める。

 ダメージは回避できたが、ミノタウロスはアルバの攻撃の威力により後退させられた。


「ガルル……!!」


「グウゥ……!!」


 ここまで互角。

 そのため、アルバとミノタウロスの両者は下手に動けば自分が負けてしまう。

 その考えから、睨み合いだけで動けなくなった。


「くっ! 何なのよ!」


 膠着状態になったことで、オリアーナは焦るばかりだ。

 先程の爆発音はかなりの音量だった。

 そのため、この地下通路の出口にも届いているはずだ。

 もしかしたら、アデマス軍の兵が侵入してくるかもしれない。

 そうなったら、自分は終わりだ。

 焦るのも仕方がない。


「ガアッ!!」


「グルアッ!!」


 膠着状態から、両者は意を決したように距離を詰める。

 そして、アルバは右前足を、ミノタウロスは右腕を振り上げた。


「ガッ!!」「グッ!!」


 右前足と右拳が衝突する。

 その強力な威力により、両者は威力に圧されて元の場所へと引き戻された。


「ガウゥ……」


 威力は互角。

 そう思えたが、アルバはそうでないことに気付く。

 自分の方が先程よりも僅かに引き戻されていたからだ。


「グルアッ!!」


「っ!!」


 今度はミノタウロスが先に動く。

 すぐさまアルバとの距離を詰めてきたのだ。

 当然だが、アルバとミノタウロスでは生物として形態が違う。

 四足歩行のアルバと二足歩行のミノタウロスといったようにだ。

 先程の攻撃のぶつかり合いによって、アルバの右前足はジンジンと痺れている。

 一時的なものだろうが、そのわずかな間を逃すまいとミノタウロスが動いたようだ。


「ガアッ! ガアッ!!」


「グッ! ギャウッ!!」


 接近したミノタウロスは両拳を振るってくる。

 ミノタウロスの方も先ほどの衝突で右拳痺れているはずだ。

 しかし、強化と魔物化の薬を摂取した副作用による体の痛みの方が強いせいか、そんな痺れなど気にならないようだ。

 先程も言ったように、両者は生物としての形態が違うため動きに差が生じる。

 ミノタウロスに変化はないが、四本足のうちの一本が痺れて動きにくいアルバは、ミノタウロスの攻撃に反応するのが遅れ始めたのだ。

 そのため、数回攻撃を躱すことには成功したのだが、とうとうミノタウロスの拳がアルバの顔面に直撃した。


「グルル……!!」


 殴られて吹き飛ばされ、アルバは口から血を流す。

 痛みで意識まで飛びそうになるが、軽く首を振って元に戻した。


「っっっ!?」


「ガアーーッ!!」


 アルバを吹き飛ばしたミノタウロスは、そのまま追いかけてきていた。

 そのことにアルバが気付いた時には、もう目の前に来ていた。


「ガアァーーッ!!」


「グッ! ガウッ! ギッ!」


 距離を詰めたミノタウロスは、接近と共に連打する。

 その攻撃を、アルバは必死に躱す。

 右前足の痺れはもう治った。

 しかし、今度は頭部を殴られたことによるダメージが、アルバの足を引っ張る。

 懸命に連打を躱すが、完全にとはいかず、アルバの体にいくつものかすり傷が付くことになった。


「グルル……」


「ガアァ……」


 攻撃の選択を失敗した。

 自分がミノタウロスよりも優っているのはスピードだ。

 それは僅かな差だが、自分が有利になるためにはスピードを利用するべきだった。

 傷だらけになったアルバは、ミノタウロスから距離を取って自分の選択ミスを反省していた。


「伏せて!!」


「っっっ!?」


 背後から大きな声がかけられる。

 その声に従って、アルバは身をかがめた。


「ウガッ!?」


 身を伏せたアルバの上を、強力な光が一閃する。

 その光はそのままミノタウロスに直撃し、ミノタウロスの右腕を吹き飛ばした。


「ハァ、ハァ、ハァ……」


 光を放ったのはレラ。

 アルバがミノタウロスと闘っている間に全魔力を集め、その魔力によるレーザー光線を放ったのだ。

 自分が放てる最強の魔法によって、ミノタウロスの武器となる片腕を潰すことに成功した。

 魔力を使い切ったレラは、魔力枯渇による気分が悪くなりながらも、一矢報いたことに笑みを浮かべた。


「後は…頼み…ます……」


 魔力はもう尽きた。

 あとは片腕となったミノタウロスを仕留めるだけ。

 それを途切れ途切れになりながら呟き、後をアルバに任せ、レラは意識を失った。



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