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第143話 二刀流

「ハッ!!」


「フンッ!!」


 攻防を繰り返し、限は隙を見て光宮へ攻撃を加える。

 刀での攻撃は警戒しているため、拳や蹴りによる攻撃だ。

 その攻撃は光宮へと当たるが、大したダメージを与えていない。


「ガアァーー!!」


「っと!!」


 強化薬の過剰摂取によって、限の刀による攻撃以外はそこまで警戒する必要がなくなり、その分を攻撃に意識を向けることができる。

 力任せに振るのではなく、当てるためのコンパクトな光宮の攻撃が放たれる。

 それだけに回避は難しく、限は刀で防御した。


「っ!?」


 限が警戒するべきなのは、何も光宮だけではない。

 光宮と戦いながら、時折遠距離攻撃が飛んでくるのだ。

 今も、光宮の攻撃を防いで動きが止まった瞬間を狙ったように、限に向かって矢が高速で飛んできた。 

 その攻撃を、限はその場から飛び退くことで回避した。


「橋本か……」


 敷島の人間は、近距離戦闘を得意とする。

 だからと言って、全員が全員そうとは限らない。

 特に橋本は、近距離戦闘より遠距離攻撃が得意な人間だ。

 光宮との連携で、限の命を狙う戦略を取ることにしたようだ。


「ガアァーー!!」


「チッ!!」


 橋本に意識が向いたところで、光宮が限に襲い掛かってくる。

 息つく間もない攻撃に、限は思わず舌打をした。


「この馬鹿力が……」


 限の思っている以上に、強化薬は光宮に力を与えている。

 しかも、それはまだ限界に達していないらしく、光宮の攻撃力が少しずつ上がっていっている。

 刀を持つ手が、光宮の攻撃を受け止めるたびに痺れてきた。

 下に見ていた光宮に、予想以上の手間を取らされ、限は思わず文句を呟いた。


『だったら……』


 光宮と橋本の攻撃に晒され、このままでは無駄に時間がかかるだけだ。

 そうなると、光宮家の者たちの爆発で怪我を負った者たちも回復して、 余計な手間が増えることが予想される。

 状況を考え、限は戦い方を変えることにした。


「ガアァーー!!」


「フンッ!!」


 大振りをしないようにしている光宮だが、限の体勢次第でその加減が変わってくる。

 それを利用し、限はワザと体勢を崩したように見せて、光宮に大振りをさせる。

 その攻撃を受け止めることで、限はまたも吹き飛んだ。


「っ!?」


 最初からそうなるように誘導したため、自らも跳ぶことでこれまで以上に吹き飛んだ限は、光宮から距離を取ることに成功する。

 そして、着地をすると共に、限は魔法の指輪からある物を取り出した。

 その出した物を見た光宮は、何をする気なのかと一瞬目を見開いた。


「……二刀…流か?」


「その通り」


 限が取り出したのは一振りの刀だ。

 ここまで限は、ずっと一刀で戦っていた。

 最初から得意の二刀流で戦っていれば、もっと楽に進めることができたかもしれないというのにだ。

 わざわざそうしていた理由。

 それは、剣術の技術を上げるためだ。

 ここを突破すれば、残っているのは父の重蔵だ。

 その重蔵と戦う時のことを考え、少しでも戦闘の技術を上げておきたい。

 はっきり言って、今の自分なら重蔵を相手にしても勝てる自信はある。

 しかし、重蔵の側には、あのオリアーナまでいる。

 光宮や敷島の人間が今使用している強化薬以上の薬を、研究・開発している可能性も考えられなくはない。

 もしも拮抗した戦いになった時のことを考えて、剣術の技術を上げておこうと考えていたのだ。

 その訓練相手に考えたのが敷島兵たちだ。

 途中から怪我を負うことが減り出したのも、戦いの中で剣術が上昇したからだ。

 その剣術訓練も、もう充分。

 そろそろ終了して、敵の殲滅に入ろう。

 そう考えて、限は二刀流で戦うことにしたのだ。


「フンッ!! 二刀…流になろうと、大して…変わらん!」


「それはどうだかね……」


 二刀流になったとして、片手で自分の攻撃を止めるのは不可能。

 ならば、これまでと変わらない。

 そう考えた光宮は、限の行為を鼻で笑う。

 そんな光宮に、限も笑みを浮かべる。


「ハアァーー!!」


「フンッ!!」


「なっ!?」


 これまで同様、限との距離を詰めると、光宮は刀を振り下ろしてくる。

 その攻撃を、限は右手に持った刀だけで受け止めた。

 そのことに、光宮は驚きの声を上げる。

 先程まで、限は両手で受け止めないと自分の攻撃を防げなかった。

 それなのに、何故急に片手で止められるようになったのかが分からないからだ。


「……お前、どうして……」


「「どうして片手で止められたのか?」って聞きたいのか?」


 急に片手で止められるようになった限に、光宮は理由を問いかけようとする。

 それを、限は先読みをするように問いかけた。


「答えを教える必要はないんだが……」


 何をしたのかなんて、わざわざ光宮に教えてやる必要なんてない。

 そのため、限はその質問を無視しようとした。


「光宮家の者たちを利用させてもらったし、サービスで教えてやろう」


 教える必要はないが、気が変わった。

 光宮家の者たちを利用することで、状況を変えることに成功した。

 その礼に、当主である光宮には教えてあげることにした。


「答えは簡単。本気を少し出したからだ!」


「なっ!?」


 笑みと共に告げられた限の言葉に、光宮は驚きの声を上げる。

 冗談にしては笑えない。

 あれだけの敷島の兵を相手に、限はここまで本気ではなかったというのだから。


「そんな…わけ…あるか!!」


 いくらなんでも限の言うことは信じられない。

 そのため、光宮は先程の言葉を無視するように斬りかかった。


「おっと!!」


「バカ…な……」


 強化薬によって上がった力を利用して、連撃を繰り出す光宮。

 しかし、限はそれを右手に持った刀だけで弾いて見せる。

 力を抜いているつもりはない。

 むしろ、まだ過剰摂取した強化薬によって、力は少しずつ上昇している。

 それなのにもかかわらず、限は涼しい顔で自分の攻撃に対応している。

 防がれ続けることで、光宮は限が先ほど言ったことは本当なのではないかろ、戸惑いが膨れ上がっていった。


「フッ!!」


 限に飛んでくる攻撃は、光宮によるものだけではない。

 遠距離から橋本の矢が飛んでくる。

 光宮の攻撃に対応しながら、限はその攻撃を左手に持つ刀で弾いた。


「そろそろ反撃に出るか……」


 攻撃に対応できるようになったら、後は隙を見て攻撃を繰り出すだけ。

 そのことは分かっているだろうが、限は余裕を見せるように光宮へ反撃をする事をワザと告げた。

 

「そん…な……」


 死も覚悟した強化薬の過剰摂取。

 そこまでのことをしても、限を倒すことができない。

 戦えば戦うほど、これまで積み上げてきた自尊心が砕かれて行き、光宮は動揺が隠せなかった。



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